大きな過ち

中学1年の時、壮絶ないじめにあった。それはある日突然始まった。水球の時間、私が投げた球を誰も拾わなかったのが開始の合図だった。トイレで水をかけられる、上履きに画鋲を入れられる、机を逆さまにされるなんてまるで古いテレビドラマみたいなことから、プールに落とされる、果ては裸にされて服を隠されるなんてのもあった。当時長瀬智也が主役のムコ殿というドラマが流行っていて、主題歌の"ひとりぼっちの歯ブラシ"という歌が大流行していたのだが、給食後にひとりで歯を磨いていると囲まれて大合唱された。当時校内放送で毎日流れた世界水泳のテーマソングだったB'zの"ウルトラソウル"と合わせて、この2曲は今でもふいに流れると背筋が凍る。

そんなある日、迎えの車のなかで母にクラスでいじめられていることを告白した。母の顔が歪んだので、心配させまいと「私をいじめるなんて100年早いっつうの!」と強がると、母は「あなたそう思っているならいじめられていないじゃない。大袈裟に騒がないで、恥ずかしいから」と心底ほっとした顔で放った。あの瞬間から私は物事を斜めに見て人生を悲観する悲しい子供になった。

悲しい子供は、そんな悲しい母親をそれでも大人の代表であると思い込み、自分をいじめるボスに贈り物をし、言われるがままピエロに徹し、ボスの隣にいわばスネ夫のようにべったり貼り付き、あろうことか新たな標的をいじめる側に回った。そしてそれを母に"私すごいでしょ"とばかりに自慢した。母は「あんな気味の悪い子いじめられて当然よ」と言った。私は誉められたと感じて心底嬉しかった。

私の心に30になってもべったりと貼り付くいじめの傷、私がいじめたあの子の心にも絶対に残っているはずだ。

あの惨めなスネ夫もどきに

何してんの?あんたの親は最低だけど、そんなことくらい気付きなさいよ。あんたも十分傷付いたでしょ。どうして同じことを人に出来る?頭を使え。心で考えろ。こればっかりは親は関係無い、あんたの人間レベルの低さが原因だ。私は一生懺悔し続ける。あんたと一緒に。人間としてのあんたを取り戻しなさい。子供のくせに悲観するな。諦めるな。頑張るべきは勉強じゃなく、あんたの心と向き合うことだ。

2度と同じ過ちは繰り返さない。

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