ポメラ日記 2020年3月14日(土) 踊るのはあこがれだったので
よんださんが最近、わたしを見るとぱーっとお顔をかがやかせて両手を広げて抱っこ待ちになるようになり、かわいさに胸を打ち抜かれる。用事があって抱っこに行けないときの罪悪感もひとしおである。すっごい泣かれる。
荒天の日である。強い風雨が窓の外に見える。
気圧が低くて体もだるかったが、今日はあたらしい試みがあるためどうしても動かねばならなかった。
慌ただしく昼ごはんを済ませて授乳し、ぱんださんにお着替えをせかす。今日は、ぱんださんの保育園のお友達のお母様がやっている、ダンス教室の見学なのだ。
だんすするの? どれすをきるの? と言われて怯む。いや、そういうソシアルでセレブリティなやつではない。
ぱんちゃんと、おかーさんだけで行くんだよ、とぱんださんに言ったら、やったーっ、と顔をかがやかせて抱きつきアタックが来たのですこし不憫に思った。そんなに我慢させてるか、すまない。
わたしはレインコートを身につけ、ぱんださんは子乗せ自転車の雨カバーに乗せて出発する。実はわたしは自転車の運転も上手くはなくびびりで、雨の中子どもを乗せて走るのは初めてだ。
走り出した途端後悔した。
めっちゃ寒い。向かい風でレインコートのフードが煽られ、顔と髪がびしょびしょになる。視界も悪い。眼鏡を雨粒が流れ落ちる。
ていゆうかこれ雨か? なんかちょっと凍ってない? みぞれ?
そしてわたし、こんなに近所なのに道に迷ってない?
自転車を一旦止めて、凍える手で地図を確認する。うん、ちょっと違うとこにいる。防水iPhoneがびしょびしょになって地図も見にくい。
座席からぱんださんが、
「また、まよっちゃったの?」
と声を掛けてくる。またって。いやこないだ耳鼻科医に行ったときもそういえばちょっと迷ってたね……。苦労掛けるね……。
えいやと進路を修正し、たぶんこっちな気がするという掛けに一敗一勝してたどりついた。
ひどいありさまであった。
しかしダンス教室は、こどもに無理強いさせない感じのところで、のびのびやれてぱんださんもわりとすぐになじんだ。楽しそうだ。
保育園の同じクラスの子が三人いたのも、なじみやすい理由だったのだろう。
親子参加型なので、わたしも見よう見まねで手足を動かす。うーん、全面鏡張りのスタジオで見ると、わたしのいかにも運動できない感じがよく分かる。
ぱんださんは、支えながらの逆立ちまでこなして、上手だと褒められていた。褒められたので二回やる積極性も見せていた。
すばらしい。
ダンス教室も、開始前と終了後の手洗いとアルコール消毒を徹底していて、ご時世であった。
帰って、疲労と寒さで限界が来たために、シャワーで暖まる。ささださんに後を託して、少し寝せてもらった。
30分もしないうちに、暇になったぱんださんの襲撃があり、強い言葉で追い払う。
寝て回復してからとても後悔した。
リビングに降りて、テレビをみているぱんださんに、さっきはごめんね、と謝る。ううん、とぱんださんは首を振った。
「さみしかったけど、きてくれたから、いいのよ」
こういうとき、こどもの(多分ほかに選択肢のない)寛容さに甘えているなぁ、と思う。
窓の外はすっかりぼた雪だ。
それはそうと、月一でランダムで魚介類が送られてくるイベントが発生したため、うちわエビを茹でたりさざえを壺焼いたりした。
ぱんださんに、いかのお刺身を細かく切って少しあげると、美味しいと言って食べていた。
寝かしつけの本は
『マグロリレー』
とかでした。