【エッセイ】昨日のことのように。

 20年前に亡くなった親友が夢に出てきた。これまでも何度か再会した。
 いつもなら何気ない会話をしたあと「行かなきゃ」と言う彼に、僕はただ納得し、バイバイをして、気付いたら朝が来ていた。
 しかし今回はとても苦しそうだった。そんなのは初めてだった。「ぎゃあ」という叫び声と共に起きてしまった。すぐに手を合わせた。

 「あれは昨日のことのように」と戦没者遺族は言う。その意味が僕にはわからなかった。

 目の前で奪われた大切な人。突然きたその瞬間から、時は止まってしまった。だから何十年経ってもそれは昨日のことのように鮮明に思い出す。

 現代ーー病気や怪我で倒れたとしても、今の平和や医療の上では突然の別れはほとんど起きなくなった。看取られ亡くなった人は、丁寧に扱われ、きれいな顔で皆と最期の挨拶をする。
 なまなましい死に顔に出遭わなくて済むなら、そうした方がいい。

 トラウマと言えばそうだろう。それでも夢に出てきても僕は全然怖くはない。丁寧に成仏されたと信じているから。

 それでも今朝は思った。「辛い思いをさせてごめんなさい。本当にごめんなさい。どうか安らかに成仏してください」


 苦しい顔のまま独り亡くなった彼。発見した僕。遺族に会わせる前、いろんな人が彼を綺麗にし、丁寧に運んでくれた。今でもそのすべてに感謝している。大学一年での突然の発作だった。
 八月。そういう時期が今年も訪れたことを彼が教えに来てくれた。終戦記念日とお盆が重なるなんてそういう運命だったのかもしれない。

 死んだらそっちにいくから、それまでどうか待っていて欲しい。

 その時は、夢で話したどうでもいいはなしの続きがしたい。

クスっと笑えたら100円!(笑)そんなおみくじみたいな言霊を発信していけたらと思っています。サポートいつでもお待ちしております。