絶縁を決めた日
頼んでもいないのに小学生の頃から月に一度縮毛矯正をかけに行かされ、前歯を削ってインプラントにされ、まぶたにテープを毎日貼ることを強制され奥二重にされた。少しでも太れば食事を出してもらえず、私の意見を聞くこともなくお仏前のお供え物みたいなご飯を出された。父と同じくるくるの天然パーマも好きだし、垂れた眉に薄幸な目元も鶴瓶みたいで気に入っていたのに。30歳のある日、鏡に映る母そっくりの顔に嫌気がさし、母に強制された"顔作り"を辞めてみた。なんだかとてもしっくりきて、すっぴんが大好きになった頃、地元で仕事があり久々に実家に泊まると仕事でクタクタに疲れた私に「写真、写真、写真撮らなきゃ」と言い勝手に横に並ばれ、何度もシャッターを押された。抵抗する気力も出ずひたすら無表情でカメラに収まった。帰りの新幹線で、母から写真と共に「眉が下がって昔より可愛くなくなったと、パパと言っています。」という衝撃のメールが届いた。好きな仕事に就いて有意義に働く私を両親に見せることで生まれて初めて親孝行が出来ると思って私は地元の仕事を引き受けたんだ。あんたたちがついに褒めてくれるんじゃないかと思って引き受けたんだ。半分はあんたたちの為に、クタクタになるまで働いたんだ。クソが。溢れ出る怒りと悲しみを抑えて「疲れ果てた娘にかける言葉かね」と送った。なんと、にこにこしたスタンプが送られてきた。私はあんたのお飾りじゃねえ。私は私の為に生きると決めた。それから本当に少しずつだが洗脳が解け、本を読み漁り万全の覚悟を決め、勇気を振り絞って、一ヶ月後、私はついに絶縁した。あの日の私の勇気を、私は一生忘れない。偉いぞ、私。お疲れ様、私。愛してるよ、私。