2021年8月に摂取したおもしろのまとめ
タイトル通りその月に摂取したおもしろの感想をまとめた記事です。
あとなんだか継続的にやれそうな雰囲気になってきたのでマガジン化しました。
今月も映画やらマンガやらなんやらです。
明日に向かって笑え!
映画館で見た予告編で気になってたのでどれどれと思って観てみた作品。
舞台は2001年のアルゼンチンの田舎町。愛する妻と暮らす元サッカー選手のフェルミンは、仲間たちと一緒に農協を起こして町に活気を取り戻そうと計画していたものの、突然の金融危機のどさくさに紛れて銀行員と弁護士に資金をだまし取られてしまいます。リベンジに燃えるフェルミンと仲間たちは奪われた資金を無理やり取り戻すべく強盗を企てることに……
リベンジ泥棒コメディ活劇、とでもいえばいいですかね。笑えつつしみじみよいなと思える気持ちのいいエンタメ映画でした。
画面は土と緑が満ち溢れ、登場人物もおじちゃんおばちゃんたちがメインのとってもゆるやかな空気。なのにやろうとしていることはオーシャンズ11ばりの計画犯罪というこのギャップ。
とはいえプロの泥棒たちが結託するオーシャンズとは異なり彼らはあくまで善良な市民なので、計画はたびたびピンチに陥るしリーダーのはずのフェルミンはすぐ落ち込むしと、なかなかスマートにはいかないんですよね。それもちょっと微笑ましい。
実際画面作りや劇伴の面ではオーシャンズシリーズを意識してるんじゃないかな?と思われる部分も多いんですが、それらも決してあざとくはなく、アルゼンチンの田園風景にかなりマッチする形でチューニングされていてむしろ好印象。特に南米のレアグルーヴファンク的な劇伴は本当によかった。
そしてまったりほのぼのだけでなく、ラストはしっかりスリリングな展開も待っていて良きエンタメでした。ここのところ味付けが濃いめの映画ばっかり見てたからこういう映画がしみましたね。
ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
そいでもってまた味濃いめ映画です。景気がいい悪趣味映画だ!!
DCコミックのヴィランたちが刑期の短縮を条件に超危険ミッションに挑まされるバイオレンスアクションの、ジェームズ・ガン監督によるリブート版。
一応ストーリー的には以前の映画版スーサイド・スクワッドからの続編ということにはなっているものの、これ単体も十分楽しめる作品です。かくいう自分も前作観てない状態で挑みましたがめちゃ楽しみました。
いやーしかしマジで人が死ぬ!!本当に景気よくガンガンと、そしてド派手に死ぬ!!!なんなら出てきた人間だいたい死んだんじゃないか?
もうひたすらジェームズ・ガン流のアクションと悪ふざけと悪趣味が全方位に振り切り続けていて、すさまじかったですね。見終わったときドッと疲れたもの……
実は先述した「明日に向かって~」と同じ日に見たんですが、善良な市民たちが意を決して強盗に挑む映画から世紀の犯罪者たちが景気よく殺し殺される映画の流れが刺激的過ぎたのは事実ですね。
とにかく観てる間ずっと気が抜けないんですよね。何しろ悪党連中ばっかりなのと全員命が軽いのでマジでいつ誰が死ぬかわからない。ハーレイクインはじめ急に何しでかすかわからん奴もいるし。
(↑で言ってる感想記事↓)
でもそんなスリリングさも含めてもう笑うしかねえな!ガハハ!!みたいな気持ちよさがすごくて、ジェームズ・ガンに振り回されてアハハハハってなってるうちにバンバン人が死んでて気付いたら終わり!!!!という異様に痛快な作品でしたね。痛快さが異様。
しかしゴアっぽい表現はもともと得意ではなかったんですけど7月に見たサイコ・ゴアマンとスースクで完全にマヒしちゃいましたね。
サイコ・ゴアマンについては↓で。
フリー・ガイ
8月に見た映画のラストはこちら。
すっごい良かったですねフリー・ガイ……
毎日毎日おなじ生活を繰り返すゲーム内のモブキャラ銀行員が、ある日とあるきっかけで自分の日々に疑問を抱き始め、やがてヒーローを目指し始める……というのが大まかなストーリー。
これも映画館で予告編観て気になった作品だったんですが、なるほどゲームのメタネタモチーフのエンタメ作品かーという気持ちでそこまで期待せずに見に行ったところ、高い完成度と予想外にタフなメッセージ性が込められた作品でうおおおってなりました。
モブ(背景)に過ぎなかったNPCが主人公になることを志す、って筋書き自体は結構擦られてきたテーマだと思うんですが、本作はそのあたりの設定の料理の仕方が実に好みでした。
銀行員NPCのガイが自分の人生に目覚める経緯や行動原理、このゲームの外側、つまり現実世界で巻き起こる事件やドラマが見事にカッチリと組み合ってエンディングできれいに昇華されるという、いやーー拍手ですよ。たぶんレゴ・ムービーとかが好きな方にはハマるんじゃないかなと思います。
あともう一点好きだったポイント。
物語の後半でゲーム内の登場人物たちが決起するシーンがあるんですが、そこで主人公のガイがほかのNPCたちに投げかけるセリフが「ゲームと現実社会、まあ色々あるけどよりよい関係を築いていこうぜ!」という我々観客に対するメッセージにも受け取れて、かなり響いてしまったんですよね。こういうエンタメ!な雰囲気の作品からそういう力強いメッセージが発せられるのは説得力があって、なんだかとてもいいことだなあと感動してしまったのでした。
それはそれとして、エンタメとしても本当に見どころは盛りだくさんで、ライアン・レイノルズが主演だからこそのおふざけだったり、この座組ならではのパロディ、インターネットでゲームをしたことがあればクスリとしてしまうような小ネタが満載で、最後まで本当に楽しい映画でした。
あと全然関係ないけど、前述のとおりサイコ・ゴアマンやらスースクやらでゴア表現に慣れすぎて誰かが武器を持ってると次のカットでは頭がはじけ飛んでるんじゃないかみたいな身構えが発生してしまうことが多々ありました(フリー・ガイは全年齢向けなので誰でも安心してみることができます)
ブリティッシュ・ベイクオフ
なんかプライムビデオでちょうどいい感じのまったり見れるやつないかなーと思って出てきたのがこれ。まさに求めていたラインのちょうどいい見られるやつでした。
全英から選ばれた10人のアマチュアベイカー(パンをはじめとした小麦料理家)が腕を競い合い、英国ナンバー1を決めるお料理コンテスト番組です。イギリスではかなりの人気番組ですでに何シーズンも放映されており、自分が見たシーズン1も最初の放映は2010年。
毎回の手に汗握るコンテストとベイカーたちの間に生まれる友情はもちろん見ものなんですが、個人的に見てておもしろを覚えたのが英国小麦料理の奥深さ。
コンテストは英国内のいろんな土地が舞台になるんですが、それぞれその地方にちなんだ小麦料理が題材になります。その題材というか料理名が、英国文化に疎い自分にはマジで毎回ピンとこない。
最初のうちこそ「ケーキ」「スコーン」「パン」とまあうんうん小麦料理ね、わかるわかるという感じだったのが、後半戦になるにつれて「コブローフ」「3種のプディング」「ペイストリー」と待て待てそれはいったいどういうカテゴライズなの?と毎回わからん横文字が飛び交います。
特にプディングの分類はマジでわからなくて、調理法とか食材とかじゃなくてなんか、こう、概念でカテゴライズされてる感じがあってすごいなってなります。Wikipediaの定義ですらフワフワしている。
????????
で、混乱しっぱなしかというとそういうわけではなく、コンテストの合間合間でこうした料理について英国小麦文化の歴史エピソードを交えて解説してくれる動画が差し込まれるんですが、これがまたよい。産業革命前後で大きく変わった英国人たちの暮らしとこれらの料理がどう関わってきたのかというお勉強物としておもしろかったです。
一番印象に残ってるのが、貧しい労働者たちがかつては出来立てのパスティ(餃子みたいな形のパイ料理)をホッカイロ代わりにして下着の中に入れてて、食べる時は外のパイ生地は捨てて中身だけ食べてたというエピソード。いや、なんか壮絶だったのかもしれんけどパイ生地で暖をとるってすごいな?!
あとは肝心のコンテスト自体も審査員の二人に味があってよかったですね。本国ではこの番組をきっかけに有名となった名物審査員とのことで、シーズン1から確かにおもしろい。
審査基準自体はかなりシビアで時にコメントも辛辣なんですが、パン生地をこねるのに苦戦してる挑戦者を見かねて自ら手をふるってアドバイスしたり、ほめるときは「女王陛下に献上できるレベル」とまで惜しみなく賛辞を送ったりと実に気持ちがいい。こういうコンテスト物で審査員に対して好印象を抱ける番組っていうのは確かに見てて安心感があるなあと思いました。
惜しむらくはプライムビデオで見られるのが字幕版のみで、作業中BGVとして流すには少し難易度が高いんですが、派手なコンテンツの摂取に疲れたときにまったり楽しむのにうってつけの名番組でした。
瑠璃の宝石(2巻) - 渋谷圭一郎
かがくのちからってすげー!を実感するのはこの言葉の原典よろしく新しいガジェットに触れたときだったりするのが一般的なイメージですが、このマンガはまた違った意味で科学の力を思い知らされます。
瑠璃の宝石は、宝石好きの女子高生がふとしたきっかけで鉱物研究が専門のお姉さんと知り合い、簡単に宝石が見つかるなら!という動機で始めた地道すぎる採掘作業に徐々にのめりこんでいく、鉱物学マンガです。
なるほど鉱物うんちくマンガね、はいはいと思われた方ちょいと待たれよ。
もちろん瑠璃の宝石のおもしろさの一つは普段の生活だけではまず触れることのないであろう鉱物うんちくではあるんですが、それ以上に鉱物学の科学的アプローチ自体の楽しさが描かれてるところがこのマンガ最大のおもしろポイントです。
いきなり逆のこといいますが、鉱物採集ってめっっっちゃくちゃ地道なんですよ。地味で地道。
川の底の石を集めて顕微鏡でターゲットの破片があるかどうかを調べ、あればその上流に訪れて再び同じことを繰り返し、削り出されたであろう石の破片の大本がどこにあるのかを逆流しながらたどっていく。川の流れが分岐している場合もあれば、途中で痕跡が途絶えることもある。そんな時はまたひとつ前の調査地点にさかのぼり再調査して……みたいな。
でもこういった地道さを、知識と経験から効率化・最適化していくことで、ゴールである鉱石の場所を目指していく、そのプロセスが超楽しいんですよね。しかもゴールには宝石があるんですよ。宝石が。1巻オビの言葉を借りるなら「鉱物採集は現代の宝探し」。まさにその通りだと思います。
主人公のルリちゃんが基本的には面倒くさがり、楽したがりなのがまたいいんですよね。「えーそんな地道なことやりたくないー」といえば、鉱物学者のナギさんはすかさず知恵を貸してくれてゴールに近づいていく。そしてもともときれいな石が欲しいだけだったルリちゃんも徐々に鉱物学のプロセスそのものを楽しむようになっていく、その様が読んでいる側にも存分に伝わります。
2巻では1巻から続いていたサファイア探しに一つの区切りがつく巻ですが、そこまでのプロセスは地味な絵面にもかかわらず壮大なロマンと冒険があります。何しろ相手は地球と自然の歴史そのものなので。
科学的探究心にあふれる人に是非お勧めしたいマンガです。
ここで一話の試し読みもできます。
宙に参る(2巻) - 肋骨凹介
出ました。大好きなマンガ、宙に参るの2巻が。
これは1巻出た時の感想記事。感想というかただのオタク長文。未読の人はこっちを先に読むといいんじゃないでしょうか。
2巻ではさらに怪しげな登場人物たちが増え、ソラさんの周りもどんどんときな臭いことになっていくんですが……
この巻の白眉は間違いなく単話エピソードの不滅の超新星でしょう。
ロックバンドが自分たちの死後に新曲を発表するのに最高の形とは?に対するSF方面からのベストアンサー。もし自分の好きなバンドとかアーティストにこんなかっこよすぎることされたら多分泣きわめいちゃうと思う。
単行本ではこのエピソードで出てくる曲の著作権について考えるかきおろしマンガと、まさかのリイド社法務部による見解まで載ってます。
宙に参るは次にくるマンガ大賞3年連続ノミネート中。まだまだ来続けるであろうことうけあいです。
オオカミくんは早川さんに勝てない - はれやまはれぞう
今連載で読んでいる中でも飛び切り好きなラブコメマンガのひとつ。
変身後の姿はどう見てもかわいい柴犬にしか見えない狼人間の尾上くんと、クラスでは尾上くんを見下しつつもその実めちゃくちゃ動物好きで変身した尾上くんを彼とは知らずに可愛がりまくってしまう優等生の早川さんの、ちょっとファンタジーなラブコメです。
単行本が出たタイミングというわけではないんですが、しばらく連載がお休みで心配していたところ8月に待望の更新再開でやったー!となりました。やったーーーー!!!!
この前完結した「姫乃ちゃんに恋はまだ早い」や、今年から連載が始まった「今日から始める幼なじみ」など、くらげバンチは大好きなラブコメ作品が多いんですが、オオカミくんは中でも特に好きな作品です。
待望の最新話では同じくオオカミへの変身能力を持つ尾上くんの母も登場して、また別次元のかわいさが始まっています。尾上家の面々可愛すぎるよ。
そうそう、尾上ママといえば作者ツイッターにてひっそりスピンオフが始まりました。
こちらも必見です。ママ可愛すぎる。
ウルトラハッピー 俺と僕 - 稲井カオル
引き続きくらげバンチのマンガ。こちらは読みきりです。
「うたかたダイアログ」や「そのへんのアクタ」でその無類の会話劇センスを披露しまくっているコメディマンガの名手、稲井カオル先生が突如くらげバンチにやってきました。いやー超おもしろかった。
今作は同性婚が可能になった社会で結婚式の準備を始める男性カップルがメインのコメディなんですが、もうすごい。全力の稲井カオル劇場。
1ページ目こそちょっと切なくも困難な恋愛劇が始まりそうなスタートなのに2ページ目で早々にオチるし、そこからはほぼ全ページに笑いを仕込んでくるんですよ。パンチを食らって立ち上がろうと前を向けばもう次のパンチが来てる感覚。
お話自体も結婚式に向けたカップルの幸せに満ち溢れたストーリーで、笑いと幸せが終始あふれかえっています。すごい。
ウルトラハッピーのタイトルに偽りなしの多幸感まみれのコメディでした。最高。
おしまい
以上です。疲れたのでこの辺で。
ではまた次回。