【年齢のうた】マキタスポーツ●尾崎豊へのアンサーソング「59の夜」
45年ぶりに粉ふき芋を作ってみた青木です。意外と家族に好評。
しかし当時は家に電子レンジなどなかったし、塩コショウというものも知らなかった。時代は変わるのう。そりゃそうか。
東京は都知事選が近づいてます。僕はもう期日前投票の開始日に投票してきました。
しかし期日前投票って、選挙本番の日における準備や運営より、よっぽどお金や手間がかかりそうですね。期日前が活発になったのって、わりと最近な気がします。つまり昔はもっと投票しづらい環境だったなと。投票の機会が広がるのは、いいことだと思います。
そういえば今でも(都知事選がというわけではなく)選挙当日でも、投票の終了時間を切り上げちゃう自治体があったりしますよね。どういうこっちゃ! そうしたい気持ちがわからんこともないですが、それにしてもね~。ですよ。
ところで先日、『岸辺のアルバム』を観ました。1977年に放送された有名なテレビドラマですが、僕は初めて観たもので、あれこれ思うことが多かったです。
自分が観たのは、CS放送の録画分でした。
こういう日常のダークサイドを描いた作品は、70年代当時のホームドラマではエポックだったんでしょうね。で、そうしたストーリーや表現は、90年代になると、ドラマに限らず、かなり一般的になったのだなと考えます。
『岸辺のアルバム』は、ジャニス・イアンによる主題歌が明るめなぶん、物語のせつなさが心に染みました。
この歌は、2011年の彼女の東京公演で聴きましたね。「恋は盲目」も唄ってくれました。素敵な夜でした。
『岸辺のアルバム』は歴史に残るドラマだけに、ネット上を検索しただけで、かなりたくさんの意見が積み重なって残っています。近年多いのは、いかにも昭和な描写に現在ならコンプラ違反だのふてほど(『不適切にもほどがある!』)だの、という見方。このへんは自分はお腹いっぱいなので、ここでは書きません。
僕としては、記憶にない小田急沿線や渋谷の街並みにかなりのレトロ感を覚えました。なにぶん、当時は東京にいなかったので。
ほかに気がついたのは、繁(国広富之)の部屋のドアにベイ・シティ・ローラーズのポスターが貼られているのはみなさん指摘してますが、ある時にそこでかけていたロックはステッペンウルフの曲だったってこと。1977年撮影だと思うと、ちょっと古い気がしますね。まあ日本にパンクの波がやって来たのはもう少しあとですが。この頃は『マカロニほうれん荘』が大人気で……つまりキッスやエアロスミスなど、ハードロックが強い時代でした。
で、その本棚に同じチャンピオン連載だった『ドカベン』のコミックが並んでるのを見つけました(ちなみに高校を出て浪人生になっても同じだった模様)。時代~。
国広富之はサブちゃんを絶唱してましたね。いい演技でした。
それから中田喜子が魅力的でした。子供の頃の『連想ゲーム』の印象が強い方だったけど。
さて、今回はマキタスポーツの曲についてです。
オトネタで注目されたマキタスポーツ
マキタスポーツは一時期ものすごく注目された存在である。2010年代の前半は、僕も彼の曲をいくつか聴いたり、「オトネタ」などの動画を観たり、著書を読んだりした。
これは2005年のライヴ。チェッカーズ。
これはアルバムから。
J-POPの楽曲をネタとして分析/解析して、それを自分の表現にしてしまうというスタンスの人である。
本人も著書で言及しているが、これはひとつの批評としてのあり方なのだと思う。僕も彼の話を聞き、作品を聴いて、感心することも多かった。
定年間近の男の絶叫!「59の夜」
そんなマキタスポーツに「59の夜」という歌がある。
タイトルからわかる通り、この歌の前段階としては、尾崎豊の「15の夜」がある。
つまり「59の夜」は、「15の夜」のアンサーソングなのである。具体的には、別の立場の人間からの気持ちを唄った曲になる。
ただ、この歌は、正式な音源として発表されていない。彼の作品として世に出ていないのである。
なので、JASRACにも登録されていない。
しかしライヴの場では演奏されているようである。
ちなみに歌詞はこんな感じだ。
この歳で教習所に通うなんて
恥ずかしいやら みっともないやら
だけど定年したら長年の夢 それはツーリング
とにかくもう長いワインディングロードを走りたい
そして子供たちはみんな巣立っていったし
働き詰めだった自分にご褒美
だけど買ったばかりのバイクを盗まれた
どこのどいつだ バカヤロー
退職金をつぎこんだあの宝物を
俺のバイクに女と2ケツして
星空なんか見つめて
自由になれたような気がしてんじゃねえぞ
それは自由じゃねえぞ 犯罪だぞ
俺の仕事 それは学校の教職員
今日が最後の仕事 定年の日
だけど夜のうちに窓ガラス割られてた
どこのどいつだバカヤロー
大体見当つくぞ
お前だろ 尾崎
59の夜
……という曲。お見事である。
尾崎の曲へのアンサーを、59歳という、もはや若くない、そう、定年間近の人間の心の内を反映させ、しかもところどころでツッコミを入れている。じつにうまい。
ちなみに自分が強く覚えている中で「15の夜」を意識した作品としては、ロマンポルシェ。のアルバムと同名曲があった。
こちらは2010年のリリースなので、マキタスポーツよりちょっとだけ早い。
マキタスポーツは1970年1月生まれの現在54歳。
かたやロマンポルシェ。の掟ポルシェは1968年5月生まれの現在56歳(掟さん! ご無沙汰してます…!)。
どちらも尾崎にツッコミを入れたかったのだろう。その気持ちも理解できる。
それにしても、「59の夜」……当【年齢のうた】では、歌の中で書かれた年齢を取り上げてきているわけだが。どうしても若い世代の年齢ソングが多めの中で、堂々と59歳の心情を描いたという意味では、非常に画期的である。マキタスポーツ自身がこれを書いたのは、おそらく40代だ。
公の場で発表されてからもう10年以上経過しているだけに、これに何かと事情があるのはわかる。しかしいつの日か、この曲が公式な作品として発表される日が来ることを期待している。