夕べ五叉路の冷ややかな騒擾は
夕べ五叉路の 冷ややかな騒擾は
回遊するアド トラックの饒舌が蹂躙する
歩道の白線と 黒線の剥げたいたみは
順番を待つ葬 列の嘔吐と咆哮は
極彩色の牆壁 に穿たれた黒窓にうつる
場の重心にし おれた
白薔薇の剥製 は
赤信号を喪失 した朦朧と錯乱の循環に
水源の枯渇し た谷底で干からびた
王冠の秘薬を 口にすることなく
土瀝青の薄蒲 団に横たわり
沈黙に埋もれ 花瓶の囁きを待つ月夜に
半開きの窓を 通る鎌を纏う風の冷酷に
あと九語で切 れる蓄電池は
ありがとう、 しにた
...
交差点に散る 六枚の紙片
38、39、 37、38、40、36、
緻密な黒と悲 哀の白の
おちた右手の 孤独と叛逆の
希求の跡の
忘却の後の
遅れてやって きた迎えの車の
二度目の喜劇 の黙劇の
葬祭典が始ま るきょうスクランブルに
朝撒きし やまぬ嘆きの
失せ行く雲の
四面連動放映
様様に黒い矩 形状ノイズの一斉表示は
轢断された白 薔薇の 剥製と 棘は
五叉路の 阻塞
テロップは濁 流する 濃黒の 殺意
【AN0FYB1】
【原注】難語と引喩について、簡単に以下に注記します。
第2連
・牆壁:牆壁瓦礫(しょうへきがりゃく)より。
第7連
・万葉集からの引喩二歌(カッコ内は巻-旧国歌大観番号):
秋津野を人の懸くれば朝撒きし君が思ほえて嘆きはやまず(7-1405)
秋津野に朝居る雲の失せ行けば 昨日も今日も なき人思ほゆ(7-1406)
・四面連動放映:以下は例。
https://www.studio-alta.co.jp/vision/shibuya_4screen.jsp
第8連
・矩形状ノイズ:ベリノイズ。