見出し画像

「陽の差す方へ」


メッセージアプリの通知が届く。私はそのメッセージを心待ちにしていた。


「産まれたよ」


何度もらっても、うれしいメッセージだ。友人に新たに家族が増えた。

友人が出産する前に一度会うことが多く、産まれてくる彼彼女らはまだお腹の中でゆっくりとしていた。それを知っているのでなんだか不思議な気持ちになるのだ。本当に。あの時も確かにそこに居て一緒に過ごしていたけれど、今はもう母体を離れてひとりの人間として彼彼女らは産まれてきたのだ。

🎂

まだお腹の中にいる頃に、スープカレーを食べに友人とカフェへ行ってた時、こんな話をした。

「『あなたが産まれた頃は大変だったのよ〜!』って話せるようになりたいな」

そうだね、私もそう思う。

高校生の頃と変わらずよく笑う賢くておもしろい友人は肩肘をはらず楽しい子育てをしそうだなとふわりと想像できた。

🎂

私は子どもを産んでいないし、現時点でその予定もないけれど友人に子どもが産まれるたびに思うのだ。この子が「生きていける」と思えるような世の中であってほしい。
そして、その世の中をつくるのは紛れもなく先に生まれた人たちであり、私なんだ。微力ながら、でも確かになるようにつくってゆくからね。と、小さく決意を思い出す。



小春日和の少し手前、秋の陽が差していた。

 

#エッセイ #誕生日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?