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ポメラ日記 2020年2月5日 きみとゾウをみる/オリンピックはいつだい?

今日はぐずぐずで朝寝をしたよんださんが、起きたら機嫌が良い。なんてかわいいんだ。
ということですごく久しぶりにフィットボクシングをした。
15分のメニューの終わりがけには飽きられて泣き出されたが、鉄の意志で完遂する。サイレントベビーなんて迷信だ、と繰り返し胸にいい聞かせる。
終わった瞬間、ごめんねぇ! とすばやく抱き上げてよしよしした。いい子いい子。
わたしはあと4キロ落として産前の体重にもどりたい。付き合ってくれるか。

昨日の残りのカレーを食べて、動物園にでかける。
うっかり財布を忘れてしまったが大丈夫だ、動物園なら年パスがある。
途中、よんださんが寝てしまったので、自分の見たいゾウやホッキョクグマを心ゆくまで眺めた。今日は暖かくて動物園びよりだ。
鞄とポケットのあちこちをさがすと140円集まったので、温かい紅茶を自販機で買って飲む。ものの管理の出来てなさは、こういうとき便利だ。ものの管理が出来ていればそもそも財布を忘れないのかもしれないが。

よんださんが起きた。
赤子は視力が弱く、檻から少し離れた動物はもうよく見えないことが多い。そもそも「動物を鑑賞する」という挙動が身についてもいないので、動物園にきてもぼうっとしていることになる。ホッキョクグマやアシカのあたりでは、水の反射がゆらゆらと綾になって揺れるのを主に目で追っていた。わかるよ、あれはきれいだしつい見ちゃう。

しかし、さすがにゾウの前に来たらさすがにビックリしていた。口を開けてぽかんと見ている。ゾウの力は偉大だ。
今日という明るくて暖かい日にいっしょにゾウが見られて嬉しかった。
途中、園のスタッフらしい、スタンプ台の采配をしている年配の女性たちに声を掛けられる。あらかわいい、今日が動物園はじめて?
もちろんよんださんのことだ。実は二回くらい連れて来たことがあるのだが、なぜかこういうときに発動するサービス精神が、「そうなんですよー」と答えさせる。
あらじゃあ是非スタンプ押していきなさいよ、今日の日付が入っているのよ。
きゃあきゃあといわれて、パンダの絵の台紙のパンダのお腹の白い余白に、パンダの顔のスタンプを押す。
押し方が上手だわ、真ん中にきれいに押せてるわ、となぜかわたしまでおだてられて、悪い気はしなかった。
もちろんよんださんのことも、かわいい、笑った、表情がとっても豊かですばらしい、と口を極めて褒めたたえてくれる。
世間には、こういう「赤子をちやほや隊」がそのネットワークを各地に張り巡らしており、しんどいことも多い親の気持ちをほぐして向上させるのに絶大な効果を発揮している。わたしもいずれ入隊希望だ。

よんださんをささださんに預け、いつもより早めにぱんださんを迎えに行く。今日は、ぱんださんの初めてのスイミングスクールだ。
園の先生から、「すっごく楽しみにしてましたよ」といわれてちょっとひるむ。そんなに期待値を上げているとは知らなかった。これで行ってみて怖かったり辛かったりする気持ちになったらどうしよう、いやどうしようもないがかわいそうではないか…。
自転車でスクールに向かう間も、「ぷーる、どこにあるの?」「もうすぐ?」と弾んだ声で聞かれ、親がひるんで不安にさせてはいけないと、精一杯明るい声で受け答えする。
スクールの時間は45分間。その間親は子どもを離れ、希望者はプールの上の階の閲覧席からガラス越しに見学する。
閲覧席では、盗撮防止にスマートフォンの使用は禁止だ。45分は貴重な一人の時間だから、紙の本かKindleを持って行こうと思っていた。が、初プールへの緊張でどちらも忘れてしまった。参ったな、と思っていたのだ。始まるまでは。
とんでもない。わが子の初スイミングスクール体験45分、一時たりとも目の離せないエキサイティング・エンターテイメントだった。
まず水着に着替えたぱんださんが皆といっしょにプールサイドに現れる。初日で、まだ等級が決まっていないので、等級に合わせた帽子を購入してない。ひとりだけ無帽であたりを見回している。
おかーさん、おかーさんはここで見ているぞ。手を振ってアピールしても気づいてくれない。
あぁあの顔はちょっとナーバスになっている顔だ、眉がひそめられている。周りの子が慣れた様子で先生と準備運動をする、ぱんださんはどうすればいいか分からなくて固まっている。プールサイドに腰掛けて水を足に浸すのは、周りの子の様子を見て合わせた、いいぞ。だが皆のように先生にうながされても足をぱちゃぱちゃできていない。どうなる。
プールに入り、小さめに区切られた2レーンの一部をぐるぐる歩く練習が始まる。えっそうかそこで先生に一人ずつ手を取られて、顔を水に沈めるのか。できるのか、そんな高度なことをいきなり。
一周目は、ぱんださんが首を横に振り、顔を沈めることなくまた周回の列にならぶ。水の中を歩くのはだいぶ様になってきた。二周目。隣のレーンの小学生たちが華麗に泳ぐのに気を取られて、自分の順番になっても動かない。先生に手を取られて(優しい)、沈む練習の位置まで移動する。わたしの手はいつの間にか西洋式の祈りの形にしっかりと握られている。先生が何かを言って、ぱんださんは今度は縦に首を動かして頷く。そして、
やったーーー! 沈んだーー!!
すごい、すごいぞ、ぱんださんは水を恐れず体を沈めることができる!!!
ミッションをクリアしてまた列に並んだぱんださんが、ふと顔を上げて、こちらと目が合う。ここぞとばかりに大きく手を振る。ぱんださんが、ぱっと顔を輝かせ、笑顔でこちらに両手を振った。
か・わ・い・い(胸を打ち抜かれて海底に沈没)。
その後も、不慮の事故による派手な全身水没(一瞬で先生が気づいてすくい上げていた、安心した)あり、気がはやるあまりに列の順番を抜かすアクシデントあり、さらなるチャレンジありと、スリルと笑いと感動に満ちたノンストップ45分であった。
スクールが終わり、着替えを手伝いながらぱんださんに感想をきくと、「つぎもおよぎのれんしゅうじゃないんだって、たのしかった、つぎもまたこようね」とうれしそうに言っていた。
よかった。

夜、ささださんに、ぱんださんはとても勇気があってすばらしかった、と話すと、「オリンピックに出るなら2032年からかー」と言っていた。そうだね。

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