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駆け出しライターにとってSEOは「避けては通れない道」なのか

「駆け出しライターは、まずはSEOから学ぶのが順序だと思っていました」

2年間ライターさんたちにコンサルをするなかで、そんな発言をする方が多いことに衝撃を受けた、という話を前回の記事で書いた。

ところで、ぼくが2年間コンサルをするなかで強く衝撃を受けたのは、「駆け出しライターはまずはSEOから学ぶのが順序だと思っていました」と発言した方の多さである。なんともったいないことか、と思った。

たしかにこの時代、SEOの知識を持っていることはプラスになると思う。また、SEOライティングも需要はたくさんあるので、やりたい方はやればいい。しかし、「SEOライティングのステップを踏まなければインタビューライターにはなれない、もしくはより単価の高い仕事はできない」ともし思っている方がいるとしたら、ぼくは黙っていられなくなる。なぜそれが大きな間違いなのか、というのはまた改めて書きたいが、とにかく「本当はインタビューライターをやりたいんだけどSEOが苦痛で・・・」という方を少しでも減らしたい。

重要な話だと思うので、今回はこのテーマで深掘りしてみたい。

おそらく「ライターになるなら、まずはSEOを学ぶのが順序」だと思っている方の大半は、クラウドソーシングサイト(ランサーズやクラウドワークス)等で仕事を受けてSEO記事を書いている方々のはず。

クラウドソーシング上にはSEO記事の案件ばかりが並んでいるから、何も知らずに「ライター業」を始めると、「ライターの仕事はSEOの知識がないとスタートラインにさえ立てない」と感じるのも無理はないかもしれない。

そういう方々にぼくがコンサルでよく伝えているのは、「書く仕事の全体像を俯瞰しましょう」という話だ。

ライターの仕事が「基本的にはSEO記事を書くこと」だと思っているとしたら、それは「日本海が世界の海の全体」だと思っているようなもの。しかし、世界には太平洋や大西洋や地中海やインド洋など、もっと広い海がたくさんある。そしてそこには、「SEOを求められない文章」がたくさんあるのだ。

たとえば、新聞や雑誌、本、フリーペーパーなどの「紙媒体」は、SEOを一切必要としない。そもそもSEO記事の目的というのは、「検索結果で上位表示されること」である。そのために書き手は一生懸命キーワードを盛り込むのだが、紙媒体には「検索結果」というものが存在しない。だから「限られたスペース(文字数)でいかに情報をわかりやすく的確に伝えるか」が勝負になる。文字数無制限で書けてしまい、かつ、ある程度の文字数がないと評価されづらい「SEO記事」とは、書き方の土台からして異なるのだ。

SEO記事の報酬が「1文字1円」などの文字単価で示され、紙媒体の記事やWeb上の非SEO記事(インタビュー記事、エッセイ、企業サイトの記事など)の報酬が「1本◯万円」などの記事単価で示されるのは、そういう背景も大きいだろう。もしインタビュー記事の仕事依頼が文字単価できたら、トンチンカンなクライアントだと思った方がいい。プロのライターは「何を書かないか(=文字を削ること)」を大切にしているのだから。

Web媒体であっても、SEOを求められない記事はたくさんある。今言ったようにインタビュー記事やエッセイ、コラム、企業サイトの記事などがそうだ。もちろんWebで書く以上は、全ての記事がGoogleやYahooからのSEO的な評価を受けるから、「SEOは意識していなかったけど、結果的に上位表示された」ということはよく起きる。大切なのは、これから書こうとしているのは、「SEOで集客を狙う記事」なのか、「SEOを必要としない記事」なのか、はたまた「本文はSEO意識しなくていいけど、タイトルや見出しだけは意識してSEO的にも多少強くできたらいいな〜と思っている記事(両取りパターン)」なのか、書き手が理解したうえで「書き分ける」ことだ。

では、「なぜSEOを必要としないWebの記事」が存在し得るのかというと、それは書き手側(発注側)に、「検索に頼らなくても記事に辿り着いてもらえる見込み」があるからだ。たとえばぼくは毎朝PCを開くと、Yahoo! JAPANのトップページをチェックする。そこに気になる見出しのニュースがあればクリックするが、そのときにぼくは一度も「検索していない」。あるいは、毎朝ダイヤモンド・オンラインや東洋経済オンラインをチェックするビジネスマンは、やはりサイトや公式Twitterから気になる記事をクリックするだろう。その際も「検索はしていない」。

ぼくらは普段、具体的に何かを調べたいとき・知りたいときは検索して記事に辿り着くが、それが全てではない。「友達がシェアしてたから」とか「Twitterのトレンドに載っていたから」とか「LINEニュースで流れてきたから」とか「好きなメディアの記事だから」などの理由でも記事に辿り着く。そしてそこに「検索」という行為が絡んでいない場合、「SEOがなくても集客できている」ことを意味する。だから逆に言えば、SEO記事とは、「SEOの力(検索の力)に頼らないと読んでもらいづらい記事」でもあるかもしれない。

また、Webを主戦場として書くのが「Webライター」で、紙を主戦場として書くのが「ライター」だと思っている人もいるかもしれないが、ぼくの認識(定義)は異なる。ぼくにとって、「Webライター」=「主にSEO記事を書いているライター」で、実際Twitterで「Webライターです」と名乗っている人はだいたいその傾向にあると思う。逆に取材記事を中心に書くライターは、自ら「Webライターです」なんて名乗らない。「SEOを書く人」だと思われると取材ライターとしての評価が下がりかねないからだ。だからぼくはよく、「取材ライターを目指したい」という駆け出しのライターさんに、「でしたら、まずプロフィールにある『Webライター』という表記を外した方がいいですよ。普通に『ライター』でいいです。あと、ポートフォリオに載せているSEO記事の執筆事例も取った方が、おそらく今後仕事の話がきやすくなりますよ。せっかく書いたものだから載せたくなる気持ちはわかりますが」と伝えている。それは些細なことと思われるかもしれないが、わかっている人からしたら「大きな違い」なのだ。

近年、副業を始める人が増えた。また、在宅ワークも一般的になり、クラウドソーシングにおけるSEO記事の案件(「初心者OK!」)は活発になっている。しかし、需給バランスはどうか。ひとつの案件にたくさんのWebライターが集中し、価格崩壊が起きている状況だ。「1文字0.5円」のような仕事もよく見かけるが、ハッキリ言って安過ぎる。1000文字書いて500円。好きでやっているなら何も言わないが、もしおせっかいを許してもらえるなら、「目を覚ましてくれ(マックやコンビニのバイトの方が時給いいかもしれん)(でもライターは専門職だぞ)(もっともらっていいはずやろ〜)」と肩を揺さぶりたくなる。

一方で、インタビュー記事や、PRや営業目的で企業が公式サイトやサービスサイトに載せる記事など、本来ライターがスキルを生かして活躍すべきところ(非SEO記事)では、人が足りていない。だから取材してしっかり書ける良質なライターさんは、様々な企業やメディアから引っ張りだこになる。しかも記事単価で、原稿料も遥かに良い。メディアのインタビュー記事なら「3000文字程度で1.5〜2.5万円」とか、企業案件だと「3000文字程度で4〜5万円」とか、そういう仕事も決して珍しくない。さらに条件の良いケースもある。

この話題、まだまだ書きたいことは尽きないが、今回は一旦終わらせる。最後に、「駆け出しライターは、まずはSEOから学ぶのが順序だと思っていました」に対する個人的な回答を書いておく。

あなたがSEOライター(Webライター)を目指すのであれば、確かにSEOから学ぶのがいいと思う。しかし、「インタビュー記事を仕事にしたい」とか「SEOライティングはやりたくない」と思っているのだとしたら、我慢してまでSEOを学ぶ必要はない。クラウドソーシングでSEO記事を書く経験を積む必要もない。SEOとはいかなるものか、知識として持っていて損はないが、マストではない。そのことは覚えておいてほしい。Googleに好かれる文章ではなく、人間に好かれる文章(「良い記事だったな」と思ってもらえる文章)を書くライターがひとりでも増えることを願う。

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中村洋太
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