しゃべるピアノ【短編】
しゃべる携帯電話、しゃべる自動販売機、しゃべるカーナビ、、、、もう何がしゃべっても不思議ではない。
最近、駅前に「しゃべるピアノ」が設置されたらしい。
「おいおい、そこのねーちゃん、弾いて行かない?いい音出して、感動させるよ。まあ、あんたの腕次第だけどね。」
「何だよ。見てるだけかよ。貧乏人か?普通、いい音色を聞かせてもらったら、千円や二千円は置いていくもんだろ。」
「お兄さんはプロかい?え、ユーチューバーだって。再生回数も伸びるはずだ。これだけ人を集めるなんて、すごいねー。全く。」
「触る前に手は洗ってくれよ。ああ、赤ちゃんはいいんだよ。だって、よだれを垂らすところがかわいいんじゃないか。いいって、気にすんな。将来ピアニストになって帰って来てくれれば、最高だよ。」
「しゃべりすぎたな。のどが渇いた。」
ピアノのふたがゆっくりと開いて、ひげ面でやせた男がのっそり出てきた。
しゃべるピアノの不思議ではない話。