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【年齢のうた】ゆず●衝撃だった!彼らの「もうすぐ30才」

バタバタバタっ!
と、してます。このところは。

以下は、僕と直接は関係ないところの話ですけど。
仕事付き合いの相手から「バタバタしていたせいで、連絡できなくてすみません」と謝られて、その言葉に「バタバタしてるからって業務連絡もちゃんとしてくれないなんて悲しい!」と嘆いてる人がいたのです(知り合いのカメラマンだったような記憶)。ただねえ、まあ恋人とか親友ならともかく、仕事の間柄ならちょっとは大目に見てあげてくださいね、と思いました。きっと相当なバタバタでしょうから。
そんなことを思い出したそろそろ3月。

にしても僕、来週ひさしぶりに東京付近から離れるのですが、何事も起こらないよう念ずるばかりですわ。穏便に穏便に。安全に。平に~平に~。

昨夜はOPN(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)のライヴを観ました。9年ぶりに観覧。いやいや、とんでもなかったです。なさすぎ。

ライヴというより、体験。ダニエルが鳴らす音がすさまじい上に、映像とライティングも圧倒的で、まるでインスタレーションのような空間でした。にしては爆音もいいところだけど。
OPNのこのツアーで映像面(と人形使い)を担当するFREEKA TETの名は覚えといて損がないはず。

ではでは、今回はゆずの曲についてです。しかしOPNの話のあとだと、アーティスト的にだいぶ跳躍するな。

「夏色」を唄ってたゆずが30才…だと!?


ゆずに「もうすぐ30才」という曲がある。北川悠仁が書いた作品で、内容はもう、そのまんま。30才になる男子の心模様をストレートに唄った歌だ。北川悠仁の作詞作曲である。

僕は今までにゆずの仕事はしたことがないが(たぶん)、収録アルバム『リボン』のプロモーション盤は自宅に送られてきていて、それを手にした時にこの曲の存在を知った。アルバムは2006年1月の発売だったので、おそらく2005年の暮れ頃のことだ(当時はそうして宣伝用のCDがどんどん届いたもので、それが今はリリース情報がメールおよび関係者向けのストリーミングのURLが届くことが主流に変わっている)。
その時に聴いて、真っ先に思ったのは「そうか、あのゆずももう30才になってしまうのか~」という妙な感慨だった。特段ゆずを熱心に聴いていたわけでもないのに。

おそらく、当時この曲を聴いた彼らのファンをはじめ、多くのリスナーも、さっきの僕と似たような感想を持ったのではないかと思う。
「ゆずが30才? ほんとに?」みたいな。

そして自分はその次に、「ゆず! うまいところを突いたもんだな」とまで思った記憶がある。

言うまでもなく、ゆずはたくさんの名曲を作り、唄ってきた人たちだ。


しかし、それでもデビュー当時のインパクトが強烈だったためか、今でもなお最初のシングル「夏色」のことがしょっちゅう取り上げられる。


「夏色」のリリース、つまりふたりがデビューしたのは1998年の6月。当時の北川も、もうひとりの岩沢厚治も、21才だった。それが『リズム』のリリース時は、どちらも29才である。

デビューから7年半が経過しても、その間にいくつものいい曲をヒットさせていても、どうも多くの人の心の中には「夏色」のゆずの残像が……若々しさを炸裂させるふたりのイメージが、強くあったと思われる。今でも彼らの特集が歌番組などで組まれる際に、あの曲が外されることは、まずない。そう言い切ってしまって構わないだろう。

そんなゆずだけに、気がつけば29才という年齢になっていて、そこでふっと「僕も大人の歳になってしまったよ」と告げるような曲をアルバムの1曲目として発表した。
そりゃあ、驚くだろう。みんな、衝撃を受けるに決まってる。
なにせこの歌詞では、タイトルそのままの「もうすぐ30才」という言葉の直前に、僕も、と付けて唄われる。僕「も」。この言い方には「あれだけ若々しかった僕も」「みんな、まだまだ青くさいと思っていたであろうこの僕も」という気持ちがのぞく。いや、のぞいてるように、自分は勝手に感じた。さっきの「うまいところを突いたな」という感想はそうした部分から生じている(申し訳ない)。僕(=北川)自身ビックリしちゃうんだけど、きっとみんなもビックリするでしょ?みたいな。
いや。これは、うがちすぎだったかもしれない。重ね重ね、申し訳ない。
「僕だって、普通の人たちと同じように、もう30才になってしまうのさ」といった程度のニュアンスだったのかもしれない。

肝心の歌の内容は、まさに30才が近づく男の姿そのものだ。
歌詞に出てくるのは……コンビニの可愛い店員、昔の彼女、仕事から帰っての缶ビール。
目に入るのは、ナイターを観てきた子供たち(伊勢佐木町で路上ライヴをやっていた彼らだけに、やはりハマスタだと想像すべきなのか)、家庭を築いていく友達。
飲み会帰りのタクシー、ラジオからは仲間と唄ったあの歌……。

いやぁ、大人。おじさん予備軍、って感じだ。
もっとも29才ぐらいなら、そこまででもないが。ただ、その域に、充分に接近している年頃ではある。

この曲を聴き返したおかげで、30才になる頃の自分はどうだったっけな?とまた思い返してしまった。
その頃の自分は今のように音楽について書く仕事をすでにしていたが、それまでに普通のサラリーマンをしていた時期もあるだけに、さっきの歌詞にあったような気持ちはなんとなくわかる。僕はもっと早い段階で退職したが。
というか、思えば、これを書いた北川自身、一般のサラリーマンや勤め人でもない。ひとりのミュージシャンであり、アーティストだ。ただ、歌の場面ごとの描写は、きっとその年頃の人たちに響くものになっているはずだ。それも背伸びせず、リアルで、ちょうどいい湯加減の生々しさもある。本当に卓越した描写だと思う。
これまでにこの歌を聴いて、共感する、理解できる、あるいは身につまされるという人は、たくさんいたに違いない。

この2000年代(ゼロ年代)の半ば当時、アラサーという言葉はまだ普及していなかったはずだ。ただ、30才という年齢は、好むとか好まないとか関係なしに、意識しがち、意識させられがちである。その前段階には「四捨五入したら30」という言い方があったりもする(ということは34才までならまだ何かとOKなのか?)。
そして世間には「30ならいい加減に大人になっていないと」というような共通認識がどことなくあるように思われ、そうしたところが30才という年齢をモチーフにした曲がたくさん生み出される理由でもあると思う。
当【年齢のうた】では、この30才にまつわる作品のことをいくつか書いてきた。

ゆずが、さらにうまいなと(←たびたび申し訳ない)思ってしまうのは、「もうすぐ30才」のアレンジがカントリーロック的なものになっていることだ。このへんは編曲者である寺岡呼人のセンスもあるのだろうか。印象的なまっすぐなコーラスのリフレイン、きらめくスライドギターの響き。ピアノやバンジョーの音も滑らかで、いかにも大人のロック・ファンが好むサウンドになっている。若々しすぎず、かと言って渋すぎず、いい塩梅なのだ。
この曲を、それこそ「夏色」みたいな、爽やかなアコースティックサウンドでやる手もあっただろう。それをややアダルトめのロックで鳴らしている。絶妙である。

なお、いろいろ調べたところ、コンピレーションアルバム『ゆずのね 1997-2007』の初回限定盤に封入されたライナーノーツで、北川が「もうすぐ30才ってことを書きすぎて、実際に30才を迎えたら案外大したことなかった」と述べているとの情報を得た。曲でここまで唄っておきながら、現実にはそういう結果だったとは……。味わい深いコメントだと思う。
たしかに、実際のところはそんなもんだろう。30才になったからといって、急に何かが変わるわけではない。
ただ、変化は着実に押し寄せる。じわじわと。少しずつ。きっちりと。

その後の「もうすぐ40才」、そして今は?


さて、ゆずの「もうすぐ30才」について驚いたのも、もう18年も前のこと。つまり彼らはそれから30代を迎え、今ではその次の40才もとっくに越えている。

以下は2015年、彼らの横浜スタジアム(やはり)公演のライヴのレポート記事。この中に、非常に興味深い記述がある。
ふたりはこの舞台で「もうすぐ30才」を唄っているのだ。

ライブ前に特設サイトで募集していた風変わりなリクエストの結果も発表。応募総数2万8371件の中から、『コンビニで店員さんに「温めますか」と聞かれ、レンジでお弁当が温まるのを待っている間に聴きたい一曲』として選ばれた「もうすぐ30才」、『街中で「久しぶり!」と声をかけられたけど、誰だかまったく思い出せないときに聴きたい一曲』として選ばれた「連呼」の2曲を披露した。岩沢のバンジョーの演奏で歌った「もうすぐ30才」の最後の歌詞を実年齢の「もうすぐ40才!」に替え、ユーモアたっぷりに締めくくった。

もうすぐ40才!
ちなみにこのコンサートの時点では、北川も岩沢も38才だった。

そして今、2024年2月の段階では、ふたりは47才。なるほど……人は歳をとるものなのである。当たり前のことだが。
ただ、「もうすぐ50才」と唄うには、まだちょっと早いか。

ゆくゆく彼らには、ぜひ「もうすぐ50才」を唄ってほしいところだ。ただ、厳密に言えば、歌詞はオリジナルの「もうすぐ30才」のバージョンのままだといろいろ違和がありそうなので、変更すべきところもあるだろう(それは「40才」の段階ですでに、か?)。ということは、50才、さらに60才が近づいた頃には、そうした要変更箇所はよけいに増えているはず……。
このへんの想像は、聴き手というか、みなさんおひとりずつの心に委ねたい。

ところで今回ひとつ驚いたのは、「もうすぐ30才」で検索をしたところ、YouTubeやニコ生、それにTilkTokなどでも、この曲をカバーしたり「歌ってみた」で投稿している人がとてもたくさんいることだった。とくにフォーク的な弾き語りの界隈でのゆずは完全にスタンダードになっており、もはや神、レジェンドのような存在だと言えるくらいだ。
ということは、新しい世代の子たちは今初めて「もうすぐ30才」を聴いて、いつか未来に訪れる自分自身のことを思っているのだろうか。あるいは気が付けばその該当年齢に達した人ならば、よけいに自分に当てはめて考えてみたりしているのだろう。
それもまた、時代を超えて親しまれる音楽の楽しさ、面白さであり、素晴らしさであると思う。


カミさんの誕生日祝いで
アフタヌーンティーを。
おめでとうおめでとう♪
いちご祭りでした~

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青木 優
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