エッセイ「人生の振れ幅」
12月から1月にかけて、いいこととわるいことが波のように訪れた。
悲しい別れの後、それを癒す別の力に励まされたし、楽しい時間は突然切られ、その後ひとりの時間を取り戻した。そして新しいビジネスの便りまで届いた。
一時、美輪明宏師匠(以下、師匠)のラジオにハマっていた。師匠はよく『正負の法則』と言う。「正と負。プラスとマイナス。陽と陰。いいこともわるいことも全ての人に平等に訪れる」と。だから仮にいやなことがあったとしても、めげずに長生きしていれば、いつかいいことが訪れ、天命を全うする頃には総量として相殺される。ゼロに戻れるということらしい。
長崎で被爆し、オトコオンナやバケモノと揶揄されながら、数々の文豪や著名人に心底愛された師匠らしい言葉だなと、いつも片耳を傾けながら眠りについていた。
僕の本名は不思議なことに、どこで姓名判断しても大概『吉凶極端運』と出る(※吉本悠佑は京都で生まれた源氏名で本名ではない)。選択はいつも、吉と転ぶか、凶と転ぶか、極端な結果となるそうだ。
それで名前を変えたわけではないけど(笑)、むしろその『人生の振り幅』の解釈は気に入っている。
だって、何も感じずに生きていくなんてゼッタイにいやだもの。
おいしいもの食べたって、心動かされる人や景色や作品に出逢ったって、大切なものが壊れたって、信じてた人に裏切られたって、何も感じない不感症人生なんて。
だから僕はギャンブルしない。宝くじも万馬券も買わない。だって、もし当たったりでもしたら、その後どんな不幸が訪れるかわからないもの。ただでさえ人より振り幅大きいんだから、きっと鴨川がナイル川のように氾濫するとか、東山が大噴火するとか、ロクなことにならないわ。天変地異レヴェルよ。きっと。
順番的には不幸が訪れたあとに幸福が訪れるのがいいな。上書き保存。
そういえばドイツ最後の年。家が火事になり、扁桃腺をこじらせ緊急手術入院し、路上でラりったドラァグクイーンに殴られ、4年付き合ってた彼氏と別れた年の暮れ、日本料理の世界に入ろうって決心した。だから今、ここにいるのよ。私。
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