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スポーツ界の不祥事多発の原因とは!?~負の連鎖の背景分析~①

引用:https://diamond.jp/articles/-/179101

日本レスリング協会や日本体操協会、その他の協会のパワハラ問題、日本ボクシング連盟の内部告発の問題の根幹はすべて同じだった!?日本におけるアマチュアスポーツの深い闇の原因を、スポーツ法務に関与する弁護士の視点からお届けします。


目次

Ⅰ スポーツ界における負の連鎖の背景
Ⅱ この状況は偶然か?必然か?
Ⅲ 2020年東京オリンピック・パラリンピックの遺すべき「レガシー」とは

概要

・東京オリンピック・パラリンピックの代表として選考されるためには今年中に競技団体の適正化をしておく必要があると感じた選手が多かった。
・この流れは今後も収束せずむしろ他の競技団体に拡散していく可能性が高い。
・こういった事態は偶然ではなく、十分予想できた事態であった。
・キーワードは「成功体験からの脱却」。
・2020年以降、オリンピック・パラリンピックの「レガシー」として遺すべきものは、新国立競技場などのハード面ではなく、競技団体のガバナンス強化・コンプライアンス体制の構築というソフト面なのではないか。

Ⅰ スポーツ界における負の連鎖の背景

最近、日本のスポーツ界では競技団体やチームに関係する不祥事の話題に事欠かない。毎日と言っていいほどスポーツ競技団体やチームの問題が取り上げられ、次はどこの団体が対象となるのか、世間やメディアの目も厳しさを増している。

その背景に、2020年に開催される東京オリンピックパラリンピックがあることは間違いないだろう。

引用:https://www.huffingtonpost.jp/2016/04/26/new-emblem-tokyo_n_9782588.html

代表選手選考のタイミングを考えれば、来年はまさに勝負の年。実際の選考は2019年後半から2020年前半にかけて行われるのが一般的だが、代表内定の条件として、その前年に国際大会での実績等が要求されることも多々あり、逆算すると、今年の後半には事実上の選考レースが始まっているに等しい。それまでに明確な選考基準が示されていなかったり、そもそも団体としてのガバナンス体制が機能しておらず、恣意的な代表選考の可能性が残ると感じる選手達は、その是正を求めるのであればこのタイミングで動くほか選択肢がない。

そう考えると、今年は既に(オリンピック・パラリンピックスポーツ以外も含めると)レスリング、相撲、アメリカンフットボール、ボクシング、水球、体操、ウェイトリフティング、駅伝と続いたが、今後もさらに問題点を指摘される協議団体やチームが出てくる可能性は十分にある。
また、競技団体の組織の問題とは直接関係なくても、カヌーのドーピング混入事件や、アジア大会中のバスケットボール日本代表選手の買春騒動、水泳選手のドーピングなど、選手個々人の不祥事やドーピングの問題などが発生する可能性はどの競技団体にもあり、競技団体として危機管理体制の構築の重要性がより一層増していることは疑いようがない。

引用:http://news.livedoor.com/article/detail/15230650/

Ⅱ この状況は偶然か?必然か?

このような事態は、実は関係者の間では前々から競技団体(特に日本●●協会などの国内の中央競技団体のことを”National Federation”の頭文字をとって「NF」という)やチームのガバナンスやコンプライアンス体制の不備、競技者のコンプライアンス意識の低さを不安視する声がよく聞かれていた。つまり、起きるべくして起きた事態と言っても良いだろう。

このような事態を予測して、というわけではないが、筆者が現在関与している公益財団法人日本スポーツ仲裁機構は、2014年3月には「NF組織運営におけるフェアプレーガイドライン~NFのガバナンス強化に向けて」等を、2018年3月には「スポーツ界におけるコンプライアンス強化ガイドライン」・「不祥事対応事例集」等をスポーツ庁(2014年については当時の文部科学省)の委託を受けて取り纏めていた(膨大な文量だが、興味のある部分だけでも是非読んでいただきたい)。

これらのガイドラインは、スポーツ競技団体の役職員が、スポーツ競技団体の本質的特徴を理解し、自らを律しながら、自立して取り組んでいくための指針であり、ガバナンス強化、コンプライアンス体制の整備という手段をもって当該スポーツの普及や振興・競技力の向上、さらにはアスリートファーストを実現するものである。

私自身、報告書やガイドラインを取り纏めていて感じていたのは、競技団体の組織としての構造上の問題と、人材不足、そして「自分の時代はこうだった」という「成功体験からの脱却の必要性」だった。

縁あってSporta(スポヲタ)情報局で記事を書かせていただくことになったので、これから月2本を目標に、これらのガイドラインを解説しながら現在日本のスポーツ界に起こっている事象を分析していきたい。

Ⅲ 2020年東京オリンピック・パラリンピックの遺すべき「レガシー」とは

1964年の東京オリンピックは、国立競技場に限らず代々木体育館や首都高速道路などハードのレガシーが残ったが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックはスポーツ競技団体やチームのリノベーション(ガバナンス・コンプライアンス体制の整備)というソフトのレガシーを遺すべきであると考える。

初めてのnote投稿で、勝手も分からないところが多く甚だ不安ではあるが、細々と、自分の考えの整理も含めて頑張っていきたい。次回以降、個別の団体に発生したガバナンスやコンプライアンス体制の不備による問題について深掘りした記事を記載していく予定なので、是非次回も楽しみにしていただければ幸いである。


筆者経歴:慶應義塾大学法学部法律学科単位取得退学(飛び級)後、同大学院法務研究科修了。2010年司法試験合格。2011年弁護士登録を経て弁護士法人淀屋橋・山上合同入所。2013年から公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(JSAA)仲裁人を経て2016年同機構仲裁調停専門員に就任。2016年7月から株式会社スペースマーケットに参画(出向)。

プロ野球選手会公認代理人。日本スポーツ法学会会員。第一東京弁護士会総合法律研究所スポーツ法部会幹事。アスリートラボラトリー所属。

8歳から野球を始め、群馬県立前橋高等学校在学中、硬式野球部主将(4番・一塁手)として第74回選抜高等学校野球選手権大会(2002年)に出場。その際取材を担当していた新聞記者の影響でプロ野球選手代理人を目指して弁護士を志す。自分を成長させてくれた野球界、そしてスポーツ界に貢献するため、そして仲裁という制度や弁護士としてのガバナンス・コンプライアンスの観点を駆使してより良いスポーツ界にするため、野球に限らず、陸上や自転車競技など多くのアスリートを支援しながら地道に活動中。

【主な著書】
2013 年6 月 『スポーツ権と不祥事処分をめぐる法実務―スポーツ基本法時代の選手に対する適正処分のあり方』(共著:清文社)
2017 年 3 月 『スポーツの法律相談』(共著:青林書院)
2017 年 7 月 「はじめようシェアリングビジネス」(共著:日本経済新聞出版社)
2017 年 7 月 『スポーツ事故対策マニュアル』(共著:日本体育施設出版)
2017年11月 「イノベーションとルールメイキング」(日本組織内弁護士協会会報誌No.5)
2018年3月 『グローバルな公共倫理とソーシャル・イノベーション』(共著:大阪大学大学院国際公共政策研究科稲盛財団寄附講座企画委員会編)

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