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終わらない1on1
みんなのフォトギャラリーから生まれた物語。
「5点取った方の勝ちな」
タクヤは言った。
「負けた方はジュース」
オレも言った。
真夏の1on1。
中学校のバスケットボールコート。
大学の初めての夏休み、地元に帰って来たオレは、いつもタクヤと一緒だった。
バイト代は、実家への切符代に消えていた。タクヤも同じだった。
甲子園も見飽きたし、体力の有り余ってるオレたちは、近くの公園でキャッチボールをしたり、卒業した中学校のバスケットボールコートでバスケットボールをしたりした。
剣道部だったオレたちは、野球もバスケもそれほどうまくない。
ただ身体を動かしたいだけなのだ。
タクヤがドリブルで近づいてきた。
タクヤのドリブルを、オレは正面からガードする。
タクヤは、オレから一定の距離を保って、ドリブルをしている。
タクヤが、オレの右をすり抜けようとする。
オレは、ステップを踏んで、右に回り込む。
タクヤは、それを誘っていたのだ。
すぐに反転し、左を抜きにかかる。
抜かれた!
次の瞬間、タクヤは、シュート態勢をとっていた。
1、2、とステップを踏んで、レイアップシュートだ。
抜かれかけたが、まだ間に合う。
オレは、タクヤとゴールの間に割り込む。
タクヤの伸ばした右手にあるバスケットボールを、はたき落とした。
ボールがてんてんと転がった。
オレは慌てて、それを拾った。
今度は、オレの攻撃だ。
ゆっくりドリブルをして、近づく。
タクヤが左手を上げて、右手でガードする。
あら!? あっと言う間に取られた。
タクヤは、ドリブルをしてゴールに迫る。
また、レイアップのシュート。
追いついた、はたいた、ボールは転がる。
オレはドリブルがへたくそで、タクヤはシュートがへたくそだった。
終わらない1on1。
夏の午後、蝉はオレたちを励ますように鳴いている。
汗がしたたたり落ちた。
オレたちは、のどを潤した。
自分でジュースを買って。
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