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2020/9/9 ロロ いつ高シリーズvol.8『心置きなく屋上で』観劇レポート
ロロ いつ高シリーズvol.8『心置きなく屋上で』
初日を観てきました!
公演詳細はこちら
会場はKAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオです。
実は私、ロロの作品を劇場で観るのは今回が初めて。通話劇シリーズ『窓辺』の配信は観てましたが、何の予習もなしで挑みました。だから、観るまでいつ高シリーズのコンセプトも知らなかったんです。
公演期間中限定公開の過去のいつ高シリーズの動画はこちら↓(せっかく初日に観に行ったのに私が記事を書くのが遅すぎて投稿してから2日間しか観られないの、ほんとに悔やまれます…)
高校生に捧げた作品
感想を一言で言うと、
「高校生の時に観たかったな…」というのが一番に出てきます。
私も高校時代、弱小ではありましたが演劇部に所属していて、全国大会に行くのが夢でした。
指導者もおらず、練習場所すら確保できないことも多く、決して良い環境ではありませんでした。
それでも私は本当に青春舞台(全国大会の模様を放送するNHKの番組)を目指していました。ただし演劇は一人ではできない。みんなで同じ方向に進んでいないとどうにもならないということも痛感しました。
そんな苦い思いもしながら、仲間と過ごした3年間。結局は県大会止まりだったのですが、こういう「お手本」的な上演を観る機会があったらまた違っていたのかな、なんて思いました。
経験者には周知のことですが、高校演劇大会には10分間の仕込みと60分間の上演時間という制限があります。
「いつ高シリーズ」は、この高校演劇のルールに則って上演され10分間の仕込みも上演の一部として公開されます。
仕込みを行う部員(俳優)たち。タイムキーパーの「〇分経過」の声に、強く時間を意識させられます。
そして10分経過し、仕込み時間は終了。大会さながらのタイトルのアナウンスがされて上演が始まるとき、本番前の緊張感と高揚感を思い出させられました。普通の上演ならこちらまで緊張することはそんなにないと思いますが、仕込みを見ていることで、自分もその部員の一人になったような気がしたんです。
客席には現役高校生もいました。彼はどう見たのだろうか。自分の演劇部に持ち帰って創作の糧にするのだろうか。なんて勝手に色々考えてしまいました。
『心置きなく屋上で』
今作は、タイトル通り、屋上が舞台の物語。
私が印象に残ったポイントを挙げるとしたら、次の3つ。
※微々ネタバレありますのでご注意!
①ドキリとする甘酸っぱい言葉
高校時代って、小恥ずかしい台詞をサラッと言ってしまえる年代なのかもしれません。
話題が流動的な友達同士の会話の中で、漫画って1巻と最後の方じゃ絵柄違うよねという話題から、「もし自分が漫画だったら何巻くらいの絵なんだろう」と、過去と現在、将来に思いを馳せたり。
屋上から地上を見下ろして、「高い所から地上を見るの好きなんだよね、運命を見てる気がする」と、感慨に耽ったり。
高校生でも一人前に大切な人はできてしまって、「愛してるって名前の付く前の愛情をプレゼントしたい」なんて気持ちになったり。
思ってても大人になるにつれて口に出来なくなっていくのはどうしてなんでしょう。
子どもと大人の端境で、どこか宙ぶらりんな高校生の登場人物たちがこんな言葉を紡ぎながら関係を織り成す。
その尊さを知るのは子どもではいられなくなってからなんだなと実感しました。
②編集的に創られた戯曲
以前『日本演劇現在形 時代を映す作家が語る、演劇的想像力のいま』という本を読んだときに、主宰の三浦直之さんの言葉で印象に残っていたことがありました。
なにかおもしろい小説、漫画、音楽、映画、などに触れると「これおもしろいから、自分もやってみたいな!という衝動に突き動かされることが多いです。僕だけが見つけたいろいろな面白さを、ひとつの作品に詰めこんで、『ほら、これ面白いでしょう?」って他の人たちとシェアしたい。
(引用:岩城京子 編『日本演劇現在形 時代を映す作家が語る、演劇的想像力のいま』フィルムアート社、2018年、pp.215-216)
こういう作風を「編集的」と自ら語っていましたが、上演を観て納得しました。
漫画や音楽の固有名詞がたくさん散りばめられていて、色々なカルチャーがスパイスのように物語に味付けを加えているのが小気味良いんですよね。
さらに、固有名詞が出てくることによって、その面白さを最大限楽しめるのはその知識がある特定の人だということになります。こういう小ネタが分かると、「同じコミュニティにいますよ」と言ってくれているようで、分かる人同士の結び付きがより強固になるように思いました。
もちろん、分からない人に対しても、未知の他のカルチャーとの出会いを提示しているという意味合いが強く、知らないから置いてきぼりとはなっていないと私は感じました。
③高さを感じる構造
これはどういうことかと言うと、登場人物たちの移動によって、空⇔屋上⇔中庭と、世界の広がりを感じたということです。
あくまでも舞台は終始屋上だということは変わらないので、視覚で見せるのではなく言葉と視線で丁寧に描かれていて、想像力を刺激されました。
もう少しはっきり言うと、私たちが舞台上に見ているのは屋上で繰り広げられる人間模様なんですが、登場人物が空(上)や中庭(下)に移動するのを台詞と屋上にいる人物の目線によって表現しているので、その様子を観客に想像させて成立しているということです。
これは演劇だからこそ有効な手段ですよね。こういうことを鮮やかにされると、観賞後、爽快感を感じながらおうちに帰れます。
まとめ
初の「いつ高シリーズ」観劇、想像以上に満足でした!
高校生なら無料、U25のチケットも格安なので非常に若者に優しい公演です。
高校生、とくに演劇部で大会に出場したい部員の皆さんには本当に観てほしい!
もう8作目で遅ればせながらなんですが、今後も追いかけて観ていきたいと思わせてくれる作品でした。
☆いつ高シリーズの戯曲DLページはこちら☆
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