ポメラ日記 2020年1月24日 夜を駆ける(子乗せ自転車で)
ささださんが出張中で朝も一人で回さないといけない。
と、気合いを入れていたが、よく考えるとささださんは朝に弱いためいつもだいたい一人で回していたのだった。
よんださんを抱えてぱんださんを保育園に連れて行くところだけが違う。いつもはささださんが送ってくれているのだ。
保育園に着くと、離れたがらないとかあるかと思ったが、こちらが慣れぬ朝の備品セッティングにまごまごしているうちに、ぱんださんはスッと園児たちの集団にまぎれて、絵本を開いて集中していた。
いい背中だ、と思いながら一抹のさみしさを抱えて帰る。
午後にささださんが帰ってきた。
わたしのリクエストによりハッピーセットを買ってきてくれたので、ふたりしてマクドナルドの商品を食べる。
昨日寝かしつけ大変だった? と聞かれたので、ちょうどそこにあったポメラを指さし、
「筆」
と言い、次いで口元を指さし、
「舌…に、尽くしがたい」
と告げた。それから昨夜の寝かしつけの様子を事細かに話した。
七時から、近所の本屋で東直子さんのトークイベントがあり、わたしはそれを一日千秋の思いで待っていた。
なにしろよんださんがミルクを飲んでくれないので、栄養補給のためにはわたしはよんださんを置いて三時間以上家があけられないのだ。青山や六本木や下北沢であるトークイベントなんて夢のまた夢である…。
だが! 近所の本屋なら行ける!
しかも東直子さんだ!!!
ということでまずぱんださんを保育園から引き取ると、ご飯を食べさせて速攻風呂に入れ、よんださんに授乳をして「さらば!」と子乗せ自転車を駆って夜の(という気分だが夕方だ)の街へと飛び出した。子の乗らない子乗せ自転車は、軽い。電動アシストもついてる。
夜風を切りながら、尾崎豊の「十五の夜」が胸に流れた。
盗んだバイクで走り出す。古典的な開放感の表現である。
そうしてイベントを堪能した。
東直子さんの短歌はなんか漢方的に効く、という話に(それだけではない様々な話に)とても頷く。
ところで本屋系のイベントは、つねに椅子が固い。
スタッキングできるタイプの、時には背もたれもない椅子だ。
なんとなくサブカルとしての精神年齢を常に問われている気がする。
だがわたしは年老いる自分に優しくしたいので、こんどから薄い座布団を持って行こうと思う。
イベントの最後の十分、ささださんから「よんださんが大泣きしている」というテキストが入ってハラハラしたが、東さんと花山さんからサインをもらった。
「きれいなお名前ですね」と褒めてもらって、「旧姓ですが」といいつつ、親のいい仕事に何度目か分からない感謝をする。
そして電動アシスト付き子乗せ自転車(子なし)を駆って、本当の夜の街を帰った。少し風が冷たくなっていた。
夜の街灯が白い色をして並び、その間をびゅんびゅんと飛んでいく。
尾崎豊はもう聞こえなかったが、泣いているあの子を泣き止ませられるのはわたしだけだという自負が胸に輝いていた。