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市内RPG 20まおた?さばひら?
ぼくらレベル9の勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーは、何とかけた巨大ピンクアブラゼミをやっつけた。
動かなくなったアブラゼミは、次第に小さくなっていった。
ぼくは、そのアブラゼミをつまみ上げて、手のひらに乗せた。
「まおたをさばひらをかぱんにいけ」
アブラゼミは小さな声で鳴いた。
「まおたをさばひらをかぱんにいけ?」
「デカくなる⁉︎」
さっきは、この鳴き声を出すたびに巨大になっていったのだ。戦士ヤスは不安そうな顔をした。
しかし、今度は変化はない。弱々しく鳴いただけである。
「まおたをさばひらをかぱんにいけ」
僧侶カナが繰り返した。
ピンクのアブラゼミは、カナが繰り返したことを確かめたようだった。そして、ふらふらと飛んで、横熊山遺跡の高い松の木にとまった。
「もう悪さするなよ」戦士ヤスが言った。
「まおたをさばひらをかぱんにいけ」
カナは、またつぶやいた。
何の呪文だ?
まおたって誰?
さばひらって何?
かぱんってどこ?
みんな首をひねっている。
「まおたをさばひらをかぱんにいけ」
「まおたをサバヒラをかパンにいけ」
パンに行け?
何パン?
「あ、ひらおかパン?」魔法使いヒラが言った。
「小保駅そばの?専門学校の?」カナも言った。
「たしかに平岡パンだ」ヤスもピンと来たようだ。
だったら
「まおたをさばひらをかぱんにいけ」
「まおたをさば平岡パンに行け?」
「魔をたおさば平岡パンに行け?」
「魔王倒さば平岡パンに行けだ!」
ぼくらは繰り返し叫んだ。
次の手掛かりは平岡パンにある!
謎は解けたが、今日はもうへとへとだ。何せ巨大アブラゼミを倒したから。
「カナ、回復魔法をお願いします」
戦士ヤスが言った。
戦士は呪文が使えない。
「回復したい人?」
勇者のぼくと魔法使いヒラもゆっくり手を挙げた。
「お願いします」
「ナムミナー」
カナが回復の呪文を唱えると、緑の淡い光がぼくらを包んだ。
力が湧いてくる。
「ありがと、カナ」
やっぱり僧侶がいると、いいな。
さて、小保駅の平岡パンに出発だ。
「平岡パンは明日ね。私、これからピアノだから」
突然、カナが言った。
「新しい呪文で帰ろうっと。トベルー」
カナは青い光になって、南の方に消えてしまった。
レベル9で覚えた僧侶の空飛ぶ呪文。
これで、ちょいちょい帰られると困るなぁ。
ぼくらは歩いて、家に帰るしかない。
(続く)
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