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思想とスプーンを滑らかにつなげるブランディング

とあるお店でブランディングに関してとても学びがあったので、その話を書いておきたい。

その日、次の用事までに時間ができてしまった。

考え事ついでに喫茶店に入ることにした。静かな店を求めて大通りからちょっと離れたところを調べ、そこに向かう。スマホの上のピンを何度か行ったり来たりするが、お店らしきものが全然見当たらない。よくよく調べてみると、ビルの前に出ていた扇風機なのか、風車なのか、何も書いていないそれがお店の目印であるようだ。

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喫茶店に入るつもりで来たせいもあって、必要以上に素っ気なく見えるビルの階段を上がって、主張の少ないドアを開けて入ると中はとても落ち着いた雰囲気の空間だった。テーブルも3つしかない小さな喫茶店だ。古びていくことを受け入れたアンティークの食器や机、主張する気のないメニュー、外の喧騒と距離を取るためか少し大きめな音楽。どれをとっても、素朴で静かで内省にぴったりな素晴らしい空間だった。

店主は物静かで、誠実な印象の男性だった。基本的にカウンターの奥にいて、必要以上にいろいろかまってこない。帰り際に聞いた話だと(帰っていく客にはお礼と少しの会話をするようだ)、20年そこで喫茶店を続けているそうだ。

名古屋の真ん中に、とても静かで、素朴な空間。まさにこう言う場所を求めていた。「どうか人気が出過ぎないでくれ」と心のなかで祈りながら次の目的地に向かった。

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この魅力は一体どうやってできたのだろうと考えてみる。

・入店までの体験
・内装やメニュー
・店主の為人
それらがとても滑らかにつながっている、嘘のない自然な美しさ。
内装なんかは恐らく真似をすることは難しくない。それなりにお金をだせば簡単にコピーできる。一方で入口はなかなかできない。お客を増やそうと思ったら、どうしたって店名ぐらいは表に出したくなる。メニューも売ることを基準に考えると、画像をのせたり、食欲を煽りたくなる。それでもきっとお洒落で客の着くお店を作ることはできる。だけど売ることだけを基準に考えると、この自然な美しさは成り立たない。店主の為人を中心によく見せることよりも、その価値観を真っ直ぐに反映した結果、全ての選択が滑らかにつながってこの魅力が実現している。たぶん。

実際はもっと泥臭い理由で、ただただ差別化を繰り返したら今の形になったのかもしれない。けどどちらにしても、小さな空間で店主が20年繰り返してきたまいにちに、客の出入りが加わって、ゆっくりした変化になって、滑らかでまるい自然な味わいになっていったんだろうな。
と妄想が捗ってもっと好きになった。

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