【エッセー】リアルの何がいいって。
実家に帰った。
実家には普段読まないけどたまに読みたくなる本があれこれしまってある。
たまに読むから忘れてたことがまたクスッと笑えて、それがいいのであって、人間の"忘れる力"ってのもいいなぁっていつも思う。一冊で何度もおいしい。
昔、ええっと六年前くらいかな?金沢に住んでる彼氏と付き合ってた。僕としては珍しく長身すらっとイケメンの彼氏でした(笑)
その彼と大阪の堀江でデートしてたとき、ふらっと入った雑貨屋?の二階で、無料の個展をやってるというので階段を上がってみた。
そしたら15畳ぐらいのスペースに道路側に普通の窓があって、一軒家の二階みたいな作りで、そこの壁にいろんな絵と、中央に椅子とテーブルと人がひとり座っていた。
上がってみたら他に誰もいなくて、その人がきっとこの個展の主で、勝手に"売れない作家さん"なんだろうなと決めつけ(笑)、人は他には僕らしかおらず、逃げるにも逃げられず気マズーみたいなことを悟った。"個展あるある"である。
でもまぁせっかくだし、「ちょっと見させてもらっていいですか?」と聞いたらドーゾドーゾとニコっとしてくれたので、壁にかけてあった挿し絵のようなもののいろいろを拝見した。
それが実はとってもツボって、かわいくて、おもしろくて、へー!ほー!ぎゃはは、なにこれ!?としっかりとウケてしまった。
作家さんが目の前にいるのに、僕はわちゃわちゃと声を出して笑ってしまってなんだか恥ずかしかったけど、作家さんもドーゾドーゾという感じで僕らを見守ってくれてたのもよかった。
知らない作家さんの作品だし、『生きてく上で必要か必要じゃないか?』という命題でいうと、明らかに「必要じゃない」ジャンルのものなのに(笑)、僕は結局その作家さんの本を買ってしまった。忖度じゃなく、ちゃんとウーンと数分悩んでしまった。(作家さんが目の前にいるのに失礼な話だ。笑)
千円くらいしたし。ちなみに彼氏はあっさり買わなかった(笑)
そしたらその作家さんが「どの作品が気に入りましたか?」と聞いてきたので、僕のウケてた笑い声ももちろん耳に入ってたようで(お恥ずかしい…)、えー、どれかなー?と僕はもう一度その部屋を360度見回して楽しんだ。
『このコンニャクの椅子に座ってる犬がめちゃくちゃかわいいです』と僕が言うと、僕が買った本にすらすらと『コンニャク椅子に座った犬』の作品を描いてくれた。僕はすっごい嬉しくて、知らない人が描いた絵を見てまたクスクスと笑い、これ面白いですよねー、と言ってしまった。
その後、何年も経ってLINEスタンプでこの作家さんの作品を見つけ、今では気に入って使っている。
リアルに街歩きをしないと出逢えなかった作品たちと作家さん。
『コンニャク椅子に座った犬』のLINEスタンプはないけど、仮にあってもどう使っていいかわからない(笑)
必要ないものが町に溢れてて時に楽しい。