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大阪〜博多600km徒歩の旅(17)広島県廿日市市〜山口県岩国市
大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅
第17ステージ
広島県廿日市市〜山口県岩国市(20km)
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今朝も6時に起きて、ホテル7階の展望ラウンジへ。外は真っ暗だったが、誰もいない空間でコーヒーを飲みながら静かに原稿を書いた。
やがて窓の外が明るくなってきて、宮島が浮かび上がってきた。やはり、このホテルは良い。このような景色を眺めながら原稿を書けるのは幸せだ。
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日記の更新を終えた頃、外がパッと眩しく光った。ちょうど宮島の山の上から、朝日が昇ってきたのだった。よく見ると外は雪が舞っていて、幻想的な光景だった。
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部屋に戻るためエレベーターに乗ったら、「宮島行き海上タクシー 宿泊者無料」という貼り紙があった。
本来であれば、まず宿から1km離れた宮島口のフェリー乗り場まで行き、そこからフェリーで宮島へ行く必要がある。しかしこのホテルの宿泊客は、「朝10時発」という一便限定ではあるが、ホテル横にある「島田水産」が運行する船に無料で乗れるというのだ(※ただし宮島訪問税が100円かかる)。時間的にちょうど良かったので、フロントで予約した。
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チェックアウトまでの時間で朝風呂に入り、露天風呂からも宮島を眺めた。
そのとき、ふと感じた。
この旅を行った結果、自分の人生がどこへ向かうのかわからないけど、毎日全力を尽くしていることで生まれてくる誇りのようなものがある、と。これ以上はできない。だからこその諦念もある。生をまっとうしている。そんな感覚が得られた。
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10時の船に乗り込み、15分で宮島に着いた。厳島神社の方へ歩いていると、途中にたくさんの鹿がいた。人に慣れていて、撫でることもできる。
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ビックリしたのは、参道にスタバがあったことだ。宮島にもスタバがあるなんて。
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世界遺産の厳島神社を参拝した。有名な大鳥居は、海にどっぷりと浸かり、浮かんでいるように見えた。当初は素通りする予定だったけど、やっぱり宮島に来て良かった。
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前回、15年前の夏に訪れたときは、干潮であの大鳥居まで砂浜を歩いて行くことができた。しかし海に浮かぶ姿も良い。これで両方の姿を見られた。
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よくも水上に、このような立派な神社を作ったものだ。なんと厳島神社には、1400年以上の歴史があるという。
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通路に従って奥まで歩いて神社を出たら、別の道から戻ってくる。参道の「紅葉堂」で、この店発祥の名物「揚げもみじ」を食べた。もみじ饅頭が揚げてある。あえてあんこではなく、瀬戸内レモン味にした。
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そして帰りは、JRが運行するフェリーに乗って宮島口まで戻ってきた。一応ホテルの無料水上タクシーもあったのだが、15時台なので諦めた。
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行きの船でお世話になった島田水産は、牡蠣小屋もやっている。そこでランチをすることにし、牡蠣フライ定食を食べた。
これまで都内のスーパーで「広島産牡蠣フライ」を見て、「おお、でかいなあ」と思っていたけど、広島に来て牡蠣フライ定食を食べてみると、都内で売っているのでさえまだ小さかったんだなと感じる。本場はすごい。
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ぼくは定食のみだったが、周りの人たちはほぼ全員が牡蠣の食べ放題を頼んでいて、網の上で「パーン!」と牡蠣の弾ける爆発音が頻繁に響いていた。
13時から、ようやく徒歩の旅。20km先の岩国駅を目指して歩き始めた。
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海沿いの道が多く、気持ち良かった。今日はオーディブルで小川幸司著『世界史とは何か 「歴史実践」のために』という本を聴いていた。とても勉強になる内容で、ずっと聴いていられる。2月の旅が終わったら、ぼくはたくさん本を読みたい。司馬遼太郎の歴史小説で日本史を勉強したい。
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途中はとくに見るものもなかったし、一度コンビニに立ち寄った以外は、ほとんど休憩なしで歩いた。やがて山陽地方最後の県、山口県に突入した。
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徒歩の旅が終わったとき、ぼくは日記に何かしらの言葉を書くだろうけど、無理に「この旅から学んだのはこういうものでした」とわかりやすくまとめる必要はないなと思っている。
最近、世間では何かと「まとめたがる」風潮を感じるから、なおさら抗いたい。何かを言い切ってしまうことの裏側で、失われてしまうニュアンスもある。とくに人の感情が絡むものは、「白か、黒か」とハッキリさせなくていい。もっと複雑なものだ。
就活でもよく、「その経験からあなたは何を学びましたか?」という質問があるけど、少なくともある経験が終わった直後に、結論づける必要はない。留保して、醸成させていけばいい。時間が経ってから見えてくるものはたくさんある。変に意味付けして固定させない方が、経験はもっと伸びやかなものになる気がする。
旅もそうで、「この旅を通してぼくはこれを学びました」みたいに、わかりやすくまとめられたり、ハッキリと結論づけられたりするようなことっておそらくそんなに多くない。
だけどそれでも、旅の価値は確実に存在する。一日一日の個々の経験、断片的な記憶の集積が、自分をよりたくましく形作っているはずなのだ。
だから自信を持っていい。旅が終えたときに、結論のような言葉が何もなかったとしても、それはこの旅が無価値だったことを意味しない。毎日、小さなかけがえのない経験を積み重ねてきた。それで十分である。
そんなことを考えながら、16時40分、ゴールの岩国駅に到着した。
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駅近くの東横インにチェックイン。大浴場がなく、ドーミーインに比べたら全体的にサービスや快適性は落ちるのだけど、かといって不満な点はとくにない。また、朝食無料なのが東横インの良いところだ。
夕食は、岩国のソウルフードと言われている「寿栄広食堂」の中華そば(大盛り)を注文。「バナナマンのせっかくグルメ」でも登場したお店だそう。
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普通においしいけど、「特別おいしいか」といえば、そこまででもない。尾道ラーメンのように背脂が入っていることを除けば、至ってシンプルなラーメンのような気がする。しかしとにかく外が寒いので、スープの温かさが沁みた。
でもソウルフードといえば、旅の初日に食べた、神戸の「もっこすラーメン」。あれは本当にうまかった。また食べたい。
夜は岩国駅に直結している「IWAKUNI COFFEE」で21時半頃まで原稿を書いていた。自動ドアが開くたびに強烈な冷気が脚を襲う。山口に入って一段と寒さを感じる。
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睡眠時間がずっと短く疲れているので、明日は少しゆっくり起きたい。
<今日の費用>
宮島訪問税 100円
厳島神社 300円
揚げもみじ 200円
帰りのフェリー 300円
牡蠣フライ定食 1100円
プロテイン 221円
ホテル 6100円
夕食 900円
コーヒー 420円
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