海のピ【毎週ショートショートnote】
「もう帰ろうよ。」香織は、恋人の俊哉に何度も言っていた。
「海に行きたいって言ったのは、お前だぜ。」
「そうだけど、、、」
「ほら、海の音、海の風。気持ちいいじゃない。」
「でも、今日は特別な日だから。なんだか海がこわいわ。」
「気にするなよ。あんなの言い伝えさ。」
そう笑っていた俊哉の顔がひきつった。
まわりをたくさんの人たちに囲まれていたのだ。
海のにおいがきつい。この人らのせいか。
「こわいわ。」香織はもう泣き出していた。
その人たちは、無言で囲んでいる。
言い伝えを思い出した。
「海にごみは捨てません。海にわりばしは捨てません。海にプラスチックは捨てません。海に放射能は、・・・」
俊哉は、思いつく限り海に捨ててはいけないものを考えて、言った。
いつの間にかその人たちはいなくなっていた。
今日は、海の日。いつからだろう、「海のぴ」と呼ばれるようになったのは。「海のぴ」には、海のピープルが現れて、海を汚した者を裁くという。
海のピ。
(終わり)
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