1人の親と、1人の命と。
※コチラはアメブロ過去記事からの転載となっております。
2017年6月29日(木) +:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+
思いの外とても長くなってしまい分割にてお送りしております。
何処か端折れるトコロはないか読み返したけど、
全部必要だったので、
とりあえずそのままあげてしまいました。
そして次はその続きから書いていこうと思います。
立て続けにお目汚し失礼します。
鬼は自暴自棄となり己の身体をただ傷めつけてゆく。
人殺しという枷の重さでようやく心のバランスを保ちながら。
相変わらずな付き合いを続けていく中、
周りには何にも悟らせないように気をつけていた。
楽しいフリも大好きなフリもたぶん上手くなっていて、
こんな風に付き合いたいと羨ましがられるコトに密かな不快さを感じる。
それでも時折出てきてしまう不安定さで喧嘩の数も増えたように思う。
その度に避妊について持ち出しては打ち消される。
「避妊するくらいならセックスしない」
言い切る奴の言葉に閉口し、
次に来るかもしれない妊娠に怯える日々。
怯えるくらいなら別れたい。
別れたいのに別れ方が解らない。
他人の前では愛し愛されてるフリ。
奴はそれを信じて疑っていなかったけど、
そう思わせる程あたしは演技が上手くなっていたらしい。
そういえばあの時言ってたな。
「男が産婦人科に行くのは恥ずかしいんだ」
避妊具を買うのも恥ずかしい。
恥ずかしいクセにヤるコトは一丁前か。
温度差はどんどん激しくなるのに、
たくさんのフリが苦痛なのに、
好きでいなきゃならない雰囲気に潰されてゆく。
ある日の言い争いであたしが家を飛び出した時には、
迎えに来てくれたその拳をあたしの前に突き出し、
猫娯のせいだからと言われ部屋の片づけを手伝わされた。
拳の傷は神経を傷つけていて、
痛い痛いとこれ見よがしに言うのに耐えきれず、
治療費はあたしが払うと逆に怒鳴りつけ病院に引っ張って行き、
結果手遅れになったのも結局はあたしのせいにされ、
ハイハイそうですかと受け流すコトも覚えていた。
受け流せるくらいなら別れてしまえばよかったのに。
どうしてそれに気づかなかったんだろう。
転機が訪れたのは妊娠堕胎から半年は経とうとしていた頃。
専門学校も2年生になって1年の時とは違う面子の中に彼がいた。
クラス内で家族ごっこだなとと楽しくふざけ合う中で彼はパパ役だった。
パパと娘の設定で仲良くさせてもらい、
家族ごっこ以外での会話でも気が合う内容がたくさんの見え隠れし始めた。
奴とあたしは、
趣味の漫画も微妙な違いがあるし、
音楽に至ってはまったく合わないと言っていい程に真逆で、
その価値観の違いすら奴に歩み寄らないのを悪とされ、
押し付けられるコトにどうしようもなく辟易し、
元より合う人を探すのが難しい音楽を好んでいるあたしには、
そんな彼との共通の音楽の趣味に魅力を感じ始める。
だからといって恋愛感情を抱いたワケでもなく、
奴と別れようとは思うコトも出来ず、
仲のいい男友達としてせめて校内だけでは楽しく過ごしていた。
学校生活では、
それ以外でも目紛しい変化が多く、
気を紛らわせるにはもってこいの環境で、
夏休みを過ぎた頃にはもう卒業制作も開始して、
悪くない忙殺に甘んじて身を委ねていた。
誰が誰を好きだとか、
誰かと誰かが別れたとか、
恋愛絡みは遠い世界に感じてしまっていたけれど、
忙しさに感けるコトに心地よさすら感じていた。
後から聞かされたのだが、
彼の名前や話題をよく口にするようになっていたらしい。
でもそれはきっとお気に入りだからと疑いたくなかったと言われた。
確かにお気に入りの[男友達]だったけれど、
あたし自身その気もなかったので疑われても困る。
そんなある日。
クラスメイトが我が家に泊まりに来たいと言い、
それなら何人かで遊びにおいでよとあたしが提案すると、
ついて来たのが彼だった。
他にはいなかったので女2人と男1人でだらだらと我が家で遊ぶコトになる。
一頻り遊んで夜も遅くなり就寝してから数時間後、
目が覚めて何となく異変を感じる。
お尻、触られてる?
そっと彼に目線を向けると目が合う。
瞬時に逸らし合ったけど、
目が合ったというコトは間違いはなさそうだ。
困惑しながら目を瞑った。
翌日になり女友達が先に帰ってしまった後2人きりになってしまったので、
意を決して昨夜のコトを率直に聞いてみた。
ゴメンナサイと小さく言う彼。
立て続けに。
「好きかもしれない」
まさかの告白だった。
お尻を触るのから始まる告白って何!?と、
なんだかおかしくなってしまい笑ってしまった。
なんだろうこの人。
何を素直に言っちゃってんだろう。
しかも謝るって。
不思議なコトに無性に可愛く見えてしまった。
「彼氏がいるの知ってる、だから別に付き合って欲しいとかじゃないから」
焦り出す彼にあたしは閃いてしまった。
「あのさ、利用しても、いい?」
は?とぽかんとする彼に提案する。
あたしは彼氏と別れるからよかったら付き合って欲しい。
本当は凄く別れたくて。
でも別れる意味とか方法とか解らなくて困ってたんだ。
別れたいって言ってもゴネられるからそこで利用させて欲しい。
好きな人が出来ました。
浮気もしました。
こんな女とは別れてくださいって持ちかける。
そうしたらやっと抜け出せると思うんだ。
そんな話を一気に捲し立て妊娠堕胎の話も事細かに打ち明けた。
「もし嫌だったら断ってくれて構わないから・・・やっぱダメだよね?」
そんな話が成立すると思っていなかったのに、
驚くコトに彼の答えはYESだった。
酷い話を持ちかけたというのに嫌な顔一つせずに協力してくれると言う彼。
交渉成立。
その瞬間から彼との付き合いが始まる。
二股期間は1週間。
この間あたしと彼は性交渉が成立しきれなかった。
試みてはみたのだが、
初めてだった彼の方が緊張して上手くいかなかったので、
浮気という意味でも完全には成立出来ずにいた。
それでも浮気であるコトに間違いはないので、
別れ話には充分なだけの切り札を手に入れ、
1週間後のその日、
受話器を手にした瞬間からゴングは鳴り響く。
呼び出し音が途切れ奴の声が耳に入る。
「どうした?なんで今日来ないの?」
問いに返す。
「別れてください」
話し合いなんか出来る相手じゃないのはあたしが1番よく解っていて、
だからこそ単刀直入に簡潔に言い切る。
受話器の向こうで狼狽える様子が伺える。
なんで?どうして?と壊れたレコードのように繰り返される。
「好きな人が出来ました、浮気もしました、だから別れて」
無駄な言い訳はするとややこしいのでとにかく簡潔に伝える。
「だって昨日まで・・・じゃぁ昨日もなんで!?」
ヤるコトはヤっていた。
これ以上ない最低な女となるために。
それは彼とも了承の上だった。
尚も発せられるどうしてなんでという言葉に苛々が募る。
「なんでなのか、説明しようか?」
もちろんそんなのは覚悟の上だ。
なのに奴は嫌だと拒否る。
説明されたら自分に非があると奴は解っていたようだ。
自分の胸に手を当てて考えろと冷たく突き放す。
浮気とは何処までしたのかという質問にも正直に答える。
どうして?
説明する!
イヤだ聞きたくない!
じゃぁ言わないけど別れる。
なんで?
だから!
押し問答は続く。
不穏に思った部屋にいた兄が面倒臭そうに[俺が言うか?]と言ってきたけど、
余計なコトはいいからと一蹴した。
実際兄は何にも知らないし本当に余計なお世話だから、
いつまでも切らせてくれない電話に迷惑かけているかもしれないけど、
放っといてと断ったのだが。
ふと思って言ってみた。
「あまりしつこいようならお兄に変わるけど」
自信家ナルシストな奴の本当は小心者な部分が音として聞こえてくるよな瞬間。
小さく[わかった]とだけ言って長電話は終わる。
こんな時でも器の小ささ見せるのか。
馬鹿な男。
都合の悪い部分は耳を塞ぎ逃げる。
いつからこんな男だと知っていたんだろう。
だからこその彼への提案が閃いてしまった。
そんな狡い女にあたしもいつの間にかなっていた。
こんな結末になるとなんとなく解っていた。
1週間前それが確信に変わってしまった。
あたしが悪者にならなければ終わらないと。
その環境が整ってしまったと。
自分が優位に立たなければ気が済まない性格が仇となったね。
電話を切ってから彼に電話をしてすべて終わりましたと伝える。
そして[こんなあたしで本当にいいの?]という問いにも彼はYESと言う。
よくがんばったねと優しい声が痛かった。
翌日になりもう大丈夫だからと言った奴の言葉を最後に信じて、
ちゃんとした話し合いをするために家へと向かう。
逆上して何かされたらなんて覚悟をするまでもなく、
既にたくさんをヤり尽くされているのだ。
もう何にも怖いコトなんてなかった。
話し合いは思ったより穏やかに進み、
いつからなのかとか聞かれてそれもすべて正直に話す。
「最近、話題、増えてたと思ったんだ」
先にも書いたが疑いは多少なりとあったようだ。
ただそんなはずないと打ち消していたのだと伝えられる。
相変わらず本当の理由を聞こうとしてはくれなかったので、
未だ伝わらずにいるのが実に憎たらしいのだが、
今となってはもうどうでもいい。
この時は卒業制作の期間で、
奴は作品に関わっていてくれていたので、
もしそっちもやりたくないなら手を引いてもいいと言ったのだが、
それは最後まで手伝わせてくれと言われた。
手伝ってもらったりとか、
なんだかんだ言いながらあたしは本当はちゃんと好きだったんだ。
だから傷つかずにいられなかった。
いつかは解ってくれると信じ、
そのいつかがいつまでも来ないコトに絶望して、
こんな終わり方しか考えられない程に追い詰められてしまった。
もっと早く「別れたい」と口にしていたら何か変わっただろうか。
たらればなんて今さら言ってもどうにもならない。
帰り際にふと過ぎった言葉を伝えてみる。
「あたしもみんなに呼び出されちゃうね。」
密かにネックだった男友達の存在。
過去に別の女友達が浮気をした際に彼女を呼び出し、
寄ってたかって説教をした場に居たコトがある。
きっとあの立場になるんだねと自嘲気味に言うあたしに、
「仕方ないんじゃない?」
奴は短く言う。
仕方ないんだね。
自分では説明はしないんだね。
あたしが悪者の方が都合がいいんだね。
たくさんの言葉を飲み込んで家を出た。
数日後それは現実の物となる。
男友達が帰りに寄ってと伝えてきた。
来てしまったな。
思いながらあたしもあたしで小賢しく保険をかけた。
1番信頼出来そうな中立な立場の男友達1人にだけ相談した。
言われるコトは仕方がないけれど、
その場に居てくれるだけでも解ってる人が1人居るだけでも違うからと、
味方になってくださいとお願いした。
断られても仕方がなかったのに男友達は断らなかった。
その日の放課後。
ざわざわした心の中で決心して向かう男友達の家。
向かう前には彼にも話はしていて、
一緒に行こうかと心配されたけれど、
あたし自身の問題だからそれはダメだと断った。
およその時間を決めて戻らなかったら迎えに行くと言われる。
彼に感謝しながら。
最後の闘いは始まった。
話し合いという名の罵倒の場では、
聞くだけは聞いてやると言いながら聞いてももらえず、
なんで別れたんだとか、
あんないい人をとか、
とにかく罵倒出来ればなんでも良さげな言葉で責め立てられた。
男友達は3人。
奴本人は欠席。
仕切りたがりの幼馴染と今の彼氏と相談した男友達。
幼馴染はとにかくあたしのしたコトが気に入らない様子。
お前の性格なんざとうに知っている。
今の彼氏はとにかく何があったのかよく解らなかったらしい。
呼び出すからと言った幼馴染に渋々場所を提供。
相談した男友達は先述した通り狡いあたしにとっての保険で、
何かあった時のジャッジメントな存在。
不毛な罵倒は進み話し合いにもならない空気の中、
何がとうしてそんな話になったのか思い出せないが、
何かの逆鱗に触れられたあたしがカッとなって叫ぶ。
「あたしは妊娠までさせられたんだ!それでなんで付き合い続けられる!?」
前者の2人は知らないはず。
ここまで言うつもりはなかったし、
それより前には納得してもらうつもりだったのに。
ああ言ってしまったと思ったあたしの言葉を遮る驚愕の言葉。
「知ってるよ!」
は?
え・・・は!?
知ってる?なんで?知ってるのに!?
幼馴染はさらに続けてだからどうした的なコトを息巻いていたように思うが、
頭の中がショートしてしまったあたしはもう反論する気力をなくしてしまった。
知ってても尚イヤでも関係を続けないのがおかしいと言う。
そんなコトは女が我慢すればいいとも。
その場に居た今の彼氏は、
当時のコトを振り返るとこう教えてくれる。
「俺は知らなくて」
「なのにアイツは知ってて」
「なんで知ってるのかってそっちにも吃驚して」
完全に頭が真っ白になったのだそうだ。
ゴメンねって謝られるけど、
謝らせてゴメンね。
あとはもうただの不毛な言い争いが続く。
幼馴染が殴られる前に帰れと怒鳴り、
殴りたきゃ殴れよと怒鳴り返す。
今の彼氏がそこでようやく、
「殴らせるワケにはいかないから、頼むから帰って」
その言葉で立ち上がり帰ると言った。
この日の外はいつの間にやら土砂降りで、
傘も持っていなかったあたしはそのまま飛び出そうとして、
今の彼氏がせめてといって差し出す傘も要らないと突っ返し、
ずぶ濡れになりながら帰路に着く。
涙がたくさん出た。
土砂降りってありがたい。
涙なんか、目立たない。
途中で迎えに来た彼に出会し、
また[がんばったね]と言われ泣きじゃくりながら帰宅。
たくさん泣いてようやく終わった。
ようやく終えるコトが出来た。
これまでどれ程の涙を飲み込んだのだろう。
流せなかった分のようやく涙を流せた。
その後は卒業制作も終えて卒業。
その翌年のGWにまた親友達と集まり、
奴ともぎこちないながらも再会。
談笑は滞りなく進んでいたかのように思えたが、
唐突に奴が言う。
「俺、結婚する時はデキ婚だな」
何がどうしてそんな話になったかなんて解らない。
男3人ただ何気なく話したコトなのだろうが、
その言葉はあたしの神経を逆撫でるには充分過ぎた。
「お前、一発殴らせろ」
その場の全員があたしを止める。
奴以外解ってるからと羽交い締めにされる。
奴は何故あたしが怒ったのか解らなかったらしいとはその後談。
時はGW。
1年前のあの日を想う。
解散間際に伝えてみた。
「アレから、1年経ったよね」
何が?と問いかける奴の疑問顔。
そんなモノにもう期待なんてしない。
怒る価値ももうない。
あのコトはあたし1人で背負おう。
数人が解ってるからと言ってくれた。
その言葉を今は甘んじて帰ろう。
だからもう、奴を父親だなんて認めない。
あたし1人の、子供、です。
数年後。
あたしはこの子に名前をつけるコトが出来ました。
なんの供養も出来なかったけど、
名前がないなんて、
そんな悲しいコトあっていいはずがない。
未だ見ぬ月。
[未月 -みづき-]
そう名付けて毎年4月29日に心の中で手を合わせています。
産まれるコトの出来なかったあの子も、
気づけばもう成人を迎えていたはずの歳月が過ぎました。
時が過ぎるのは早いモノで、
あたしもあれから倍以上も生きております。
たくさんを経験して、
たくさんを失いながら、
傷だらけになりながら、
それでも無駄に命を繋いでおります。
子宮も全摘出して本当に産むコトが叶わなくなってしまったけれど、
あたしはそれを罰だとも思っているし、
未月の他には産むつもりもなかったので、
きっとそれが宿命なのだと解釈しております。
奴とはアレから数回会って今ではもう連絡も途絶えました。
途絶える少し前に聞いたのですが、
小説家になったらもう一度プロポーズすると宣っていたそうです。
一度でも投稿してからおととい来やがれ。
小説家が奴の夢でした。
でも一度も投稿したと聞いたコトがありません。
デザインの学校時にも思いましたし、
自分がプロとしてイラストレーターの道に進んで本当に思う。
投稿しないと何にも始まらないよ。
自分は投稿したらデビュー出来ちゃうからとか、
とても厨二臭いコトを言う人でした。
そんな自信が何処から来るのかとてもツッコミどころ満載です。
今もし会わなきゃいけないのなら是非伝えたい。
[お前が父親だなんて絶対に認めない]
たくさんの憎しみとたくさんの後悔を込めて。