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【天鳳】ヒラリーステップ奮闘記 前編【麻雀】

 天鳳の十段坂……それは非常に険しい傾斜でできた道を2000ptという長い期間登り続けなければいけない過酷な坂。その過酷さは、坂というよりもはや崖。

 そんな十段坂の中でも特にきついとされているのが、天鳳位直前の3500pt~の戦い。ここでの戦いは、エベレスト山最後の難関であるヒラリーステップを登ることと同義だと言われている。

 いやいやそんな大げさな……という方もいるだろう。しかし、実際に体験してみてわかった。ヒラリーステップは本当に苦しい。

 天鳳位が目の前に来たというプレッシャー。そして、もし落ちてしまえば二度と戻ってこれないかもしれないという恐怖。あってはならない感情が、脳のリソースを奪う。

 この場所で最高のパフォーマンスをするのは人間には不可能だと断言できる。可能なのはAIだけだ。


 本シリーズでは、私ヨーテルのヒラリーステップでの戦いを全て取り上げていきます。戦術論や、実践での心情を出来る限りお伝えできればと思っております。

 ちなみに、このヒラリーステップという名前は麻雀記事を書いているZEROさん命名です。

 ヒラリーステップでの試合数は全18戦。少し多かったので、3つに記事を分ける事にしました。


1戦目(3575/4000)


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 緊張とともに始まった1戦目。東2局にいきなり良い手が来た。7pを切って安パイの白を残すか。白を切って258p引きからのタンピン三色まで残すか。

 勝負手目一杯!と言って白を切るのがマジョリティのようにも思う。しかし、巡目はすでに10巡目。いつ誰かからリーチと来てもおかしくない状況。

 例え後手を踏んでも、この手は死ぬほど押したい手。そう、押したいからこそ……

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 ここで7pを逃がしておく。この手でリーチを受けて「危険牌が2枚になりました。撤退します。」は正直やってない。

 勝負手だからこそ、押し返しやすい形を作る。

 無論、序盤だったら白を切って打点MAXを求める。ここは巡目によって判断が分かれる部分だろう。


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 親かカン3pをチー。そして2sが出た。これを鳴くかどうか。

 タンピンドラ1がチーテン有利になるのは何巡目からだろうか?9~10巡目くらいだったかな。

 となるとこの2sはデータ的に見て、若干チーテン有利……というのは、思考としては若干浅い。

 チーテンに取った後の未来を想像してみてほしい。皆の手も整いだしているであろう中盤。この程度の仕掛け相手には、まず間違いなく押し返されるだろう。

 もちろん、押し返される最中に47mが他家から打たれれば何の問題もない。だが、ここで捨て牌を見てほしい。果たして、47mが打たれるような場況に見えるだろうか。

 マンズの真ん中辺りは他家の手の中で厚く持たれているように見え、出てきづらいことが想定できる。両面とはいえ47mは厳しい待ちだ。

 この待ちで押し返され、めくり合いになると少々分が悪い。こちらも打点があればいいのだが、残念ながら2000点だ。

 と、いうわけでこの2sはスル―を推奨する。逆に47mを鳴いての258s聴牌なら、苦しいところを鳴いて和了りやすい聴牌という状態に持っていけるので、チーテンを取った方がよさそうだ。


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 スルーした258sを引いての聴牌。同じ47m待ちだが、打点は大きく違う上、リーチしたことで押し返される可能性もチーテンに比べて圧倒的に低い。

 これは勝ったか。最悪流局の1人聴牌でも……


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 あっ。(-6400)


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 3着と14500点差というまあまあなダンラスで迎えた南2局。この發を鳴くかどうか?

 ダンラス時は局数=命だ。局数が進めば進むほど、死に近づくことになる。命を消化するときはそれなりのリターンを得る事が大切だ。何もしない時間ほど無駄なものはない。人生も同じ。刺さるね(´・ω・`)

 發を鳴けば大体和了れる2000点。これを一局消化の代償としてしまってよいのだろうか。

 どうしても2000点しか和了れそうにないなら、それもやむなしだろう。しかし、この手は門前リーチからの満貫クラスが十分見込める手。1枚目の發くらい、スルーしてみるのが結果的にラス率を下げる事になりそうだ。

 2枚目はどうしようかな……


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 1pをツモってこの形に。この瞬間決めました。もう2枚目の發も鳴きません。

 發をスルーしても、カン2pのリーチ赤1が見込める手。こちらで打点を作っていく。

 いやいや、リーチ赤1とか2600でしょ?となるかもしれないが、リーチはツモや裏ドラで打点を上げることが出来る。ダンラス時は、それくらい打点に凝る姿勢が大切だ。

 ダンラスという状況は、人生でいうなら職無し金なしの底辺状態だと思ってもらえればよい。楽なバイトして安い金を拾ったところで、現状は変わらない。


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 結局この手は、9pをツモってのシャンポンリーチに。


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 3pをツモって裏なし。最低限の1000/2000となった。


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 オーラス。依然ラス目だが、3着と4900差まで詰めた。条件は5200出和了りか1000/2000。ドラにくっつけての門前リーチが本線か。


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 こういう第1打何切るは地味に大切。

 ドラの5pにくっつける前提のため、既にターツは足りていると考え9mから切ってしまう人がいるが、これは絶対に西から切らなければならない。

 どうせ西は出ていく。ならば、西家に西が鳴かれてしまう確率を少しでも下げるべきだ。9mと西の安全度とか言っている場合ではない。


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 ドラにくっつきはしなかったものの、何とか形になってきた。ここで何を切る?


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 ヨーテルの推奨打牌は2s。1000/2000条件であるため、リーチ+ツモに何か1つというのが現実的なプラン。

 となるとこの手、6sをツモってしまっては台無しだ。流石に愚形でツモ裏条件はキツイ。

 ドラにくっつきさえすれば、6sを引いても条件が満たせる。よってドラは残す。2sと4sの比較は両面変化の枚数。この手に平和は必要ない(平和がついても3900では条件を満たさない)ため、カン3sダイレクトの平和よりも受け入れを重視していく。


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 張った!どうする!?


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 リーチでしょう!

 手替わりを待ってから和了るよりも、リーチをして4s6mを引いてしまった方が簡単。オーラスで条件が出来たならば、基本的には即リーチを打とう。


 とはいえ。私は、まぁ大体ラスだろうな……という悲観的な気持ちでこのリーチを眺めていた。

 トップ目と2着目はまず撤退する。3着目は押してくるかもしれないが、いかんせんこちらの待ちがクソ。出てくる可能性はかなり低いだろう。

 これはデータではなく、感覚の話になってしまうのだが。オーラスに1000/2000条件で愚形リーチを打ち、実った経験はほとんどない。

 1戦目にしてヒラリーステップは陥落か。陥落したら、1戦だけにはなるが記事を書いてしまおう。そんなことを思っていた。


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 いよいよ終盤でもうだめか……となった時にツモった。

 どうやら、まだやらせてもらえるらしい。


2戦目(3575/4000)


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 またダンラスだよ……(´・ω・`)

 南1局で最後の親。この親を落とすといよいよ厳しいので、後手を踏んでも大体押していくことになりそうだ。幸い、手格好も順子系で良いしね。


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 上手い事先手(?)が取れてリーチ!からの……


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 上家に1300/2600ツモられ。これで3着目とも21900点差。残り3局、親番無し。流石にオワタ\(^o^)/


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 かなりきつい状況だが、やれることはやるしかない。

 先ほどもあった通り、ダンラス時に安い手で流してしまうのはタブーだ。發を鳴けば發ホンイツの5200くらいは和了れるかもしれない。しかしこの点差。5200であろうと物足りなさはある。

 發を鳴くかは微妙なライン。どうしようかな……決めきれないでいると、發が出ないまま手が進んだ。


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 5sツモ。これで七対子にほぼ確定。出来ればメンホン希望。

 鳴いてのホンイツやトイトイは大体5200になってしまう。ドラを重ねれば跳満もあるが、まだこの手には面子がない。ドラが重なるなら七対子で使った方が速いし高い。


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 お?これいけるんじゃないか?


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 おいおい、聴牌したぞ。


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 こんなズルが許されるんですか( ・◇・)?


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 キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!

 裏は乗らずだが倍満ツモ。この後ラス回避して3着終了となった。


 ダンラスから奇跡の2連続ラス回避。これで追い風が来てる……と思う人もいるかもしれないが、風を感じるような余裕はこの時の私にはなかった。

 所詮はただの3着3着。この後ラスったらヒラリーステップは即終了という状況に変わりはない。

 僥倖のラス回避を活かせるか……次の1戦がマジで大事だな。と思いながら、その日はPCを閉じたのだった。


3戦目(3575/4000)


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 3戦目は起家スタート。だが、まだ手の整っていないうちに上家の2副露が入ってしまった。捨て牌が濃く、聴牌していてもおかしくない。

 ドラの見えていない仕掛けではあるが、高打点のパターンもあるので、出来る事なら放銃は避けたいところ。

 ここは、いったん様子見で筋の8m切りとし、情報が出てから対応する形を取ることにした。

 しかし、次の巡目に異変が起こる。


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 上家の2sツモ切り。これだけ見るとただのツモ切りだが、実はこの2sツモ切りの際、上家は数秒ほどの小考をしてツモ切っていた。これは……

(・ω・)「上家……まだ張ってないんじゃね?」

 上家がどのような理由で小考したかはわからないが、聴牌であるなら小考するケースは少ないように思える。ならば。


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 ここで危険牌を処理しておきたい。浮き牌は3つ。47pと發。どれから切っていくべきだろうか?


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 これは7pから切るのが正解。

 發を切ってしまうと、上家發ポン→47pロンのケースがある。イーシャンテン相手に字牌と数牌を勝負する際は、数牌から勝負するのが基本だ。これは汎用性の高い戦術なので、是非覚えてもらいたい。

 では47pの比較は?

 対面の捨て牌に1pが置かれている。上家はこれを鳴いていないため、14pの線は薄い。ならば、愚形で当たるパターンの比較で7pの方が危険となるため、ここは7pから切っていくのが正解となる。


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 後は上家がツモ切っているうちに先切り!先切り!


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 よっしゃー!

 上家の小考がなくても結果は変わらなかったかもしれないが、上家のノーテンを読んで勝負できたと言う点で、非常に満足のいく和了りとなった。


 ……え?上家の手牌は結局どうだったのかって?


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 テンパイしてましたね( o_o ) 2sの小考は単騎選択の小考でした。

 ま、まぁあんなのノーテンみたいなもんだし(震え声)


 ちなみに、思考時間で手を読むというのは、かなり勝手読みの部類なのであまり頻発させるとドツボにハマることがある。

 ネット麻雀だと、相手の姿が見えないためノイズの長考もある(回線不良とか、物落としたとかね)。ご利用は計画的に。


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 リードを残したまま東2局。親リーを受けてタンヤオ七対子ドラドラの聴牌。押し引き判断をどうするか。

 これはかなり難しいところだと思う。元々待ちが悪いのに加えて、終盤。押したところで和了りは厳しそうだ。

 だが、それでも和了れれば東2局にしてこの半荘の決定打となる和了りを決めることが出来る。

 非常に悩ましいが……


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 ここは降りを選択した。

 確かに、和了れれば決定打かもしれない。しかし、何も決定打を打たなければトップが取れないわけではない。

 放銃してしまえばよもやのラスも見えてくる。せっかく先ほど親マンツモでリードできたのだ。それをすぐさま吐き出してしまうのはもったいない。


 最近はリードしたからこそ攻めて、決定打を求める打ち方が普及しているが、天鳳ではこういう金持ち喧嘩せずスタイルも有効なのではないかと思っている。

 そうすることで、ラスのリスクがなくオーラスまでトップ争いに参加できるという利点がある。

 また、トップを狙う意識がほかのフィールドに比べて低い天鳳では、決定打を放たなくとも自然とトップになるケースも多い。

 もちろん、そういう展開に持っていくのは技術が必要とされるため、そういった技術もどこかで紹介していけたらと思う。


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 とはいえ、全く攻めないわけではない。東3局、追いかけリーチを放つ。(2sは通っていない)

 今度は待ちが亜両面とまあまあ。先ほどの単騎より和了率が高い。さらに、競っている下家がノーテン濃厚であるため、流局した場合は点差が開くという要素も大きい。

 あくまで決定打のために分が悪い勝負をする必要はないよね、ということで、ある程度勝ち目がある状況ならリードを広げられるチャンスは積極的に拾っていく。使い分けが大切だ。


 この手は結局実ることはなかったが……


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 点差を維持したままオーラスを迎え、和了ってトップを獲得した。ヒラリーステップ初勝利!

 これで残り335pt。いよいよ現実味を帯びてきた天鳳位に気押されつつ、次戦へ。


4戦目(3665/4000)


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 まずは何切る問題から。ドラ1p。

 5ブロックか?6ブロックか?


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 ヨーテルの回答は5p切りで6ブロック進行。

 ドラ1pなので、ペン3pツモや1pの重なりも見たい。ならば58s切りでの5ブロック進行という手もあるが、それだと3~6s辺りを引いて、8sを頭にするタンヤオ形への変化がなくなってしまう。

 12pも、ソーズの複合形も捨てるには惜しい。ならば、両面固定で選択を保留してみよう。

 手作りの基本は5ブロックだが、残すターツの双方に価値がある場合は例外として6ブロックに受けても良いだろう。


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 どや


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 6ブロックに受けてないと張ってないリーチを打ちからの~~~?


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 粘りがうめえや(´-ω-`)


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 また何切る問題。浮き牌の選択、6sか南か。

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