わたしのツイッター「裏垢」について。
1.はじめに
久しぶりに投稿します。
SNS上での誹謗中傷問題が大きな社会問題になっています。特に木村花さんの痛ましい事件があって以来、ネット上での誹謗中傷について、発信者に対する開示請求を簡略化し責任を追及しやすくしようといった動きもあり、「誹謗中傷許すまじ」といった機運が盛り上がりを見せる一方、未だにトラブルは無くならないようです。
なぜ急にこのような投稿をしたかというと、実はわたしのツイッターアカウントの「裏垢」(裏アカウント)なるものが登場し、わたしを執拗に誹謗中傷するという事案が発生していたのですが、つい先日、その投稿者を特定した上で損害賠償を請求し、賠償金の支払いと「二度と繰り返さない」旨を誓約する示談が成立したためです。
(参考)わたしの「裏垢」↓
ちなみにわたしのツイッターアカウント↓
比べてもらえばわかる通り、「裏垢」のアイコンやプロフィール画像はわたしのものをモノクロにしただけ、プロフィール文もわたしのものを改変したもので、その投稿内容は既に消されたものを含め、ほぼ100%わたしの投稿内容に関する誹謗中傷から成るものでした。
2.きっかけ
この裏アカウントが開設されたのは2019年11月。わたしはすぐにその存在に気付きブロックしたものの、投稿自体はどんどんエスカレートし、知人からも「youjiさんの名を騙ってこんなこと書いてる奴が居るよ。」と心配されたり、この裏アカウントがプロレスの選手にリプを飛ばしたり、実在するわたしの知人の名前を出したりしていたもんですから、わたしのことを良く知らない人の中には、本当にわたしがこのような裏垢を作成して投稿していると勘違いしていた人もいました。
「嫌なものはブロックして見なきゃ良い」とよく言われますが、皆さんはたとえブロックしたとしても、このような誹謗中傷が続き、自分の評判を落とそうとする輩が居る状態を放置することはできますか?
わたしはそれができませんでしたので、最初のうちはツイッター社に裏垢の投稿を報告していたものの、全くらちが明かないというか、身体に危害が及んだり露骨な差別などでない限り対処はしないようでした。
そこでわたしは2020年の4月末、ネット上でのトラブルに強いと評判の弁護士に「裏垢」の投稿内容を全て見せた上で相談したところ、「これは権利侵害を問える内容です。」との回答を得られたので、翌日直ぐに着手金を支払い、裏垢投稿者を特定するための発信者情報開示請求訴訟と投稿者に対する賠償請求を委任したのでした。
3.発信者情報開示請求(2つのステップ)
ここで発信者情報開示請求について簡単に説明すると、SNS上で誹謗中傷を行った人物を特定するには、以下の2つのステップを踏むことになります。
①サイト管理者に対する開示請求
②プロバイダに対する開示請求
一般的にネット上で発信する際には、ネット通信事業者とプロバイダ契約をし、その上でサイト運営者等のサーバでウェブサイトを作成したり掲示板にアクセスすることになります。そのため、発信者情報の特定にはプロバイダから契約者である発信者の情報を開示してもらう必要があり、その前提として、サイト管理者にプロバイダ特定につながるIPアドレスなどの通信履歴ログ情報を開示してもらう必要があります。
その手続が①なのですが、これはいわばネット上の住所を特定するものに過ぎず、投稿者の実際の氏名住所までは特定できませんから、①で得たIPアドレスなどの情報を元に、投稿に利用された通信会社(ドコモやKDDI等)に発信者情報開示請求を掛け、実名開示に至るのが②の手続です。
①~②の手続は、個人で行うことも理論上は可能ですが、高度な法的知識やノウハウが必要なため、現実にはほとんど不可能なのが実情です。また、サイト管理者や通信会社が任意に開示請求に応じることは稀であるため、わたしのケースも含め、ほぼ全ての事案で弁護士を代理人として訴訟上での開示請求を行うことになります。
事前の弁護士の説明では、アメリカのツイッター社に対する①の裁判手続に1.5ヶ月~2ヶ月、②の裁判手続に同じくらいの時間がかかり、合計で3~4ヶ月くらいかかるとのことでしたが、コロナの影響で裁判手続も大幅に遅れ、弁護士から①の手続が終わり②に移行するとの連絡があったのが、最初に相談してから約5か月が経った昨年の9月末でした。
4.投稿者からの連絡
②の手続のための弁護士費用(各ステップごとに発生)を支払ってしばらくした2020年11月中旬、某人物からわたしのツイッターアカウントに「話したいことがあるので電話をして欲しい」とのDMが送られて来ました。
そのDMを送ってきたアカウントは旧知の人物のものでしたが、わたしはこのときピンと来ました。
「あぁ、この人が犯人だったか。」
試しに電話をしてみると、案の定、発信者開示請求についてのものでしたが、わたしは弁護士に全ての手続を委任していることから「わたしに話をせずに全て弁護士に話をしてくれ」と伝え、短時間で会話は終了しました。
なぜその人物が連絡して来たのかというと、恐らくは通信会社から「意見照会書」が届いたためと思われます。
これは通信会社への発信者開示請求訴訟(上記②の手続)があった際、通信会社から投稿者へ送付される意向調査書(開示請求者へ情報を開示して良いかを尋ねる書面)のようなもので、よほど特段の事情がない限り投稿者の意思に関わらず開示はされるものの、一応は投稿者の意見も聞こうというものです。
この短い電話でのやり取りの際、相手の人物はこのようなことを言ってました。
「この裏垢の投稿をみるとずいぶん酷いことが書いてありますけど、もしこれが自分なら、こんなこと書かずに直接youjiさんに言いますけどね。」
この照会書は上記①~②の二段階の裁判手続を経て投稿者の元に届いたわけですから、その人物が犯人であることは明らかなのですが、突然のことで動揺していたためか、まるで自分は無関係であるかのような素振りでこのような発言をしていました。
また、このときその人物の電話番号も知ることができたため、弁護士会照会(弁護士法23条)により調査した結果、発信者情報開示請求訴訟の判決を待たずに投稿者の氏名住所が判明するに至った訳です。
5.示談
投稿者の情報が得られましたので、該当の住所宛に弁護士からすぐさま「ご通知」と題する書面が送付されました。
その概略は、
・裏垢の投稿によるわたしの精神的苦痛を慰謝するには30万円が相当である。
・発信者情報開示請求の過程でわたしが既に支払った弁護士費用66万円も投稿者の負担とすべきであるから、前記慰謝料との合計96万円を支払え。
・誠実に対応すれば穏便に済ませることも吝かではないが、そうでない場合は請求を増額した上で侮辱罪での刑事告訴もあわせて行う。
というものです。
幸い投稿者から弁護士に直ぐに連絡があったようで、投稿内容について真摯に謝罪して責任を認め、96万円全額を支払いたいが、経済的事情により5回の分割払いをお願いしたいとのことでした。
本来ならば一括払いですから、分割にして期限の利益を与えることで不履行のリスクが生じたり、分割払いを管理しなければならないリスクもありましたが、どうやら本当に一括払いが困難な様子であるため、協議の結果、3回払いの条件で示談に応じました。
作成された示談契約書の骨子は、
・裏垢の投稿が自らのものであることを認めて真摯に反省、謝罪し、今後もわたしに対する誹謗中傷はしない。
・前記96万円を3回に分割して支払う。
・投稿者は、本件に関し、示談が成立したことを含め本件に関する一切の事情を口外しない。
・金銭の支払以外のことに関し本示談契約に違反した場合は、追加で100万円を支払う。
というものです。
支払いは本年1月から毎月末日限りとされ、この文章を書いている令和3年2月中旬の時点で1回目の支払いは契約通り履行されています。
*実際に作成された示談書と受任契約書(画像は一部黒塗りにしてあります)。
6.賠償金の使い道
冒頭にも触れたように、このような事件でまず思い出すのは木村花さんの件ですので、賠償金を得たら真っ先にやろうと思っていたことが、亡くなった娘さんの為に活動をしている母親の木村響子さんから花さんのグッズを購入し、SNS上の嫌がらせを撲滅しようと闘っている響子さんを少しでも支援する、ということでした。
ですので、ごく僅かな金額ではありますが花さんグッズを購入した訳で、このお金は花さんの名誉回復の為やネット上での嫌がらせを無くす活動のための資金として活用されます。
*木村響子さんが運営するサイト。ここで花さんグッズを購入することで、花さんの為に戦う木村響子さんを支援することができます。
https://bungabunga.thebase.in/
7.雑感
SNS上の誹謗中傷なんて、芸能人等の有名人の問題だと思ってたので、ただの素人であるわたしのような人間によもや降りかかってくるとは思ってもみませんでした。
しかし、いざ自分を標的にしたアカウントが存在すると分かったときの何とも言えない気持ち悪さや不気味さは筆舌に尽くしがたいものがありましたし、ツイッター社に報告しても暖簾に腕押し、巷には「嫌ならブロックして見なければ良い」などのまるで他人事の「アドバイス」ばかりで、全く八方ふさがりの状態でかなり精神的にしんどかったですね。
このような問題は、びっくりするような身近な人物が関わっていることが多いとは聞いていましたが、今回のケースも古くから知っている人物によるもので、それが判明した時も「やっぱりね」という感覚しかありませんでしたね。
今回の件で言えることがあるとすれば、ネット上で嫌がらせを受けた場合、我慢をしたり「自分にも悪いところがあったのではないか」などと自分を責める必要は全く無くて、費用と時間は掛かりますがその気になればほぼ確実に投稿者は特定できますから、勇気を出して積極的に戦いましょう、ということですね。
街中でいきなり殴り掛かられたら、警察を呼び、後から損害賠償を請求するのと同じです。
ネット上の嫌がらせも立派な犯罪です。
現行の法制度では、SNS上で嫌がらせをしてきた人物を特定するにはかなりの時間と費用がかかるため、多少のことだと費用倒れになると感じて賠償請求を諦める人が多く、それを承知だからこそ投稿者側もどんどんエスカレートしていくケースが多いように思えます。
嫌がらせにいちいち反応したり「警察や弁護士に相談する」と言うだけで何もしないのが一番良くなく、投稿者をますます増長させるだけですから、やると決めたら徹底的かつ隠密に、一気にズドンと仕留めるのが良いかと思います。
こういう体験記は、有名人が行えば影響も大きいんでしょうけど、わたしみたいな一般人でも苦しんでいる人は多いんじゃないですかね?
そういう方々の背中を押すきっかけに少しでもなれれば幸いです。
*この投稿者は誰なのか?といった質問には一切お答えできませんのでご了承下さい(知人の方からの内々の問い合わせに対しても同様)。
記事中にある木村響子さんのサイトからのグッズ購入もぜひご検討ください。
終わり