【小説】月光の約束 第六話〜導かれる運命〜
第六話 導かれる運命
遥はルナハウスでの出来事が頭から離れなかった。あの部屋で見た星図と詩、そして天球儀の台座に刻まれたメッセージ。
「次の満月の夜……ルナハウスで待つ。」
満月の夜に彼に会えるのだろうか。
彼に会ったとして、何を伝えられるのだろうか。
てゆうか、私って何なのだろう。
昔から私は勘が冴えるところがある。
占い、特に占星術に興味を持ち、私が占うと当たると評判だった。
今では占いは私の仕事でもある。
自分には何か人にはない、特別な感覚のようなものがあると、うすうす感じてはいた。
でも、それにしても、この展開は訳が分からなすぎる。
「とにかく調べてみるか」
遙は手がかりを求めて図書館で天文学や古代文学に関する本を読み漁ったが、何も分からない。
私の身に何が起きてるのだろう。
焦燥感だけが募っていく。
「そうだ、あの本!」
行き詰まりを感じた遙は、星詠み堂を訪ねることにした。
もしかしたら、柳川なら何か知っているかもしれない。
店に入ると、柳川はいつものようにカウンターの奥で天文書を読んでいた。遥の姿を見つけると、にこやかに微笑みかけた。
「いらっしゃい、遥さん」
「柳川さん、実は……」
遥はルナハウスで体験した不思議な出来事を話し始めた。星図のこと、詩のこと、そして天球儀のメッセージのこと。柳川は静かに話を聞きながら、時折目を閉じ、考え込んでいるようだった。
「なるほど……」
遥の話を聞き終えると、柳川はゆっくりと頷いた。
「遥さん、あなたは特別な力を持っているのかもしれません。」
「特別な力……?」
「あなたは、月を崇拝する一族の生まれ変わりなのかもしれない。そうだとしたら、月の力を使うことができるのですよ」
「月の力……?」
SF映画のような話だ。
確かにルナハウスでの出来事はSF映画ぐらいぶっとんでる。
でも私は何の違和感も持たず、受け入れられている。
柳川は続けた。
「ルナハウスは、あなたの力を目覚めさせるための場所です。あそこには、あなたの過去、そして未来が隠されています。」
柳川の言葉に、遥は心を揺さぶられた。もしかしたら、本当に自分には何か特別な力があるのかもしれない。ルナハウスで感じた不思議な感覚が、その考えを裏付けているようだった。
「柳川さん、私に一体何ができるんですか?私はどうすればいいんですか?」
遥は必死に問いかけた。柳川は優しく微笑み、彼女の手を取った。
「焦る必要はありません。あなたは、導かれるままに進めばいいのです。月が、星が、そしてあなたの心が、真実へと導いてくれるでしょう。」
柳川の言葉は、遥の心を少しだけ軽くした。彼女はまだ戸惑っていたが、自分の運命を受け入れる覚悟を決めた。
「ありがとうございます、柳川さん。もう少し、考えてみます。」
遥は礼を言い、星詠み堂を後にした。夜空を見上げると、月が優しく輝いている。彼女は月に向かって静かに語りかけた。
「私をお守りください。」
次の満月の夜、遥は再びルナハウスへと向かう。彼女の心には、期待と不安が入り混じっていた。