市内RPG 14蛙とコンビニ
ピンクの帽子を被ったおじさんランナーは足を止めない。
ぼくら、つまり、勇者と戦士、魔法使い、僧侶の4人は何とかおじさんに追いついた。
「おじさん、おじさん、止まってよ」
ぼくらは走りながら話しかけた。おじさんは止まらない。ただ何かつぶやいている。小さい声だ。
ぼくらは伴走しながら耳を澄ました。
「魔王は蛙神社。魔王は蛙神社。魔王は、、、」
蛙神社。
蛙がたくさんいる神社。ここからそう遠くはない。小高い丘の上にあり、敷地の真ん中には小さな池がある。たくさんの蛙の置物もある。
神社にはたくさんの風鈴が飾られていて、涼しげな音色を奏でている。
チリーン、チリーン。
その音に蛙の鳴き声が合いの手を入れる。
チリーン、チリーン。ゲコゲコ。チリーン、チリーン。ゲコゲコ。
竹林に囲まれた池に蛙が住んでいるのだろう。昼間は風鈴の音が聞こえるが、日が暮れかけると、次第に蛙の鳴き声が強くなり、夜には大合唱となる。正しい名前があるのだが、みんな蛙神社と呼んでいる。
「魔王の手がかりなんて初めてだよ」
魔法使いのヒラが興奮して言った。
「よーし、やっつけてやろうぜ」
戦士ヤスも息巻く。
「ちょっと、ちょっと、簡単にはいかないわよ」
僧侶カナは慎重だ。
「大丈夫。ぼくらも強くなった」
勇者としてみんなをリードしなければ。
ピンクのおじさんはつぶやきながら遠ざかっていった。
しかし、ぼくは見た。おじさんが、ジョギングコースの曲がり道で、右手を高く挙げて、拳を握り、親指を立てたのを。
グッドラック。
そして、おじさんは消えた。
「さあ、行こう。蛙神社へ」
しかし、子郡運動公園からは歩いて、小一時間はかかる。
「暑い。暑い」
「水ーーー」
「ジュースーーー」
「アイスクリームーーー」
途中のコンビニ、エイトイレブンで少しだけ涼む。
「貯まったお金でアイス食おうぜ」
戦士ヤスが言った。みんなも賛成だった。暑さには敵わない。水分補給しないと、干からびてしまう。
支払いアプリpaipaiでアイスクリームを4つ買った。
魔物討伐の報酬はここに貯まっている。
「夏のアイスはサイコー」
「あ、懐かしい」ヒラがつぶやいた。
「どーした?ホント懐かしいなー」ヤスも言った。
「あー、コレ、う○こ花火ーーー」
コンビニの季節ものコーナーに花火が置いてある。
「これ、買おうぜ」ヤスが言った。
「もーやめてよ。もったいないじゃない」
カナはまゆをひそめた。
「あとで返すから。お願い」
ヤスに押し切られた。
う○こ花火(5個入り)購入。
ヤスは上機嫌。
「コレ、動きが気持ち悪いんだよな。うにうに、クネクネして。カナは見たことない?」
「ないわよ。見たくもない」
ぼくらはコンビニを出て、蛙神社を目指した。
何が待ち受けるのか。
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