死んだ後のお金の話
ちょうど一年前、昨年の12月に父方の伯母が95歳で亡くなった。そしてその伯母の四十九日直前に、なんと彼女の息子が突然死(心筋梗塞だったらしい)してしまった。
伯父(伯母の夫)はすでに他界し、2人の息子のうち長男もすでに亡く、伯母はその次男とふたりで暮らしていた。
驚きと悲しみと共に大問題が持ち上がった。法定相続人がいないのだ。
法定相続人、とはいわゆる二親等に当たる関係で亡くなった本人から見て親、兄弟、子供、を指す。亡くなった従兄弟は独身で子供は無く、長男も同様であった。もし長男に子供があれば、財産はまず兄弟に行き、兄弟が他界していれば自動的にその子供に行くのだが。
実際、人が亡くなると結構なお金がかかる。従兄弟の場合、自宅で死んでいるのが発見されたため、司法解剖を受けたが、なんとこれも無料ではなく、終了後に遺体を引き渡す際の輸送費も入れ20万円ほどかかったという。
たまたま伯母の四十九日の法要前ということで従兄弟が家に100万円用意していたのがみつかったのだが、それも葬儀屋代や戒名代、火葬代等で瞬く間になくなってしまった。
葬儀が済んでも法要、お墓仕舞い、それに家も空き家のままに出来ないので処分しなくてはならない。お金がかかることが山積みなのだが、目の前に2000万円近く入っている従兄弟の預金通帳はあるものの、法定相続人がいないとそれをそれを引き出して使うことが出来ないのだ。
家によって異なると思うが、うちの親戚はわりと交流が深く、特に父の末の妹(私の叔母)と彼女の子供はずっと亡くなった伯母の面倒をよく見ていて、もしこんなことになるとわかっていたら亡くなった本人達もきっとその二人に財産を残したいと思っただろうが、亡くなった従兄弟にとっての叔母と従姉妹では法定相続人になれないのだ。
結局、区役所や司法書士に相談を重ね、裁判所に「相続財産管理人」なるものを立ててもらうよう申請し(通常は弁護士さんらしい)、必要な手続きを経て裁判所の許可が降りれば彼らの残した財産の中からかかった経費を払ってもらえるということがわかり、叔母がその申し立てをした。それも場合によっては許可が出ないこともあるらしいが、幸い今回は許可が降り、先日伯母と従兄弟の一周忌とお墓仕舞いを兼ねた法要を営むことが出来た。伯母の家のお墓に納められていた骨壷は全て合祀のお墓に移し替えられ、親戚皆で合祀墓にお線香を手向けた。多分伯母も従兄弟もほっとしているんじゃないだろうか。
亡くなった伯母と従兄弟が住んでいた家は持ち家で、家屋は築40年なのでともかく、土地は横浜の中心部に近いので売ればそこそこの値段はつくと予想されるが、それはもう国の管理下に置かれ、処分に関しては我々の手を離れた。全ての経費と弁護士費用を引いた残りは国のものになるという。
それにしても自分が死んだ後のお金のことなんて考えたことなかったが、全くもって他人事ではない。なぜなら私にも子供がなく、10歳上の兄も子供がない。同じようなことになってもおかしくないのだ。甥や姪はいないが、可愛がっている従姉妹の娘がいて、私達が死んだ後わずかでも財産が残れば自動的にその子に行くだろうと漠然と思っていたのだが、そんな簡単な話ではないのだ。もっとも最近は「おひとりさま」が多いので、これは多くの人の悩みでもあるようで、死んだ後を託せる身内がいないとか、事情があって親戚には財産を残したくない等の理由で、生前にあらかじめ指示しておき、いざという時はその通りに取り行ってくれるNPOのような団体も存在しているらしい。多分これからもっと普及して行くのだろう。
自分が死んだ後のことなんて誰も考えたくはないが、現実に人はいつか絶対に死ぬ。人生100年時代だとしてももう折り返し地点を過ぎた身にとって、終活は必要なことだな、と真剣に考えさせられた出来事だった。
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