君が泣かないように

2024年6月27日 21:42

この記事は2024年6月16日(日) shibuya gee-ge.にて開催された「こばやしゆうと 1st ワンマンライブ『轟 ~序章~ はじまりの物語』」の第一部のセットリスト紹介です。
"音楽×朗読"をテーマに、楽曲の背景・世界観を拡張するべく、プロットを歌詞ではなく脚本として新たに書き上げました。
今回は『君が泣かないように』という楽曲の語り部分と歌詞の掲載になります。

"もう言葉にするほどでもないけれど"

【語り】

十数年、同じ屋根の下で過ごしてきた人が居なくなるのは、こんなにも寂しいものなのか。食卓を囲む数が減ってきたころでさえ、同じ家にいるという、ただそれだけで寂しさは誤魔化せていたのだと今になって気づいた。

昔は僕が家を空けるたびに「早く帰ってきて」と愛しい声を上げていたのに、今では君の方が帰ってこなくなったんだね。もう十分大人だと分かっているのに、最後のお別れでもないと分かっているのに、「寂しくなったら帰ってきてもいいんだよ」と、「まだ甘えてもいいんだよ」と、小さな子どもをあやすような言葉が喉元まできてしまった。子離れができてないのは、僕の方なのに……。

毎年祝っていた誕生日、友達を優先し、彼氏を優先し、僕たちが一番じゃなくなったときも悲しかった。今は君が育った街の、広すぎる家の、小さな部屋の片隅で、君が生きると決めた街に向けて心からの祝福を……。

生まれたときから、今までを君以上に君と過ごして来たから。当たり前過ぎて、もう言葉にするほどでもないけれど、僕はずっと………