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市内RPG ⑨スライム
戦士のヤスはバトルステッキを装備している。
魔法使いのヒラはアツッの魔法を身に付けている。
勇者のぼくはヒノキボー。勇者のはずなのに。何か頼りない。まあ、とりあえず、ケータイに登録して装備した。
ヤスが言った。
「装備したら、戦いたくなるな」
「スライムくらいなら、勝てるかも」
ヒラもやる気だ。
子郡駅前噴水広場にそいつはいた。
小犬くらいの大きさで、水色の半透明のボディは形を変えながら動いていた。目や口は見当たらない。ただ半透明のボディの奥に核と呼ばれるソフトボールくらいの球体が見える。噴水のコケを食べてる。
スライムだ。
ぼくらは、注意深く周りを見る。どうやら一匹みたいだ。少しずつ近づいてみる。
スライムはぼくらに気づいたようだ。こちらにもぞもぞと迫ってきた。素早い動きではない。しかし、敵意らしい圧を感じる。
ぼくらは身構えた。
「アツッ」
ヒラが左手を伸ばして叫んだ。手のひらに生まれた火の玉が、スライムに飛んでいく。スライムに当たって弾けた。
続けて、ぼくがヒノキボーで叩く。スライムの動きは明らかに鈍っている。
「オリャー」ヤスが声を上げて、バトルステッキでスライムの核を貫き、素早く引き抜いた。
スライムの核から緑の液体が流れ出した。そして、スライムは動かなくなった。
「やっつけた?」ヒラが言った。
「みたいだね」ぼくが言った。
「経験値は?」ヤシが尋ねた。
「倒しただけではレベルアップしないよ。戦闘と報告。まずはケータイで写メして、送信。」
すぐに3人のケータイがブルッと震えた。返信メールだ。
「グリーンスライム経験値5、報酬200円。レベルアップまであと20」
「おーし、あと10。スライム探すぞ。」
ヤスが叫んだ。戦士のレベルアップはあと10らしい。
「ちょっと待って。力が入らない。」
ヒラが言った。初めての魔法は思ったより力を消耗するらしい。
「休んでスライムを探そう。レベルアップを試したいね。」二人もうなづいた。