ただ繰り返される毎日を
午前10時ごろ、狭い部屋に敷かれた一枚の布団の中で目が覚める。
目は覚めたけれど、なんだか布団からはまだ出たくない。出られない。
布団の中でSNSをチェックする。
世の中には色々な人がいて、みんなそれぞれの毎日を生きている。
午後1時。
そろそろ仕事に行く準備をしないといけないのに、どうにも腰が重い。
シャワーを浴びてギリギリ間に合う時間に寮を出る。
午後1時30分。勤務先のホテルに到着。
ロッカーの扉を開いて、いつもの白い制服を着る。
こうして今日もまた、一日が始まる。
出勤確認のあいさつをして仕事に入る。
食器やグラスを回収して、洗って、拭いて、片付けて、をただ繰り返す。
重い荷物を運んだり、ゴミ捨てをしたり、面倒で大変な仕事のほとんどは僕の仕事だ。派遣社員という身分だからしょうがない。
ああ、今日もあるひとりの社員が最近入ったばかりの新人に理不尽に怒鳴ってる。
また別の社員が、どう考えても効率の悪い指示を部下に出してる。
みんなそれが効率の悪いことだって気づいているのに、何も言わない。
相手が会社の上司だから?下手なこと言って目をつけられると面倒だから?
理由は分からないけど、もはや興味が無い。どうでもいい。
16時からは1時間の昼休憩。
職場の中はなんだか息がつまる。外の空気が吸いたくて逃げるように外の芝生に腰を下ろす。
1時間の休憩なんてあっという間に終わってしまって、17時からはディナータイム。
といってもやることは昼間と何も変わらない。
ただ、同じことを繰り返すだけ。
改めて思う、この職場には尊敬できる大人がいない。
目がキラキラしている大人がいない。みんな何かに疲れてしまっている様に見える。
去年僕が出会った大人たちは、みんな最高にかっこよかった。
目がキラキラしていた。将来は絶対にこんな大人になりたい。
本気でそう思えるような人ばかりだった。
今、僕の周りにいる大人みたいにはなりたくない。
23時。仕事が終わる。まだ若干仕事が残っていても、23時に退勤。
残業もなければ、早あがりも無い。いつも決まって23時退勤。
退勤したら早足でロッカーに戻って、急いで着替えてホテルをあとにする。
一秒でも早くこの場所から抜け出したい。
勤務先のホテルから寮まで、街頭の無い真っ暗な海沿いの道を15分ぐらいかけて歩く。携帯のライトをつけて歩かないと、自分が今どこを歩いているのかも分からない。
好きな音楽を聴きながら無心で歩く寮までの15分間はあっという間だ。
寮に戻って、お菓子を食べながらYoutubeを見る。
たまに誰かと電話して、お互いの近況報告をする。
必死に今の現実から目を逸らす。
それからシャワーを浴びて、布団に入る。
体は疲れているのに、なかなか眠れない。
深夜3時ごろになってようやくまぶたが重くなる。
そして午前10時ごろ、狭い部屋に敷かれた一枚の布団の中でまた目が覚める。
起きた瞬間に、今日もまた昨日と同じような一日が繰り返されることを悟って、苦しくなる。
夢を叶えるための資金を貯めにこの場所に来た。
頭では分かっていたつもりだったけど、お金を貯めるためだけに過ごす毎日は退屈で苦しい。
苦しくて息が詰まって、だんだん余裕が無くなってきて、少しづつ少しづつ心が死んでいく。
夢を叶えるために来たこの場所なのに、
ちっとも夢なんて見れやしない。
道の続きが暗くて見えないことが苦しいのではなくて、
道の続きもしばらく暗いままだと見えてしまっているのが苦しくて怖い。
自分が休学して、変わらない退屈な毎日を過ごしてる間に
去年一緒に過ごした仲間たちはそれぞれの場所でまた挑戦をしている。
それは、就活だったり、学業であったり、他の団体の活動であったり。
人それぞれだけど、それぞれの場所でみんな挑戦してる。
そんなみんなと自分を比べてしまってまた落ち込む。
だけど、22年間生きてきて確信していることがある。
自分の身に起きる出来事には全てに意味がある。
どんなに苦しい体験も辛い記憶も絶対にいつかの糧になる。
そして、今とこれからを変えるためには自分で行動していくしかない。
希望の光は見つけるものでも誰かに見せてもらうものでもなくて、自分自身で作りだすもの。
だから、こんな場所からは一秒でも早く抜け出そう。
叶えたい夢が夢のままで終わらぬ様に。
僕が帰るべき場所は誰もいない寮の部屋じゃない。
「ただいま」と言ったら「おかえりなさい」と迎えてくれる人たちがいる場所へ。
ありがたいことに、「最近どう?」「元気?」と連絡をくれる友達が何人もいる。
電話で話がしたい、直接会って話がしたいと思う友達が何人もいる。
ほんとうにありがたくて幸せなことだ、一生大切にする。
はやく帰ろう。帰るべき場所に。
立ち止まってる時間なんて、無い。
というわけで、予定よりも早いけど、5月中に愛知に帰ります。
なんだかんだ元気でいます。ご飯も毎日おかわりしています。
暗めの文章になってしまったけど、そんなに心配しなくていいからね。大丈夫。
お互い色々あるけど、お互いがんばろう。信じています。
なにか良いことあるといいなあ
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