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ポメラ日記 2020年2月12日 春に置いていかれた数は

ルビィのぼうけんのカバー、帯の確認を今日正午までに、という圧に、前日の寝る直前に気づく。
うおぉとなったが寝かしつけを省くわけにはいかないので、午前五時ごろ授乳で起きたついでに布団の誘惑から抜け出した。
もう少し詳細を言うと、横になった状態で、夢うつつに吸い続ける赤子を前に、腰に抱きついて熟睡する三歳児を後ろにサンドされながら、なんとかほかの眠りを乱さずに立ち上がることに成功する。
隣の部屋でエイッと確認して修正箇所を投げて再度布団にもどった。


午前は眠い頭でよんださんをかわいいかわいいしていたら終わる。二時に仕事の打ち合わせがあり、その前に銀行に行きたい、しかしその前に着替えと化粧を…としていたら、銀行に行く時間がやんわりと消滅した。待ち合わせに早めに家を出る律儀な人みたいになる。汝、銀行よ、御身はかくもはるかに住所変更をわれより遠ざける……。

打ち合わせでは、「主婦」という層が、子どもの世代のプログラミング教育についてもよく知らされず、なんとなく苦手意識を植え付けられ、取り残されそうになっている、という話をきいて、あぁそういう視点を持ったことはなかったな、と、とても勉強になる。
あと、打ち合わせ相手が大学でアラビア語を専攻していたという話がとても興味深かった。
打ち合わせの間いい子にしていたよんださんだが、さすがに長引くと眠くて泣き出したので、一度中座してその辺を歩き、落ち着かせてから話を再開する。
よんださんは最終的にぐっすり寝ていた。


スーパーに寄って晩の野菜に菜の花を買う。帰り道、お寺の塀越しに満開の白梅を目にし、春がいちどに鼻の先までやってきた気持ちになった。大声で、春だよ、と告げられて、わたしも誰かに告げたくなる。
春はいつも突然に来て、やわらかくて少しつめたい手触りと、いい匂いの記憶を残して、いつの間にかいなくなる。
わたしがあの塀の遠くの白い梅を忘れるより先に、春がいなくなるだろう。

家に帰って超特急で米をとぎ炊飯器をセットし、ホットクックに材料を投げ入れる。よんださんをささださんに託し、自転車でぴゅんとぱんださんをピックアップする。今日は水泳教室の日だ。
自転車で、前回とは違う道を行ってみるとそちらのほうがずっと楽だった。よしよし、と思う。毎週のことが少し楽になるのは、とてもいい。
前回の反省を生かしてKindleも紙の本も持って行ったが、やはり一秒たりとも使わなかった。反省を生かしたというよりむしろ学んでいない。
45分間、自分に関わりなく人任せにしたわが子をただ鑑賞できるというのは、最高の娯楽である…。たぶん何回かしたら飽きるとは思うのだが、二回目ではまだ全然目が離せなかった。
だって(たぶんやや年上の)子たちに混じるとあんなに小さく見える。ああまだ準備運動では固まっている。でも先生がいろいろ声かけをしてくれて、前回より入りがスムーズだ。
体が小さいのとなれていないので、プールからプールサイドへ這い上がる動作に苦労していて、固唾を飲んで見守る。
獅子はわが子を千尋の谷へ突き落として這い上がるのを見守り、人間はわが子をプールに落としてそれを見守るのだ……インストラクターと監視員付きで……。
獅子よりずっと弱っちい生き物なので大目に見てほしい。
ぱんださんはトイレに行きたいことも先生に伝えることが出来て、両腕につける浮き輪で仰向けに浮かぶことも出来て、もはやオリンピック出場待ったなしの才能の萌芽を見せつけていた。

プール上がりにアイスをねだられて、冷たいものを多くは食べさせると心配なので、半分こにする。わたしは全くアイスを食べたくないので寒々とした気持ちでのこり半分を食べた。

家に帰り、ぱんださんにウィンナーを切ってもらい卵を割ってもらって、菜の花の卵炒めを作る。
春だよ、と言葉にはせず、家の人に教えた気になる。


今日の絵本は『せかいちずえほん』と『やまのゆき みてたらね』。そう言えば『やまのゆき みてたらね』も、春がくることの絵本だ。
ぱんださんがなかなか寝付かず、寝室に一人にして大泣きされたりすったもんだして寝かす。一つの枕にぱんださんといっしょに横になっていると、暗闇の中につやつやと見える黒目をあけて、ぱんださんがささやく。
「おかーさんがよかったの、それで、めをあけてみはっているの。わるいゆめが こないように」
いいから寝なさいって。

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やきとりい
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