美術館は何もわからん
私は美術館に行くのが好きだ。
それは絵が好きで、写真が好きだからというのもあるが、たぶん深層心理的に美術館に行ってる自分が好きなんだと思う。
小さい頃から親にかなり連れて行ってもらった。
美術館と図書館は飽きるほど連れて行ってもらった。
どっちも興味はなかったが、親が好きだったというだけ。
見ても見ても何もわからないし、眠くなるけど、美術館のグッズコーナーと、図書館のVHSコーナーは好きだった。
そんな右も左も分からない私が美術館に行ったらどうなるか。
『話しているのは誰?〜現代美術に潜む文学〜』というアート展を国立新美術館に見に行った。
テーマはアートに文学を魅せるというもの。
文学とは、言葉による芸術品である。
文字はないが、文学らしい。
6人の作家が各々の空間をつくり、その部屋で作品を展示していた。
本を読んでいる訳ではないのに、誰かに語られているような物語の展開。
1人目。
田村友一郎さん。
『空目』をきっかけに、そこに存在しないものが見えたような気がすることを表現している。
まず、これ。
これである。
一番はじめに見る展示品。
なんのこっちゃわからん。
でもね、よーくみると、
『LIVE FREE OR DIE』
と書いてある。
『自由に生きるか、死ぬか』
ほお、深そう。
ちょっと、まず生きるか死ぬかの話をしてほしくもなるな。
うーん、わからん。
次に、これ。
私のホームにも採用されているものである。
これは良かった。
可愛い。
角部屋にガラス窓があり、中が黄色い。
全面タイルでお風呂みたいである。
その中に座りづらそうな椅子があって、机の上に模型がある。
はい、黄色のインパクトとお風呂ってイメージだけで、なんもわからんです。
ガラス窓が長方形なの可愛かった。
そして、これ。
ナンバープレートだらけの部屋。
一番初めのやつの制作現場かと思った。
こんなにいっぱいの中から選びとったの。
それはご苦労なこった。
これもわからんよね。
ここをガラスから覗き込む形だったんだけど、ガラス窓が小さくて、壁とほぼ同一化してて、かつ、ガラスの透明度が高すぎて、一回ぶつかった。
普通に痛くて「いって」と言ってしまった。
他の人に見られていなくてよかった。
そして、これ。
四面のモニターが吊された部屋。
モニターで、何かについて話してるんだけど、ずっと聞いてても何のことかわからなかった。
洗脳されそうだったから、離れた。
そして、オールがたくさん綺麗に並べて置いてあった。
もちろん、なんだ!?なんだ?!なんだ!!ってなったよ。
説明があまりにもない。
当たり前に、これが美術なんだけど。
あーあ!頭にくる!
教えてくれ!と言いたくたる。
それをしてしまったら面白くないんだけど、言いたくなる。
本当は心を落ち着かせてゆっくり考えるべきなんだと思う。
色んなことに蝕まれて、早く答えを求める思考になってしまっていると感じた。
あとから、説明を読んだ。
このオールは屍を錯覚させるためらしい。
ナンバープレートの『LIVE FREE OR DIE』の『OR』と『OAR』をかけてるんだって。
いや、わかるかぁ。
我、日本人ぞ。
そして、これ。
上の部屋の端っこ。
そして、
ちょっと回ったもう端っこ。
え?
は?
なに?
マック?
それは紛れもなくマックのコーヒーにマドラーにミルク。
いや、見たことあるわ。
知ってるわ。
さすがに馬鹿にしすぎでは?
とまあ、凡人発想炸裂。
説明を読むと、これは生死を表している。
コーヒーが0の状態から、ミルクを入れられ混濁する。
そういうこと。
いや〜、わからんよ。
2人目。
ミヤギフトシさん。
まず、これ。
ふーん。
かもね。
テレビを見るときは、明るい部屋で離れて見てねってよく言われたし、そうかも。
写真、
写真、
写真。
写真は好き。
特にこう、ぼやけてる写真は好き。
写真だけど、薄くて後ろから光で照らされているものもあれば、写真なのに動いていて、よく見ると動画のものもあって、面白いと思った。
ずっと誰かの会話が流れているがこれも、わからない。
これがめっちゃくちゃ小さい。
聞くまでもないと耳がシャッター閉めちゃってる。
なんも聞こえん。
想像力の無さと、大きい音ばかりで生活していたことに気づかされる。
そんなこと気付いてほしい核心部分ではないのだろうけど。
3人目。
小林エリカさん。
まずは、これ。
何を?
何を?
ねぇ、何をなんだい?
先に進もう。
なんだ!?これは!!
凄いぞ!!
魅力的!!
ずっと見ていられるアレだ!!
わからんけど、ずっと見ていられる!!
凄い光沢を放っている。
この緑は蛍光緑色を発するウランガラスらしい。
ウラン。
そして、これ。
これも美しい。
この作家さんの感性が合うのかもしれない。
円に水辺がマッピングされている。
凄く落ち着く。
これもずっと見ていられる。
ここに寝そべられるなら、時間忘れるくらいには居られそうであった。
そして、これ。
これが、ポスターにもなっていた写真である。
指に炎が点っている。
超能力者ならありえるが、通常の人間にはなかなかありえない。
おそらく何かを塗って、火を灯す科学的なアレであろう。
説明によると、全体のテーマとして原子爆弾がある。
遡って見てもらうと、少しわかってくると思う。
原子爆弾の原料となるウランと聖火、原子力の起源から第二次世界での使用を表す。
広島には原子が届くはずが爆弾が届いた。
だいぶテーマが難しく、簡単に触って良いものか悩ましい。
4人目。
豊嶋康子さん。
木がたくさん壁に貼ってあって、幾何学の模様がたくさんあって面白いと思ったが、やはりわからん。
ここから何を感じとればいいのか。
説明によると、棚の脚を主役にしているらしい。
木から何かを感じとるのは難しいと思った。
写真のほうが好きだな。
5人目。
山城知佳子さん。
映画。
黒い幕の中に促されて入ると、スクリーンをたくさんの人が見つめていた。
途中から入ったので何がなんだから、わからない。
ストーリーが全く掴めない映画。
ずっと見ていると、ドラッグみたいな映画だと思った。
そう思ってしまったんだから、しょうがない。
話が色々な時代や場面にグルグル飛ぶ。
繋がっているように思えないけど、本人にしたら繋がっているのかもしれないと思わされる。
結局何もわからず、外に出た。
説明によると、チンビン・ウェスタン『家族の象徴』と言うらしい。
チンビンは沖縄のお菓子で、ウェスタンはアメリカンの西部劇。
説明を聞いてもわからんなぁ。
だから、なんなのか、さっぱりだ。
6人目。
北島敬三さん。
崩れかけた小屋や駐車場の片隅が写り、人の姿はない。
でも、誰かの暮らしがあったように感じる。
それはどんな暮らしであったか、想像したくなる。
がコンセプトの写真がずらっーと並んでいた。
確かになんだろうとずっと覗き込んでいた。
誰もいない廃墟。
だけど、なぜか心惹かれる。
あれは好きだ。
たくさんの外国の人々もいた気がする。
みんな変な顔してた。
陰影が不気味というか、人間っぽくないのである。
あれは不思議でずっと見ていられなかった。
なんか早く帰りたい気持ちになった。
なんだろう。
自分の気持ちの中にあれを見ちゃいけない何かがあるのだろうか。
以上。
美術館わからん放浪記でした。