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未経験者でもシステム監査技術者試験に合格できた話(1回落ちましたが)

IPAの令和6年度(2024年度)秋期試験合格発表がありました。私は今回システム監査技術者試験を受験し、合格できました。令和4年度(2022年度)も受験したのですが、そのときは午後IIの論文試験が評価Bで不合格でした。1度落ちても、システム監査の経験がなくても、今回合格できましたので、教材や勉強の記録をまとめます。


1. 受験理由

1.1 ことの発端

日頃、いわゆる経営コンサルティング的な業務をしているのですが、近頃はITに落としていかないと、何事も実現できない、と思うことがしばしばありました。SIerの知り合いに相談したところ、ITコンサルティングやるのなら、システム監査技術者は資格としておすすめ、というアドバイスを100%信用し、受験を決意しました。それが2022年の夏頃でした。

1.2 目論見はずれ

素直に真に受けて勉強し始めたところ、午前IIと午後I試験は、同じ年に応用情報技術者試験に合格していたので、特段問題はなかったのですが、問題は午後IIの論文でした。何かよくわからない。参考書を写経しても、自分で論文を考えても、何がいいのか悪いのかわからない。そのまま試験当日となり、午後I試験までは無事終わりましたが、論文の問題を目にして、問1も問2もどちらも書くネタがない。苦し紛れに選んだ方で、字数は埋めますが、試験終了と同時に頭に浮かんだのは、「こんな試験受かるわけない。もう二度と受けない。」という言葉でした。そして案の定、評価Bで不合格でした。

1.3 心変わり

そして2年過ぎました。2024年の春期試験で2度目のITストラテジスト試験を受け、終わった直後になんとなく手応えがあり、システム監査技術者試験ももう一回受けたら何とかならんかと、いう淡い期待(妄想?)が出てきました。受かるわけないと2022年の受験終了直後に思いつつも、どこか悔しい思いが残っていたのだと思います。記録によれば、2024/6/16から再びシステム監査技術者試験の勉強を開始しました(なお、その後7月にITストラテジストに合格していました。ITストラテジストも1回不合格となっており、2回目の受験でした。)。

2. 使った参考書と勉強時間

2.1 午前II対策

問題集と過去問をまずはきっちりやりました。というのも、2022年に受けた時の点数が64点で、あと2問間違えたら足切りという点数だったので、今回はしっかり対策をしました。過去問はIPAのHPから参照できるH21年度からR5年度まで、全部満点が取れるまでやりました(ただし、法改正やシステム監査基準等の改訂による影響でボツ問が一部あります。)。

あと、午後IIとも関係しますが、2023年度システム監査基準等の改訂があり、2024年度は改訂が問題に反映される可能性がある初年度でした。上記の問題集も改訂反映前の問題で構成されており、このままでは不足がありました。
でしたので、システム監査基準、システム管理基準、システム監査基準ガイドライン、システム管理基準ガイドライン、財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準も改訂後の内容を何度も読んで頭に入れました。
足切りが怖かった分、過学習だったようで、本番では100点でした。

https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/sys-kansa/

https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230407/3.pdf

2.2 午後I対策

あまり根拠なく、古い過去問をやっても傾向が変わっているかもしれないから、10年分やればいいか、くらいの発想で、IPAのHPから過去問をダウンロードしてやりました。2回くらいやったはずです。3回目をやろうとしたら、答えをほとんど覚えてしまっていて、意味がなくなったので、2回で止めました。
問題の解き方自体は、「問題文を読んで、設問に合う箇所を問題文から出来るだけ拾って答える。」、「問題文のネガティブワードや違和感があるところをチェックして、それを回答にできるだけ使うようにする。」という、どの参考書にも書いてあるようなものでした。
高度試験にも寄るでしょうが、システム監査技術者試験の午後Iは素直に解けば良いと私は考えています。
本番での問題選択は、人それぞれご意見があるでしょうが、私はリスクヘッジができるよう設問数が多い問題を選ぶこと、知らない言葉が少ない問題を選ぶこと、くらいの基準でした。今回は問1がDevOpsについてだったのですが、「DevOps」という言葉を見た瞬間に問2と問3を選びました。終わった時は、60点行ったかどうか微妙で心配でしたが、結果的にはいつもの解き方は変えずに解いたことが良かったのか、結果は71点でした。

2.3 そしてポイントの午後II対策

おそらく、受験生の多くは、特に私のようなシステム監査未経験受験生はここがヤマになるはずです。私は2年前に十分な対策がないままに受験して失敗していました。その失敗の根本は『システム監査技術者らしい論文が書けない。』ということでした。それは当たり前です。システム監査やったことないのですから。ここから対策が始まりました。使ったのは3つです。

  1. システム監査のお手本である、システム監査基準、システム管理基準、システム監査基準ガイドライン、システム管理基準ガイドラインを何度も読んで、システム監査技術者としての視点を身につける。

  2. システム監査技術者の方が書いた書籍を読んで、システム監査技術者の視点を身につける(以下リンクの書籍)。

  3. 自分が書いた論文をシステム監査技術者の視点で添削してもらう。Chat GPTに。

1は、すべての文書を何回も読みました。最初はつまらないかもしれませんが、システム監査をやる上での基本、手順、ノウハウが詰まったものであり、これに書いてあることを論文に使うことは、プラスにはなっても、マイナスになるはずはありません。受験生の中でも、これを読むことにかけた時間は多い方だという自信はあります。

2は、1回目の受験の時は、あまり価値がわからなかったのですが、『システム監査技術者らしい論文が書けない。』ということを解決するために、こちらの書籍に書いてある切り口を使える、と繰り返し読むにつけ、気づきました。それに気づいてから、こちらの書籍もおそらく3回は読んだのではないでしょうか。
1と2で得た知識、言葉を論文に使うことで、グッと『システム監査技術者っぽくなる。』と妄想かもしれませんが、思えるようになりました。

そして、3です。自分が書いた論文をChat GPT(有料版)に添削してもらいました。予備校に通ったり、通信添削を受けたりする方もおられるでしょうが、書いた後すぐに添削してもらえて、要求すればいくらでもそれに合わせて添削してもらえます。使わない手はありません。3により、さらに論文のレベルを上げることができました。参考までに、私が使っていたプロンプトを以下に記載します。実際には、Chat GPTがそれっぽい回答を出力してくれるまで、問いを重ねて自分の論文を磨いていきました。

これはシステム監査技術者試験の{試験問題}と、私が考えた{解答案}です。
あなたはプロのシステム監査技術者です。私の{解答案}を添削してください。
この{試験問題}は難しいですが、私は是非合格したいので、合格できるレベルまで添削してください。
あなたはコードで出力する癖があるので、コードではなく、全てテキストで出力してください。

 試験問題: 
"""



"""

 解答案: 
"""



"""

ちなみに、論文のレベルですが、私が目標としたのは、こちらのテキストに付属しているサンプル論文でした。

午後IIの過去問は、H29〜R5年度まで問1と問2両方やりました。2022年度の本番でどっちも書けない、という状態になっていたので、どんな問題でも書ける、という自信をつけるために、食わず嫌いをせずに書きました。

そしていよいよ本番ですが、問1が『IT投資のガバナンスに関する監査』が出題されました。これはまさにシステム管理基準等の改訂を反映した問題でした。私は、1でシステム管理基準、システム監査基準ガイドラインを読み込んでいたのが、といってもたまたまではありますが、これが功を奏し、ガイドラインに書いてあったことを思い出しながら、論文を仕上げました。それで結果A評価、合格につながりました。

2.4 勉強時間

仕事をしていますので、平日は2時間、土日は4時間は平均やっていたはずです。週18時間ですね。勉強期間が4ヶ月なので、18時間*4週*4ヶ月=288時間程度はやったでしょうか。

2.5 参考書

すでにいくつか書籍をピックアップしていますが、私にとって今ひとつだったのが、多くの受験生が使っているであろう、以下の2つの書籍です。

うかるシリーズは、上では論文レベルとして良いとは書いてありますが、それは確かにそうではあります。
しかし、出版社様やご著者様の都合により、書籍の改訂年でなかったばかりに、システム監査基準等の改訂に全く対応されておらず、2024年度対応とは名ばかりの書籍になってしまった面があるのではないか、と個人的には思いました。こちらの出版社様の書籍を私は資格試験以外でもとても信頼しているので、改訂タイミングが悪かっただけだとは思います。
なお、繰り返しになりますが、午後IIのサンプル論文は、自身の論文ネタとして使えそうなものもあるので、付録部分に過ぎないかも知れませんが、そこは有益であったと考えます。

そして、こちらの合格論文の書き方も、よく挙げられています。以下、これも個人的な意見です。あえて言えば岡山先生の論文は置いておくとして、他の方の論文の多くは、うかるシリーズの論文と比べて、扱っている論文素材、回答要求の適合度、文章レベルとも、物足りなさを感じてしまいます。ですので、こちらは購入したものの、一切使いませんでした。

個人的に期待していたうかるシリーズがシステム監査基準等の改訂に対応していなかったので、改訂の対応も含めて、知識習得のためのテキストとしては、こちらを使いました。
システム監査技術者試験の全体を理解するという意味では、今年度に限ってはこちらが一番無難だったのではないでしょうか。これも私見です。

2.6 まとめ

まとめると、知識面では①TACのALL IN ONEと②高度試験問題集、論文は③システム監査基準等と④「よくわかるシステム監査の実務解説(第4版)」および⑤Chat GPT、そして⑥過去問が2024年度の私にとっては良かった教材という結論です。

3. 講座に申し込むか、模試を受けるか問題

3.1 独学か学校・通信講座を受けるか

私個人としては、勉強期間が3-4ヶ月の短期間で対応できる試験と考えているので、独学で足りました。勉強の管理はスプレッドシートがあれば出来ますし、論文の添削もChat GPTで十分でした。
しかし、ペースメーカーが欲しい、勉強仲間が欲しい、先生に質問したい、添削して欲しい、安心材料が欲しいなどの動機があるようなら、学校・通信講座を利用されるのも勿論良いかと考えます。学校等は一切調べていないので、どこが良いのかわかりません。

3.2 模試を受けるか。受けるならどこの模試が良いか

独学の方は、到達度を測るために模試は格好の材料になると私は考えます。
私は過去いくつかの国家試験を受けていますが、そのときからTAC信者でして、模試を受けるとしたらTAC一択です。
今回も本番の1ヶ月前にあるTACの公開模試を受けました。模試を受けることもスケジュールに含めていて、模試で合格判定が出ることを目標にして、逆算して勉強スケジュールを立てていました。模試までに勉強を一通り仕上げて、模試で出来なかったと自分が思うところを、残りの1ヶ月で補う、という計画でした。
そういう直前の微調整目的に加え、この公開模試は午後IIを生身の人間に唯一添削していただける場となりますので、Chat GPTでは教えてくれない『お作法』を学ぶ場とも位置付けていました。
受験後の添削答案から、2つのことを学びました。①回答要求にないことをか書かない、②ある程度文章を書いたら、「例えば」、「具体的には」と書いて具体例を書くと採点者に伝わりやすくなる、という2点でした。これは本番でも徹底しました。

4. 今後

知り合いに勧めに乗って安易に受験を決意してから2年半経過し、不合格も経験しましたが、今回合格できました。
勉強を通して良かったのは、合格できたこと自体はもちろん嬉しいことではあるのですが、システム監査基準等を読んで、システム監査の視点に触れることが出来たことです。すぐにコンサルティング実務に使えるほど甘くはないのですが、お客様のシステムに対する課題に触れるとき、一段深い話が出来る場面も出てきました。そのため、受験して良かったと考えています。
そういったこともありながらも、他のnote記事にも書いていますように、すでに心変わりというか、興味が広がっておりまして、、、今度は情報処理安全確保支援士を受験しようと考えています。個人的興味が99%で、あと1%は仕事につながる部分もあるかも、というくらいです。

そんな勝手気ままな風来坊の雑記をお読みいただき、どうもありがとうございました。

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