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『就社』と『就職』

みなさんは『就社』と『就職』って聞いたことありますかね?
いわゆる『会社の文化や特徴にメリットを感じて入社するのが就社』『就きたい職のために入社するのが就職』ってことで会社に入るための目的が『会社』と『職種/職業』のどちらに重きを置いているのかの違いになります。
※一般的にはどちらもまとめて『就職』って言っていることが多いですね。

『就社』の場合は、主に企業文化や事業内容に共感して入社する場合が多いですかね。経営理念に共感するとか、先鋭的な商品を生み出していること、自由な企業文化が良い、社会貢献活動をしているとかいろいろありますね。その他にも福利厚生の充実度、会社の安定性・ブランド力とかもあります。有名な企業だと『創業者のファンだから』とかもありそうです。
要するに、その会社ならではの特徴にメリットや共感を感じて「この会社に入社したい」と思える動機があればそれは『就社』と呼べそうです。
※「大手企業に就職したい」とかいうのも『就社』ですね。

会社を経営している側からすると『就社』を考えてくれる人が増えるのはうれしいことですね。自分たちが築き上げた会社に対して「この会社で働きたい」って共感してくれる人が増えるというのは経営者冥利に尽きることだと思います。経営者と社員が相思相愛の仲になるっていうのは素晴らしいことだと思いますし。

ただ、これを実現するのは難易度が相当高いことも事実ですね。いまの時代、他社との圧倒的な差別化をはかるのは困難ですし、さらにそれを知ってもらうための活動も時間とお金がかかります。でもこれからの時代は少しの差でも良いから自分たちのオリジナリティを出していくことが必要だと思うので、経営者は『就社』で選ばれる企業になるように目指していくということが大事だと思います。

『就社』視点で入社してきた人は長期的にその会社で働こうと思うでしょうから、会社側としても長期視点で育成プランなどを考えることができます。すぐに辞めそうな人よりも、今後も長期にわたって活躍してくれそうな人材に時間とお金をかけるのは当然のことですよね。

このため、ある程度は会社側からの強制的な指示がでる場合もあることでしょう。数年おきに強制的に異動や出向をさせるとか、まったく違う職種を複数経験させるなども会社によってはよく行われることです。
当人としても『職』よりも『会社』に所属していることが自分にとって優先順位が高いので受け入れやすいかもしれません。
※ただ、年々こういう人は減ってきているようにも思いますし、昔よりも転職しやすい時代の現在では時流でもないような気がします。

代わって『就職』で入社してきた人にとっては『職』が変わることは、やりたいことができなくなるということになり、その会社に所属していること自体の意味がなくなるのでその場合は退職してしまうことでしょう。
良かれと思ってやったことが裏目にでるってことがあるので、このようなミスマッチは互いに不幸なので避けたいところですね。

『就職』は主にデザイナーやエンジニアなどの『専門職』の人が多いと思います。ただ、最近では「それしかできない人」の価値が下がってきているので、デザイナーであっても技術的なことやマーケティングを理解していないと活躍できなくなっているため、他の職種の経験をすることは決して悪いことではありません。

しかし、完全にその職種から離れてしまう(空白の期間ができてしまう)ことはいまの変化が速い時代では致命傷になる可能性もあるので、今後も専門職でやっていきたいと思っている人はまったく手を動かせなくなるという状況にもっていかれることは避けた方が良いでしょう。あくまで土台となるやりたい仕事はしっかり確保しつつ、他の要素は「拡張要素」というレベルで考えた方が良いと思います。


わかりやすくするために『就社(会社)』と『就職(職業/職種)』を分けて説明しましたが、実際にはそのふたつの要素を総合的に考えて判断する必要がでてきます。それはどの職場でどんな仕事をするかによって、職業/職種としての成長に変化がでるからです。また、会社も社員の成長によって提供領域や業績に大きな変化が起きるので、簡単に切り離せる話ではありません。

たとえばWEBデザイナーという職種に就く場合でも、どの会社でも良いというわけではないでしょう。自身がどんなデザイナーになりたいのかによって働く先を選ぶ必要があります。
言われたことだけをやるのではなく、直接提案をしたいのであればクライアントとの距離が近い(商流上の上流で活動している)会社を選択すべきでしょうし、バナーのデザインだけをしたいのか、WEB全般に関わりたいのか、紙やリアルな造形物にまで関わりたいのかによっても働き先は変わります。
また、ゆくゆくはデザイナーをまとめるマネージャーになりたいと思っている人はそれなりの規模の会社に入社するか、小規模のベンチャーに入社して自身の力量で組織の規模を拡大していく方法もあると思います。この場合は『職(就職)』のために『会社(就社)』を選ぶということになります。

逆に『会社』から『職』を選ぶ場合は、新規事業の立ち上げを頻繁に行っている会社に入社してポジション(職)を得るとか、先の例のように複数の部署を渡り歩いて企業が望む人材になっていくという方法があると思います。
ただ、この場合は自身に最終Goalイメージがないと、言われるがままに流された結果、中途半端な人材になっている可能性もあるので注意が必要です。

このように『会社』『職』どちらであろうが、なりたい(やりたい)ことがある程度明確化されていて、そのどちらも実現するために総合的にみてどこの会社を選ぶのかということが大事なんだと思います。


『就職』か『就社』かという考えは個人によってももちろん異なるでしょうが、時代によっても傾向が異なるように思います。景気が好況のときは『職』の方が強くなり、不況のときは『会社』の方が強くなってくるかなと。ちょっと前までは景気が好況だったので『個人の時代』とか言われて『フリーランス』での活動の方が重きを置かれた話題が多かったように思いますが、これからの景気次第では『会社』に重きをおいた安定志向の考えが強くなってくるのかもな~と思います。
※働き方の選択肢が増えるという意味では良いことだと思います。
あとは自身が置かれている環境にもよるかもしれませんね。独身だと『職』を優先するけど、家庭を持っている方は『会社』を優先するとか。

僕自身もけっこう転職歴があるのですが、僕の場合は『職』を中心に考えて、それを最大限に発揮&成長できるのはどこかという視点で転職先を選んできたような気がします。
※・・なので、やりたいことがやれなくなったら迷わず転職していました。

意外と雇用する側がこの『就社』『就職』の視点を忘れがちで、社員が何を望んで在籍や転職してきているかを見誤るときがあるので、自分も現場で活動していたときの『想い』がどのようなものだったかを忘れないようにして、経営と現場の想いが乖離しないようにやっていきたいと思います。
※結局は会社と社員双方の納得感があるようにすり合わせをしながらやっていくのが大事だと思います。

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