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ポメラ日記 2020年3月17日(火) 口から乳がこぼれる赤子よ


天気がいいぞと浮かれてぱんださんを送り出す。しかしよんださんがおむずかりの日であった。
ささださんが、自宅勤務のメリハリをつけるために定期的に学校のチャイム音が鳴るようにして、それでなんとなく時間の流れを知る。

よんださんを授乳していると、何が気になったのか、よんださんがいきなり口を離して後ろを振り返った。そのときに、飲み途中であった白い母乳が口からこぼれて頬に流れており、どきりとする。
理論上、自分が乳を生産してそれをよんださんが飲んでいることは理解しているのだが、いつもはこう…乳房内で生成されそのままよんださんに吸い込まれていくので、ミルクミルクした実態を見ることは少ない。
目の当たりにした、自分が液体を生産している、という事実はなんだか生々しく、不思議で、うっすら違和感がある。
まあだからどう、ということもないのだが。

外へ出て歩き回る。火曜日は、近所のいろんなお店がお休みの曜日だ。シャッターが閉まっていると、その店の前を通り過ぎたことさえ気づかないこともある。
ぼんやり歩いて、小さな公園に至る。桜の木がぐるりと取り囲んで枝同士をふれあわせ、ドーム状の天井を作っているような場所だ。今にも弾けて咲きそうな桜の圧力が息苦しいほどだ。
そんな小さな公園にも、学校という行き場をなくした児童たちが縦横無尽に走り回っている。
こりゃーのんびりは出来そうにない、ときびすを返したところで、ベビーカーを押した女性と目が合った。同じくらいの月齢の赤子を連れている。
会釈を交わすと、先方が声を掛けてきた。
「なかなか行く場所がありませんねぇ」
「そうですねぇ、どこも閉まってますからね」
赤子を連れて行けるような児童館は、真っ先に閉鎖中だ。
わたしの背後で、そのお母さんも赤子に、「この公園はひとがいっぱいいるから、むりだねぇ」と声を掛けて方向転換したようだった。


閉店セール、とかかれた雑貨屋さんに足を向ける。
民芸品などを扱っているお店で、やや怪しい感じがして今まで入れなかったお店だ。閉店だ、というきっかけに背中を押されて入る勇気を持てたが、なんとはなしに自分が卑怯な気がする。
雑多に並ぶ品物をよくよく見ると、ポーランドやルーマニアから来たらしい小ぶりな陶器がなかなかよい感じだった。そうそう、これくらいの小鉢が欲しかったのだ、と手に取ってみていると、お店の人が声を掛ける。
「海外からのお皿は…そのう、食器として輸入していないので、小さいお子さんのいるお母さんにはあんまりおすすめしておりませんのよ」
日本における食器の安全基準を満たしていないよ、ということらしい。
「わたしも使っているものですから滅多なことはないとは思いますけども、ええ、小さなお子さんはね、ほら、お母さんが口にしたものがおっぱいに出たりするでしょう?」
とてもありがたい気遣いだ。しかし、閉店セールのお店から逆リコメンドを受けるとは思わなかった。
かなり気に入って買うつもりだった器をそっと戻す。ここで強行して買う度胸はなかった。
いつまでお店が開いているのかをたずね、現金を持ってまた来ようと、店を辞した。
あのルーマニアの黄色の小鉢、可愛かったな。

ぱんださんをお迎えにいくと、公園へ行きたいと主張される。陽気が良いのでまあいいかとなる。
公園で遊んでいると、同じ園の子とそのお姉ちゃんとお母さんが後からやってきた。お迎えの時に、この公園にいくと話していたので、ぱんださんと遊びたいとやってきてくれたらしい。
おぉ、ぱんださんが人から好意を持たれている……と感動しつつ、一緒に遊ぶ。
お母さんはエネルギッシュにこどもたちと遊んでくれている。気さくで面倒見が良い、すばらしい美質だ。
お姉ちゃんは、ぱんださんになわとびを貸して、教えてくれていた。自分の遊具をこころよく年下に貸し出し、やり方を教え、ぱんださんが上手く出来なくても怒らない。果てしなくよく出来た「姉」しぐさだ。
ぱんださんも一応、妹を持つ姉であるが、数年後にこのようになってくれるだろうか、なってくれたらうれしいな…とうっすらと思う。
でも、今の、よんださんのほっぺたに無理矢理ほっぺたをくっつけて、「ぽんにゃり…」とか言っているぱんださんも好きだよ。

育休中でお迎えの後に時間があるのと、ぱんださんがちょうど同じ保育園仲間と遊ぶような年齢になったところで、だいぶ保護者同士での付き合いというものが成立してきた。
いい機会だったな、と思う。
よんださんがいることで、ぱんださんの世界を広げることがあって、よかった。
ぱんださんから奪うばかりではなくて、ほんとうによかった。
ぱんださんは鉄棒で豚の丸焼きをしていてとても楽しそうだった。

ささださんに公園までお迎えのお迎えにきてもらって、みんなで帰った。

夕食後にパイナップルを切ろうとして、よんださんの産まれながらの逆立った毛がパイナップルの形に似ていることに気づき、並べて写真を撮る。
ぱんださんは
「いっぱいたべたら、おくちがいたくなるんだよね」
と言いながら、お父さんの分にも手を出して食べていた。

寝かしつけの絵本は
『でんしゃに のったよ』
『はっぱのうえに』
『あめかな!』
でした。

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やきとりい
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