「遺言書」を書くと見えてくること
すこし暖かかった先週の日曜日、ワークショップ「死について話そう」の第2回目に参加してきました。会場はふたたび高円寺の小杉湯となりさんです。前回のイベントの様子はこちら。
このnoteを見て、友人が2回目に参加してくれました。ありがとう!
イベントの目的
前回のイベントで学んだのは、「死について話す」ことは、「より良い人生について話す」とイコールだということ。
今回のイベントは、以下のような内容となっていました。
前回の続きとして、より良い人生について話すためのステップを踏んでいるとも言えるのではないでしょうか。そんな場づくりを、提供くださっています。
人生について話すためのコツを共有
まず、前回からの宿題について、話し合います。こんなお題でした。
「パートナーや両親と、これからの人生や相続について、会話をしてみてください。」
少人数だったので、それぞれの状況を直接聞くことができました。30代・40代限定イベントだから、みなさん会話の相手は親でした。できてた人もいれば、タイミングが合わなかった人も。
短い期間というのもあるし、機会をつくることすら難しい……ですよね。
物理的な距離、時間的制約のほかに、日ごろ話さない話題だからこそ、どう切り出していいか分からないのも難しさの要因だったようです。
それぞれ状況が異なるのに、そうそう、って共感できるのは、親子関係は誰にもあるからでしょうか。お互いの話からヒントを探るのも、対話型ワークショップの醍醐味です。
課題に向き合ったことで、みなさん確実に、なにか意識が変わっているようでした。「こうしようと思った」という次のアクションが見えていたり、あらたな課題が見つかっていたり。一歩でも前進しているのはすごいな、と思います。
わたしは……行政書士を目指しているからか、実母からの相談はかなり具体的です。逆に夫の実家の方が未知の領域で、共有いただいたコツやポイントを念頭に、手前の家族間でもコンセンサスをとることからかな、と思いました。
“遺言書”ってどんなもの?
たいていの3,40代は、遺言書を書いたことも、見たこともないでしょう。なので、まずはレクチャーでざっくりと「遺言書とは」から学び、そこで書いてみるまでを体験していきます。
実際には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言など、遺言書は定められた方式に従わなければ効力を持ちません。どの方式を想定するにしても必要な、下書きとなる考えや現状を書き出す作業となります。
大事な用語を解説いただいたら、書くべき項目が空欄になったいくつかのフォーマットから自分に当てはまるものを選び、記入していきます。
遺言書の内容は大きく「事実」と「意思」でできています。
事実は「財産目録」の形で、どのような資産(借金も含む)を所有しているのか、具体的にもれなく記す必要があります。これはしっかり調べて正確に書かなくてはならないため、自身の財産の棚卸しにもつながります。
意思は本文に記載するもので、誰に何をどのように相続させたいか、を記すことで表明できます。自分の意思を明確にできるかどうかがポイントです。
遺言書を書いてみる
わたしの場合、難所は「資産目録」でした。資産・財産がたくさんある……訳ではなくて、在り処が、超分散しているからです。分散投資なら聞こえがいいですが、いろいろ手を出しすぎて管理しきれてないのが正直なところ。
一般的に、土地や不動産は登記の仕組みがあるのですが、銀行の預貯金・定期預金、有価証券(証券口座)、その他「生命保険」「仮想通貨」「自動車」なども相続財産になると考えると、そう簡単ではありません。
自分のひどい資産管理状態を俯瞰することができたので、せめて分かりやすく整理しないと迷惑をかけるな、と反省しました。
遺言書の効果には、相続手続きが簡略化できるという側面もあるので、もしもこのままの状態で遺言書(あるいは目録に代わるもの)がなければ、資産を探し出すことに労力がかかる上、相続手続きが始められないなどの迷惑をかけてしまうのです。
さらに「法定相続分」や「遺留分」といった法定相続のルールなどもあわせてレクチャーがあり、遺言書に向き合ったおかげで、相続の流れへの理解も深まったのではないかと思います。
“相続税”について学ぼう
相続のフローを理解できたところで、相続にまつわる「相続税」の基本を、税理士の鈴木英示先生が、やさしくレクチャーしてくださいました。
区の税務に関する無料相談などを受けると、たいていが、相続税の相談なのだそうです。学校で習わなかったですしね。しかも細かいルールは改正を重ねているため、最新の情報はやはり専門家に聞くのが安心です。
とはいえ、知らなかったでは済まされないのが法律というもの。
自分の家で相続が発生するときは、相続税が発生するのか否か、発生するとしたらどのくらいか、払えるのか?節税はできないか、 などなど、想定できることはしておかなければなりません。
課題であった「家族とのこれからの人生についての対話」には、相続税を見据えた会話もぜひ織り交ぜたいところです。これも、ヒントであり、良いきっかけになるのでははないかと思います。
イベントの構成にうなる
振り返ると「家族との対話」「遺言書」「相続」がセットになっていた今回のイベント、素晴らしく腹落ちする流れじゃありませんか!
イベント趣旨がよくよく分かりました。
主催の&for us(アンドフォーアス)さんが提供するサービスは、この流れを手助けしてくれるものです。
わたしも個人的にはこれからの仕事に関わるため、遺言書や相続税について勉強はしているものの、実地で参加者の皆さんの(自分も含めての)声を聞けたのはとても有意義でした。
先週の「リビング・ウイル」も同様です。それぞれリアルな日常のなかで、前向きに「死」と向き合いつつ、いまを生きている感じが、すごく伝わってきたんですよね。
デジタルのサービスも、制度や仕組みを整えたとしても、その前に「人」ありきなんですよね。わたしの向かう先もそうです。プロの伝え方や進め方なども含め、知識だけでは務まらないことも肝に銘じたいと思いました。
貴重な機会をありがとうございました!