メンターの話#6 【エントロピー増大の法則】
高校生の方、もしくはそうだった方の多くは、文理選択を経験したことがあると思います。
僕は理系を選択し、それから大学も理系の学部に進学しました。僕は
理系だからこそ得られたものが多くあり、
理系だったせいで身に付かなかった知識や価値観があったと思っています。
それは逆の場合でも然りです。洋々は文系の受講生が多いので、僕が理系の様々な分野を通して得た知見を共有したいです。
この世界を一言で表現するのは、難解で、不可能です。一言で表そうとすると、物事の一側面を捉えるに止まるからです。
しかし、かなり幅広い範囲で通用しそうな法則みたいなものが、この世界には存在しています。
例えば、熱力学の第2法則「エントロピー増大の法則」がそうです。
これを端的に説明すると、
エネルギーは高い方から低い方へ移動する。しかし、その逆は起こらない。
ということになります。もう少し例を交えて話しましょう。
あなたが、お風呂を沸かしても放っておくと冷めてしまいますね。
これは、お風呂のお湯が周囲の空気よりも温度が高いために、空気にその熱が移動することで、お湯の熱エネルギーが小さくなり冷めてしまうのです。
これと似たようなものに、浸透圧というものがあります。
浸透圧とは、濃度の異なる液体間で、半透膜(水溶液中の物質が通れる穴が空いている膜)を通じて濃度の高い方から低い方へ水が移動する時の圧力を指します。
これはエネルギーではありませんが、「高い方から低い方へ」移動しています。
でも、これだけ聞くとエントロピー増大法則は一見、化学の世界でのみ通用する法則に思えますが、そんなことはありません。
では更に、この法則について詳しくお話ししましょう。
そもそも、エントロピー増大の法則は「エントロピー」が「増大する」法則です。よって、この法則を理解するためには、エントロピーについて知る必要があります。
いきなり答えになりますが、エントロピーとは「乱雑さ」「均一さ」のことです。
これも具体的に説明しましょう。
コップに水を入れて、そこに絵の具を一滴垂らすと、時間が経つごとに少し
ずつ絵の具の色が全体に広がり、最終的には薄い色水ができます。
絵の具の色の分子が、水の中全体に拡散したために、本来の色よりも薄く全体に色がついた水になるわけです。
すなわち、絵の具の色分子が水中に乱雑に配置されている、
もっと一般的な言葉で言えば、均一に分散しているということができます。
これがエントロピーです。
エントロピーが大きいということはそれだけ乱雑で均一で、小さいということは整理されていて、どこかに集中しているということなのです。
そして、もう一つエントロピーの法則の重要な視点があります。「整理」されている状態や「集中」している状態を保つにはエネルギーを必要とするということです。
絵の具に限らず、この現象は実に多くの場面で見られます。
部屋が散らかってしまうこともそうです。時間が経つといつのまにか部屋って散らかってしまいますよね?
これはエントロピーが増大の法則に乗っ取れば仕方のないことです。
そして、散らかったものを片付けるのって、ものすごくめんどくさいし、疲れますよね。
これはエネルギーを使うからです。
これが前述した、
『「整理」されている状態や「集中」している状態を保つにはエネルギーを必要とする』
ことの具体例です。
科学的な例で説明するなら、冒頭のお風呂の例がいいでしょう。
お風呂が温かいというのも、エネルギーが一部に集中している状態です。
これが「散らかって」均一になるためにお風呂のお湯が冷めてしまうということもできます。だから、このエネルギーが集中している状態を保つためには、お風呂を温め続ける、つまりエネルギーを使い続ける必要があります。
このように、エントロピー増大の法則は僕たちの日常の至るところで観察できます。この他にも、東京などの大都市に人口が一極集中していることや、浮気や不倫など実はエントロピー増大の法則で説明できるものがあるのではないか、と思うときもあります。
今回は、僕が理系で学んでいるからこそ得ることができた、ほんの一面を紹介しました。
今後もこの場を通して、小出しに発信していきたいと思います。
皆さんも、自分の興味分野や身の回りで
エントロピー増大の法則を感じてみてください。
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