ポメラ日記 2020年1月18日 雨まじりのあいまいな雪
「おばーちゃんとおじーちゃんのうちのゆめをみたよー」
という第一声でぱんださんが起きる。よく寝た子どもは起動時からトップスピードだ。
休日のみテレビを許しているので、起きたらテレビをねだられる。
窓の外は雨のような、雪のようなものが降り続いて暗い。外に行かせられないので、テレビ(実際にはAmazon PrimeかディズニーDXの動画)を好んで見てくれるのは助かる。
基本、人の手が必要なよんださんと、とにかくおかーさんに触れていたいぱんださんで、休日はおかーさんリソースの深刻な枯渇状態になる。ぱんださんは朝ごはんを食べている間もおかーさんと手をつなぎたいのだ。テレビを見ている間も、おかーさんが側にいて、できるならおかーさんの膝に乗り、おかーさんに同じものを見ていてほしい。
それでもテレビを見ている間は多少の動きは可能なので、その間によんださんを授乳したりする。やれやれ。
よんださんのぬくい重みを抱えて吸われながら窓の外を見ると、外に降るものがやや白くなっていた。
雪だよ、とぱんださんに声をかけようとしてためらう。
これは草津のスキー場で見たような完全な雪ではない。すこし雨のゆるさを残したあいまいな何かだ。「雪」と名指してみせたら、ぱんださんが期待したほどの、幼児向けアニメの中に降るような雪でないことに失望するのではないか。そういうためらいだ。
現実には(少なくとも東京には)こんなあいまいな雪のほうが多いのに、完璧な雪ばかり子どもの上に降ることを願ってしまう。
暗い窓に当たる雪に似た何かは、すぐに雨の痕になって流れ落ちる。
あん餅を食べたいぱんださんのために、オーブントースターでお餅を焼く。
焼いているところが見たいと熱烈にアピールされ、冷蔵庫の上にあるオーブントースターをのぞかせるために15kgを二分間抱っこする。餅をひっくり返してさらに二分、抱っこする。
ぱんださんは、タイマーが切れて「チン」ということに一番喜んだ。
そういえば、「チンする」という言葉は流通していてぱんださんも時々使うが、本当にチンという家電は今、我が家の中ではこのオーブントースターだけだ。
ぱんださんのアピール力にやや割を食っているよんださんであるが、目が合うとひかり輝くように笑ってくれる。幸福になる。つい手をのばしてその小さな手を握ると、ノータイムで口元に持って行かれて舐められる。
おやつにポップコーンを食べながら、ぱんださんが
「ぽっぷこーん、どこにひっかかってるんだろうね?」
と聞く。
ひっかかってるとは? と詳しくたずねると、
「あのー、きとか、くさに! りんごは、きに、ひっかかってる!」
なるほど大いなる誤解がある、と、YouTubeでポップコーンを作る動画を探して一緒に見た。
窓の外に降るものが、雪といって差し支えない白さになったと判断して、ぱんださんに「雪だよ」と声をかける。
窓を開けて抱き上げて外を見せると、ぱんださんはいろんなことを観察した。
「したは、しろくないね」
「あめが、ふってたから、ゆき、おちて、あめになるね」
完璧な雪なんかいらなかった。
ぱんださんを降ろしてよんださんを抱き上げ、よんださんにも雪を見せる。寒くて迷惑そうな顔をしていた。
ぱんちゃんも、と言われたのでよんださんを降ろして交代させようとすると、ぱんださんは、「よんだちゃんといっしょに見たいの」
と言う。わたしは二人一緒に抱え上げるには今、腰が不安である。
万事休す、と思ったところに、がらりとふすまを開けてささださんが起きてきて、ぱんださんを抱え上げた。
ヒーローっぽかった。