アイドリッシュセブン モブ妄想 4_小学校の同級生

親に捨てられるというのは、どういう感じなんだろう。わたしには分からない。親に、捨てられたことがないから。

いつも、学校が終わって家に帰ったら、お母さんがいる。当たり前にいて、当たり前におやつを出してくれる。手作りのおやつ、たまに普通に売ってるお菓子。どちらも美味しくて、食べ過ぎると夕飯が入らないでしょ、といつも注意されてしまう。おやつを食べたらお母さんに急かされて宿題をして、終わったらゲームをして、先にお風呂に入っちゃいなさいってお母さんの声にはーいと返事をする。お父さんが帰ってくる時間はいつも同じで、わたしがお風呂から上がった頃に帰ってくるから、おかえりなさーいとお出迎えをして、そして家族みんなで夜ご飯を食べる。お母さんは料理上手だ。ほかほかのご飯に、おかずも必ず2つある。お味噌汁も美味しくて、友達と食べる給食も大好きだけど、やっぱりわたしはお母さんのご飯が1番好きだ。みんなでご飯を食べながら、今日学校であったことをたくさん話す。するとお父さんもお母さんも、ニコニコしながら聞いてくれる。その時間が大好きで、あったかくて、わたしは、夜になると怖くなる。わたしは、親に捨てられたことがないから。

同じクラスに、四葉環くんという男の子がいる。
その子はガキ大将みたいで、いつも他の男の子たちと騒いでる。女の子のスカート捲りをしたりして、友達のひなちゃんはあんなやつ嫌い!って言ってた。でもわたしは、そんなことない。だって環くんは、すごく優しい。
背の低いわたしの代わりに高いところのものを取ってくれるし、具合が悪い時は誰より気にかけてくれる。いたずらしたりもするし、先生にもよく怒られてるけど、わたしは環くんのことが好きだ。ひなちゃんと同じくらい。
そんな環くんは、親に捨てられた子、らしい。お母さんが少し前に、ひなちゃんのお母さんと話してるのを聞いた。
親に捨てられた子。こじ。まだ学校では習ってないけど、なんとなく、言葉の意味はわかる。それからわたしは、時々、とてつもなく恐ろしくなるのだ。
わたしは、親に捨てられたことがない。いつも優しいお父さんとお母さんに囲われて、美味しいご飯を食べている。じゃあ、環くんは?環くんは、今、どうしてるのかな。優しい環くんが、寂しい思いはしてないだろうか。怖い思いはしてないだろうか。
わたしは、親に捨てられたことがない。わたしは、ひとりが怖い。

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