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ポメラ日記 2020年2月22日(土) 春空を舞う緑のふくろ


ささださんは起きないが子どもたちは早くから起きる。
朝、ぱんださんを皮膚科に連れて行くというミッションがあったため、オンライン予約時間受付開始前にアラームをセットして気を張っている。
膝に乗ってうにゃうやしている子と、ことあるごとに首にしがみついてくる子の圧をさばくのに疲れ果て、軽くラップもどきを詠み、ささださんとの専用slackに流した。

Yo, 順調? オマエの朝の睡眠
早朝 わたしの授乳のTiming
それから交互 起きるわが子
ぐずるよんだ 転がるぱんだ ぐずるよんだに乗るぱんだ
なだめるための腕枕 しびれ果ててもまだ遥か
朝メシ(授乳) 着替え(オムツ替え) テレビにだっこ
要求いっぱい 疲労困ぱい

ひとりで眠りたい
ひとりで眠りたい

これからビョーイン つれていくけど
予約番号 10番だけど
帰ってきたら 頼みがある

ひとりで眠りたい
ひとりで眠りたい

ラップというにはあまりに稚拙であるが、ひとえに造詣の浅さと技術のなさによるものであり、当該ジャンルへの軽視ではないことはご理解いただきたい。                                
後から起きてきたささださんからは
”ムスメいっぱい
 しあわせイッパイ”
という雑な返答があった。


よんださんをささださんに預け、ぱんださんを自転車に乗せて皮膚科へ出発する。
予約時間には余裕のある出発で、晴れた空に風が強く吹いて気持ちが良い。自転車で坂を下りるときに、ぱんださんが「たのしーい!」というので、はやくジェットコースターに乗れる年になると良いねと思う。
しかし、病院まではあとふたつ角を曲がれば、というところで、忘れ物に気づいた。
保険証と医療証と診察券だ。
全部じゃないか、と思われるだろうが、気合いを入れて必要なものを全部まとめたバッグを持ち忘れたのである…。
ぱんださんにあやまりつつ、泣く泣くとって返す。ぱんださんは
「もうぜったいわすれないように、きをつけてね?」
と優しく諭してくれたが、わたしは人生が反抗期のため
「忘れたくて忘れてるんじゃないから絶対は約束できない」
と言い返していた。

診察はつつがなく済み、肌に塗るお薬ももらう。
行きがけによい匂いのしていた、病院近くのパン屋さんに行こうと言うことになった。ぱんださんはメロンパンが買いたいという。じゃあお昼ごはんはパンにしよう。わたしは朝の食パンも買いたい。
しかしその途中、パン屋さんの数メートル手前で食パン専門店を見つける。
食パン専門店、ここ何年かでよく見かけるようになったが、一度も買ったことがないので気になる。
明日の朝のパンを専門店で、今日の昼のパンをよい匂いのするパン屋さんで買ってみることにした。
食パン専門店で、チーズと干しぶどう、どちらがいいかとぱんださんに聞くと、干しぶどうがいいというのでそちらを買う。ぱんださんが元気に
「しょくぱんかった? めろんぱんかいにいこうよー!」
とおっしゃるので、ややきまずく苦笑しながら店を出た。苦笑ってひさしぶりにした。

よい匂いのするパン屋さんの方は、広い店内に調理パンや菓子パンやサンドイッチやピザやバゲットが所狭しと並び、お高く洗練された食パン専門店との対比を感じる。楽しく買い物をした。
店を出て、軒先に下がった看板に、「パンのバラエティ・ショウ」と書いてあることに気づく。なるほど言い得て妙、という品揃えであった。
食パン専門店 v.s. パンのバラエティ・ショウ。
数メートルの距離で店を構えて大丈夫なのだろうか。
いや逆に大丈夫なのかもしれないな。

帰り道、とても風が強い。あっ、とぱんださんが空を指さす。
ぱんださん一人くらい入りそうな大きさの布袋が、上の道路から空へ舞い上がっていた。緑色の、たぶん工事などに使う丈夫そうな袋だ。
春色の空に、緑色の強そうな袋が舞い上がり、舞い上がり。
見守るうちに近くの道路へ落ちた。
ぱんださんは拾いたがったが、引き返して拾ってもわれわれに出来ることはないと説いて、自転車を進める。
ちらりと後ろを振り返ったら、通りがかりの人が拾って、踏まれないような場所に掛けてあげていた。
あとで、関東は春一番だったと聞いた。

ラップの返答は雑であるものの、昼食後、一時間あまり一人で寝かせてくれたささださんはいい人だ。
起きてきて、科学博物館に行こうと言うことになる。
お出かけの準備をしていたら、しかし、ぱんださんが寝た…。
起きるのを待って、夕方ではあったが科学博物館へ急ぐ。
「絵本でめぐる生命の旅」という特集展示が思いのほかよかった。展示もよく考えられていてこどもも興味を持ちやすく、メインの下敷きになっていた『わたしは みんなの おばあちゃん』という、魚類っぽい祖先から進化の木を人間までたどっていく絵本もすごく分かりやすい。あの本買ってもいいな-。
絵本コーナーが用意されており、子ども向けの生命の歴史関連の本が充実して並べられてある。もう一度、ぱんださんぬきであそこに絵本読みに行きたい。

360度シアターと恐竜を見る。ささださんとよく科学博物館にいくぱんださんは、恐竜の骨の展示を紹介してくれた。小ぶりな恐竜の骨が長い棒に串刺しにされ、ボタンを押すとその棒がぐるぐる回っていろんな角度から見られる、というものだ。
恐竜の丸焼き…とつぶやくと、ほねだよ! とぱんださんから怒られた。
ささださんはその間、よんださん入りベビーカーとともに室内のベンチに座っていた。合流に行くと、ささださんはとても眠かったらしく、がくりとうなだれて居眠りをしていた。
ぱんださんがそのうしろすがたをみて、
「かなしんで、いるのかなぁ。ぱんちゃんがいないよーって。かなしいのかなぁ」
と心配していた。
それだけ愛されているという自信を子に与えることが出来て、ささださんは誇って良いと思う。

夕飯の用意をしておらず、上野公園でなにかの催事でたくさんのテントが立っていたのでそこで食べちゃおうということになる。
そろそろ店じまいという時間帯だったようで、いろんな屋台飯が半額で投げ売られていた。広島焼き(という商品名だったので仕方ない)、オムそば、たこ焼き、ソーセージ、シュラスコ。
主にソース味の炭水化物を、強風にさらされながら摂取する。
お肉は固かった。
暮れなずむ公園に、店じまい仕掛けの屋台の明かりが、すこし距離をもって暖かそうに光る。
家族みんなで強風にさらされてジャンクなものを食べるの、妙な楽しさがあった。


ねかしつけの本は
『わたしと あそんで』
『あひるのバーバちゃん』
それから
『わたしが あかちゃんだったころ』
でした。

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やきとりい
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