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Astar Tokenomics 2.0 & dApp Staking v3 Update

こんにちは、noteではお久しぶりです。

ついに昨日の夕方、AstarのdApp Staking v3がリリースされました🎉

v3の仕様については、公式記事をbaoさんが翻訳してくださっているため、そちらをご覧ください。

今回この記事では、v3に合わせてさらに更新されたTokenomics2.0について解説します。


1. おさらい

昨年の8月に、Tokenomics2.0の詳細が公開されました。(Forum上では大分早くから提案はされていた)

https://astar.network/blog/astar-tokenomics-2.0:-driving-long-term-success-and-39068

この後解説する変更点もあるため、ざっくりまとめます。

Infration Rate

全体的にインフレ率が低下するように変更されます。

  • Staking TVLに応じてTreasuryとStakerの報酬を分け合っていた分を、Stakerの報酬のみが変動するように変更。

    • Treasuryは固定に。

    • Staker分は動的になったことで、インフレ率も動的に。ASTR発行量に対して50%以上がStakeされるとインフレが最大化する。

  • Collator報酬を半分に。

  • Builder報酬を増加。

旧Tokenomics
Tokenomics 2.0

dApp Staking v3

詳しくは既出のリンクを参照してください。報酬がより公平に、広く配布されるようになりつつインフレを抑えるような仕組みになっています。

  • Tier制による報酬の段階的定量化。

  • LockとStakeの分離。

  • Stakeのリセットによるコミュニティの活性化(ガバナンスへの意識づけ)。

  • TierのSlotがあいている場合はその分の報酬はBurnされインフレ鈍化。

  • ASTRの価格によりSlotが増減し、報酬量が変動。

ガス代

  • NativeとEVMのガス代に大きな差があった為EVMでのガス代を引き上げ。同時に全体的にも引き上げ。ただしストレージコストは減少(NFTやコードのデプロイに影響)。

  • ガス代の8割をBurnへ。

2. 最新版Tokenomics 2.0

さて、ここからが本題です。

今月初めに、dApp Staking v3リリースに合わせて各種パラメーターに変更がありました。今回はここをまとめます。

新Inflation Rate

今までは初期発行(70億枚)に対して上限を10%(7億枚)としたインフレ率となっていました。つまり、自然とインフレ率は落ちていく構造です。
※実際は途中でCollator報酬が減ったので最大インフレは6.65億枚となっているがここでは割愛

このルールが変わり、排出枚数は1Cycleごとに再計算されて総供給に対して最大7%になるように調整されます。

Astarの場合の各単位
1Cycle = 3Period = 366Era
1Period = 1Voting Period + 1Build & Earn Period = 122Era
1Voting Period = 11Era
1Build & Earn Period = 111Era
1Era = 7200Block = 約1日
1Block = 12秒ターゲット(遅れる場合有)
※CycleとPeriodはガバナンス次第で長さが変わる可能性があります。

現在は1cycle=366Era、つまり約1年でInflationのASTR量が調整されます。

既出の通り、Stakerの報酬の動的部分やBuilderの空きSlotでのBurn分、ガス代のBurnなどがあるので実際は7%より低くなります。

仮にInflationが最大(Staking率50%以上、Burn無し)だとこんなイメージになります。

スタートのSupplyは現在のASTR発行量を入力

データを2カ月刻みで作ったので少しおかしいですが、1日刻みで作成すれば1年経ったタイミングで7%に戻るような逆ノコギリ波の形になります。

この変更により、Burn量が多く仮にインフレを上回れば毎年のインフレ量が減っていきデフレが加速します。以前の状態だと固定なので場合によってはインフレ率が上昇します。

もちろん逆も言えるため、Burn量が少ないと発行量がどんどん増えていくことになります。そのため、どれだけBurnできるかは以前よりかなり大事になってきます。

🔥Burn経路🔥
・Astar Substrateでのガス代の80%
・Astar zkEVMのETHガス代のうち、シーケンサーコストを抜いた収益分の一部
・zkEVMでの各種ツール使用など

Bonus Rewards

dApp Staking v3では、Voting期間中のStakeでは報酬が発生しません。その分の報酬はBonus Pool(旧Extra Rewards Pool)に貯められ、Voting期間中にStakeしてBuild&Earn(以下B&E)期間中もその量をStakeし続けたStakerに次のPeriodスタート時に配布されるという予定でした。

Bonusの発生条件に関しては変更ないものの、Bonus Poolの扱いが変わりました。Voting期間中のStakerとBuilderの報酬は発生せず、Bonus Poolにも貯まりません。つまりその分のインフレは減少します。

そして、Bonus Pool用のインフレアロケーションが追加されました。その結果、以下のように変動しています。

  1. dApps Rewards : 24.40% → 13.0%

  2. Staker Rewards(変動分): 42.40% → 40.0%

  3. Bonus Rewards(New): 0% → 13.8%

この変化を表とグラフにするとこのようになります(Inflationの変更も含む)。

緑が追加、赤が減少

Bonus Rewards分は以前より減りますが、1Cycleにつき33Era分の間インフレが78%無くなるため、結果的に全体のインフレも年率で1割弱低下します。

こんなイメージ
※他の条件は先ほどと一緒

実際はdApp Stakingのスロットが全て埋まるとは考えづらく、これより低いインフレ率になる可能性が高いです。

dApp Staking v3

諸々のパラメーターが公開されました。

以前のレポートから一部変更されています。


Era Reward Span Length
これは報酬の請求できる量が増えるということです。今までは1回のトランザクションで1Era分、これをバッチでまとめて52Eraとかでしたが、これが単純計算で一度に16倍請求できるようになるという話です。便利。

Reward Retention In Periods
v3からは報酬の保留期間が決まっています。Astarの場合は4Periodなので、約12カ月~16カ月です(1Period中のどのタイミングで報酬が発生したかで現実時間での長さに差が出る)。これを過ぎると報酬を受け取れなくなるので、最低限毎回の投票を忘れずに行いましょう。

v3ではStake時に自動で報酬が請求されるようになったので、個別Claimをしなくても問題ありません。

Max Unlocking Chunks
今まではStakingの解除は1度に5つまででしたが、8つまでに増加しました。

Unlocking Period
今まではStakingの解除に10Eraかかっていましたが、9Eraに減少しました。

ややこしいのですが、Voting期間中は全体を通して1Eraとしてカウントされています。つまり、本来11Era(79,200Block)だったものが1Era(79,200Block)となります。しかし、Unlockは9Eraではなく64,800Blockとしてカウントされるようで、Voting期間中でも通常通りUnlock可能です。

まるで呪文のようだ…!

Reward Distribution & Slot Portions
Stakerにはあまり関係ありませんが、各Tierのスロット数と報酬量がレポートの時から変動してます。 Tier4のdApps報酬量が大分薄くなりましたね。Tier4はスタートラインで、Tier3に上がれるように頑張りましょう、という立ち位置と考えられます。

  • Tier1:Slot数減、Reward総量減→1Slot毎の報酬増

  • Tier2:Slot数同、Reward総量増→1Slot毎の報酬増

  • Tier3:Slot数同、Reward総量増→1Slot毎の報酬増

  • Tier4:Slot数増、Reward総量減→1Slot毎の報酬減

Tier Slotの計算方法
Slotの計算方法が公開されました。ASTRの価格に合わせて上下します。

Tier Threshold
Tier 1~4 Threshold レポートの時は閾値の動的範囲がありませんでしたが明示されました。Slot数が増えるとTier1~3の閾値が低下します。

現在Astar Portal上では閾値の表示がありませんが、これはアップデートにより表示されるようになる予定とのことです。

Tierシミュレーション

ASTRの価格を$0.18とすると以下のように計算されます。

Slot数
1000 x 0.18 + 50 = 230

各Tierのスロット数とスロットごとの報酬
Slot Positions: スロットのうち割り当てられる割合
Slot: 割り当てられた数(小数点の処理は不明)
Rewards(%): dApps Rewardsから各Tierへの分配割合
Rewards(q/Era): Eraごとの各スロットへのASTR建て報酬量(現Cycle)
Rewards(q/Month): 上記のEra報酬で30日間のASTR建て報酬量
Rewards($/Month): 上記の30日間のドル建て報酬量

インフレシミュレーション(遊び)

お遊びで色々単純計算してみました。
※雑な計算なので真に受けないように!

現在のインフレ参考値(端数は切り捨ててざっくり計算)

  • 現在のTVLは供給に対して37.475%(Lock分)、これが全てStakeされたとしても、動的インフレ部分はMAXに対して75%となる。これだけでインフレ全体が10%減少して6.3%ととなる。

  • 現在のdApp Stakingのスロットは230だが、リスティングされているdAppsは65個であるため半分も埋まらない。どのdAppsがどのTierのスロットに入るかで計算は異なるが、今回は単純計算してBuilder報酬を230分割し、65dAppsが取得できるとする。その場合報酬全体に対して約28%が配布され、72%がBurnされる。これだけで、インフレ全体は9.3%減少して6.35%となる。

  • 合計すると、今の状態だとインフレ全体で19.3%減少し、5.65%となる。

  • ここから更にBurn分が引かれる。

まずは上記の試算で調整後(Burnは無し)。
4年で先ほどと約5%の差が出ます。

ここから直近の1か月のアクティビティからガス代Burnを入力。
(今回はAstar zkEVM分は未知数なので除外)

https://astar.subscan.io/tools/charts?type=fee

だいたいの中央値で1日当たり8500 x 80%をBurnされたとしてみます。

ほぼ変化なし

色々試して1日当たり240万ASTRがBurnされると拮抗することがわかりました。これには現在の約350倍のガス代を消費する必要があります。

厳しい!

つまり、あくまでこの"雑な試算"では240万あたりを超える量をBurnできればデフレ化すると考えられます。

消えちゃう!

重要なことなのでもう一度書きますが、あくまでお遊びの試算なのであまり真に受けないでください。

3. コラム:表面利回りと実質利回り

Astarとは少し離れますが、金利収入を考えるうえで「表面利回り」と「実質利回り」の理解は非常に重要です。計算方法はいろいろありますが、今回は暗号資産のStakingでの僕の考え方について書きます。

‼注意‼
・費用は無視
価格(枚数)ではなく価値を基準とした考え方
・そのため、円建てでの利益の考え方とは全く異なる
・あくまで僕の捉え方です

表面利回り

「APR何%」というのが表面利回りです。単純にStakingしたら何枚もらえるか、という考え方です。

1年でもらう量 / Staking量 = 年間表面利回り(APR)

例:100,000 / 1,000,000 = 10%(APR)

実質利回り

表面利回りとインフレーション率から導き出す利回りです。自身が受け取る利回りのほかに、原資産が増えて価値が希釈(低下)される分を考えて計算します。

(1+ 表面利回り) / (1+インフレ率) - 1 = 実質利回り(APR)

例:(表面利回り10%、インフレ率7%の場合)
(1+ 10%) / (1+7%) - 1 = 2.804%(APR)

法定通貨(円)で考えてみる

少し脱線しますが、身近な例で考えてみましょう。
例えば貯金の金利は0.003%とします。貯金はある意味円のStakingみたいなものですね。そして、インフレーションが1.7%とします。
※2023年12月の日銀CPI公表値の全国加重中央値から取得

(1+ 0.003%) / (1+1.7%) - 1 = -1.669%(APR)

恐ろしい数値が出ました。つまり、円建て(枚数)で見ていると若干とはいえ増えてるように見えていましたが、価値としては年率で減っていることが分かります。これが、「貯金は資産を減らす」「投資しろ」と一部の人が言う所以です。

Astarで考えてみる

さて、ではせっかくなのでAstarの実質利回りを計算してみましょう。

今回の変更により、Voting期間中のBonus Rewardsに浮いたStaking報酬を使うのではなく、専用のアロケーションが追加されました。そしてその間のStaking報酬は発行されなくなります。その結果、実際の表面利回りはStakingページに表示されている数値より低くなります。

Staking率は前(v2)と同じStaking率36%で試算してみましょう。
※細かい計算式は省く

  • 表面利回り(Staking):10.46% x 333/366 = 9.52%

  • 表面利回り(Bonus): 2.68%

  • 表面利回り(合計):12.20%

  • インフレ率:5.79%(Burn無しとする)

  • 実質利回り:6.06%

参考:v2の時の数値
表面利回り:10.4%
インフレ率:7.75%(Burn無しとする)
実質利回り:2.46%

参考を見ればわかりますが、表面利回りが上がりつつ、それ以上に実質利回りが大きく向上(+146%)したことが分かります。今回はBurn無しで試算しましたが、dAppsの数的にそれはあり得ないのでdApps Rewardsを半分で計算すると、実質利回りは6.49%(+164%)まで上昇します。大分変わりますね。

ちなみにこの数値は、今回の最新のパラメーター変更前よりも高い利率となります。これは、dApps RewardsがStakerへの報酬(Bonus Rewards)に移動したことと、インフレ量自体も低下したためです。

参考:変更前のv3のパラメーターで計算
表面利回り:12.14%
インフレ率:6.94%(Burn無しとする)
実質利回り:4.87%

ちなみに、表面利回りと実質利回りはStaking Rewardsというサイトを見るといろんなプロジェクトで確認することができます(計算方法が同じかは不明だが、結果は一致するので多分同じ)。

補足(X上)

4. まとめと蛇足

少々項目が多かったため混乱するかもしれませんが、ASTRホルダーであれば必ず知っておくべき部分なので概要だけでも理解するようにしましょう。特にdApp Staking周りは場合によっては報酬が発生しない、もしくは失う可能性があります。気を付けましょう。

Voting期間が来たらStakeするのをお忘れなく!
※Stakeすると自動的にClaimもされるようになったので、StakeさえすればOK

以下はAstarのDiscordでも書いたことですが、重要なのでここにも再掲します。

結構重要な概念として、dApp Stakingの報酬はStakerがただ何となくもらうものではないです。Astarにとってプラスになるプロジェクトを選択し、支援を決定するガバナンスに参加する対価としてもらっていると認識してください。つまり、労働への対価です。 これはPoSでStaking報酬がもらえるものと同じようなもので、あちらはインフラの維持への参加に対する報酬です。

これがweb3における「みんなが参加者」という要素の一端です。この認識をすることがものすごーく大事です。なじみがないと思いますが、頭の片隅にでも置いて頂けると嬉しいです。

それでは、レッツエンジョイAstar!

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