【小説】月光の約束 第二話〜ルナハウス〜
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第二話 ルナハウス
「あれは何だったの?」
遙は翌朝、夢で見た男性のことがどうしても忘れられずにいた。
いつものようにホロスコープに向き合うが、集中できずに彼の声が耳元で繰り返されるような感覚に囚われていた。
「えっ!」
突然、息が詰まるような感覚に襲われる。
視界の端に、机に置いてあった古い本が目に止まる。それは数日前に近所の古書店で買ったものだったが、まだ一度も開いてなかった。
不意に手に取りページをめくると、そこには見覚えのある洋館のイラストが描かれていた。
「これって、夢で見た……?」
遙はそのイラストに目を奪われた。夢で見た洋館の窓、壁の装飾、そして月明かりが差し込む佇まいが記憶とぴたりと一致している。
胸の奥で鼓動がさらに早くなる。
「偶然……じゃないよね?』
イラストの下には短い説明文が添えられていた。
ルナハウスーーかつて月を崇拝する人々が集った館。その地に住む者は、満月の夜に運命の声を聞くと言われている。
『ルナハウス』その名前に聞き覚えはなかったが、遙はなぜかその言葉が心の奥深くに響くのを感じた。
ページをめくる手が震える。ルナハウスに関するさらに詳しい情報が載っていないかと、遙は一枚一枚丁寧に目を走らせた。しかし、イラストと短い説明文以外にはそれ以上の記述は見当たらなかった。
「どうして、この本に載っているの……?」
疑問が頭を巡る。偶然にしてはできすぎている。何かが、自分をこの館へ導いているような気がしてならなかった。
ふと、机の上に置いてあったスマートフォンを手に取り、「ルナハウス」という名前を検索してみた。
検索結果にはいくつかの記事が表示され、その中の一つに「歴史的な洋館」として紹介されているページがあった。興味を引かれ、その記事を開いてみる。
「ルナハウスは古くから伝説とともに語り継がれてきた館であり、現在も山間部にひっそりと佇んでいます。その起源は月崇拝の儀式にさかのぼり、満月の夜に訪れると不思議な現象が起きると言われています。」
記事には、館の写真とともに所在地らしき情報も記されていた。
その住所を見た瞬間、遥の心は何かに突き動かされるようにざわめいた。
「ここに行けば、何かが分かるかもしれない……」
遙は気づけば、住所をメモに書き写し、心を決めていた。これがただの偶然なのか、それとも夢の中の男性と何か関係があるのか。その答えを確かめずにはいられなかった。