弐瓶勉『BLAME!』
巨大なものへの根源的な恐怖というのは多かれ少なかれ誰にもあるものと思いますが、弐瓶勉の『BLAME!』という作品ほどこの種の畏怖を表現している漫画はないとおもいます。
ジャンルはサイバーパンク、ポストアポカリプスものに位置付けられます。主人公の霧亥が天体を飲み込むほどの大きさの建築物「超構造体」を彷徨いながら、ネットにアクセスする権限を持つ遺伝子を探すというストーリーです。
この作品を読むと、果てしない大きさの「超構造体」やそこで繰り広げられる霧亥の探索のスケールを示すような描写の数々に目が惹かれます。独特のタッチで描かれる巨大構造物の絵もそうですし、3000キロ(!)も続く螺旋階段や構造体内部に存在する直径14万キロのドーム(かつて木星があった場所)などのセリフや設定も人間の感覚を超えた時空間のスケールを読者に与えます。
こうした設定は、SF的な世界観構築に寄与するだけではなく、主人公のキャラ造形にも影響を与えています。すなわち、このようなメガスケール的な描写は、霧亥の存在や珪素生物、セーフガードとの戦闘、生存者との数少ない会話のようなストーリーの要素をいったん極小化した上で、それでも無限という概念に抗う主人公の英雄性を引き立てています。
ここにおいて主人公の真の敵は超構造体であり、ひいてはそれが象徴する人間の認識を遥かに超えた超スケールということになります。
余談ですが、私が弐瓶勉を知ったのは宇多田ヒカルさんが2000年代後半にやっていたブログの中で『バイオメガ』に出てくる喋るクマを褒めていたのがきっかけです。
(奇跡的に残ってた...)
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