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aya1358_
1億円の低カロリー【短編】
誰か来たようだ。警察か?
「こいつは、指名手配中の銀行強盗だな。気を失ってるぞ。病院で手当てして、すぐに刑務所だな。それにしても、運がないやつだ。潜伏先のホテルのエレベーターに1億円と一緒に、独りで閉じ込められるなんて。あの大地震だから仕方もないか。それにしても、助けられるまでに3週間もかかって、こいつも苦しかっただろうな。金はあっても、食う物がないとは、、、。」
朦朧とした意識の中で、おれは、閉じ込められた時間を思い出していた。閉じ込められて3日目、空腹に耐えかねたおれは、アタッシュケースにある1億円に気づいた。紙幣は草でできている。なら、野菜と同じだ。空腹の思考回路はとんでもないことを思いつかせる。
1億円を食べて、生き延びるのだ。
1億円はうまくはなかった。
しかし、1億円食べても、おれはどんどん痩せていった。体力は失われていった。
紙幣は、きっとカロリーが低いのだろう。ダイエットにはぴったりだ。高くつくけど。