見出し画像

音は時間を内在している

先日、とある本屋で「センス」について話し合う機会があった。その中で、印象的な意見が飛び出した。

音楽がわからないやつにセンスあるやつはいない


この発言には続きがあった。

音楽というのは、一度ではわからない。
何百回も聴いて、やっと理解できるものだ。

その言葉に、私は少し抵抗を感じた。というのも、私は音楽に深く関わる経験はなく、今ようやくその魅力に触れ始めたばかりだからだ。それでも、その発言者のお人柄が大好きなこともあり、なぜか面白いと感じたので改めて考えてみた。



私たちの生活には、映像や写真といった視覚情報が溢れている。それらは一度目にしただけで良し悪しが何となくわかる場合が多い(少なくともそう思いがちだ)。しかし、音楽は違う。何度も繰り返し聴くことで、その魅力が少しずつ明らかになる。

  • 初めて聴いたときと二度目では感じ方が異なる。

  • 夜ソファに座って聴くのと、朝散歩しながら聴くのでは印象が変わる。

  • 大切な人を思い出すときと、大事なものを失ったときでは響き方が違う。


音楽には「その時、その場」で異なる味わいが生まれる。音楽の良さは、解釈が大きく聴く側に委ねられているところにある

「曲はまだ楽譜である。聴く人によって演奏される。」という言葉が好きだが、まさにそういうことだろう。



そんなことを考えていた矢先、オーチャードホールの音響設計などをしている方の「音の専門家の雑談」というPodcastを聴いた。

その中で印象的なフレーズがあった。

音は時間を内在している。

音の専門家の雑談 Presented by Sound One #22


この言葉を、私なりに解釈すると以下のようになる。

1. 音の物理的特性
音は周波数や振幅、波形などの特性を持つが、これらは時間を通じて変化するものである。例えば、楽器の音色を特徴づける倍音や、音が立ち上がり、持続し、減衰するエンベロープと呼ばれる要素は、時間がなければ捉えられない

2. 音楽における時間
音楽は音が時間の中で並ぶことで成り立つ。メロディやリズム、テンポや拍子といった要素は、時間と密接に関係し、音楽が感情や物語を表現する要因となる。

3. 心理的な側面
音を知覚する際、私たちは瞬間を切り取るのではなく、音の流れや変化を追いながら意味を見出す。話し声や楽器演奏も、その過程を通じて理解が深まる。

4. 哲学的な考察
音を聴くとき、私たちはその始まりを記憶し、次に続く音を予期している。これを現象学では、過去、現在、未来の意識を同時に伴うものと述べられている。


「音は時間を内在している」という考えに基づけば、音楽は「時間」と「関係性」に強く依存している。それを何事においても感じ取れることがセンスがあるということだとしたら、少し納得できる。


本屋さんでの会話はこの本から派生して起こった。(私は未読)

音の専門家の雑談 Presented by Sound One


いいなと思ったら応援しよう!

Yugi Miyachi
おいしいフルーツやお肉をいただきます。大きな励みになります。