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香月堂 - 第三話「もう一度、会いたくて」
人通りの少ない路地裏に、小さな看板がひっそりと揺れている。
そこには『香月堂』の文字。
運命の糸に導かれるように訪れる人々が、今日もその扉を叩く――。
夜の街は静かだった。
薄明かりの街灯が石畳を照らし、遠くで響く足音がやけに大きく感じる。
由梨はコートのポケットに手を入れたまま、携帯の画面を何度も見つめた。
「本当に行くべきなのかな……」
香月堂、とだけ書かれたシンプルなウェブサイト。
そのリンクを見つけたのは、何気なくSNSを眺めていた時だった。
「心の悩み、そっとお聞きします」
そんな短い文章がやけに心に刺さり、気づけば予約フォームに名前を打ち込んでいた。
由梨は彼のことを忘れられないまま、2年が経った。
翔の笑顔。ふとした仕草。
そして別れ際に言われた、冷たくも優しい言葉。
「これ以上一緒にいると、お互いをもっと傷つけるだけだと思う。」
彼が正しいのだろう、とその時は思った。
でも、日々の中でふいに思い出す彼の声や、当たり前だった日常の温かさが胸を締めつける。
本当にこれで良かったのだろうか?
やり直すチャンスなんて、もう残っていないのだろうか?
「こんなことで相談していいのかな……」
何度もため息をつきながら歩き続け、ふと顔を上げると、目の前に小さな看板が現れた。
『香月堂』と書かれた木製の看板が、揺れている。
店の中から漏れる柔らかな明かりに、由梨の心がほんの少し温かくなった。
「ここで答えが見つかるわけじゃない、でも…(誰かに聞いて欲しい)」
そう心の中でつぶやきながら、彼女はゆっくり扉に手を伸ばした。
カラン、コロン――鈴の音が静かな夜に響いた。
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「いらっしゃいませ。」
奥から現れたのは、どこか神秘的な雰囲気を纏った女性だった。
店主のサラは優しい目を向け、由梨に微笑む。
「今日はどんなお話を聞かせてくれますか?」
その一言に、由梨は思わず泣き出しそうになった。
「……別れた彼に、もう一度会いたいんです。」
声が震えた。
でも、話し始めると次々と言葉がこぼれた。
「でも、もう迷惑かもしれないし……自分が情けなくて……」
サラは静かにうなずきながら、タロットカードを手に取った。
「お話ししましょう。まずは、カードに耳を傾けてみますね。」
由梨が選んだのは、星のカード。
その絵柄を見つめるサラは、ふわりと微笑んだ。
「このカードは『希望』の象徴。そして『新しい道』を示しています。」
「新しい道……?」
サラの穏やかな声が、由梨の胸に響く。
「彼との復縁を願う気持ちは、とても自然なこと。
でも、今のあなたに必要なのは『相手に頼る』ではなく、自分自身の未来を輝かせる準備をすることです。」
「準備……」
「はい。彼に会うことをゴールにするんじゃなく、あなた自身が『会いたい』と思ってもらえる存在になる。
そのために、この時間を使いましょう。」
星のカードが示すように、希望を抱きながら新しい一歩を踏み出していく――そんな未来が描ける気がした。
香月堂を出た帰り道、由梨は空を見上げた。
満天の星が彼女の足元を照らしている。
「もう一度会いたい」と願う心の奥に、「自分を変えたい」という新たな思いが芽生え始めていた。
由梨の背中を押したのは、香月堂のあの温かな光だった。
FIN.
「復縁したい気持ち、私も分かる…」
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