復習Tシャツ【毎週ショートショートnote】
やばい、この夏の試験を乗り越えなくては。留年が決まってしまう。
追い詰められたおれは、カンニングを実行することにした。
少し前にチャリティ番組で、不思議なアートが紹介されていたのを思い出す。写真をたくさん並べて、一つの絵をつくるというものだった。なるほど、その手法を使えば、書かれた文字も絵のように見えるはずだ。
試験官の目をごまかすことができるだろう。
おれは必死になってカンニングの道具を何にするか考え抜いた。そして、思いついたのが、Tシャツだ。
Tシャツに、文字を書いていく。細かい文字でびっしりと。ときどき色を変える。離れて見れば、それはTシャツの柄にしか見えないはずだ。
できた! 試験の前日にできた! これで大丈夫だ。
さっそく、そのTシャツを着て、試験に臨んだ。
・・・・。
背中の文字が見えない。
試験のあと、何人かの友人が「助かったぜ、ありがと。」と言ってきた。
全員、おれの席の後ろのやつらだ。