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博多〜鹿児島 徒歩の旅(11)出水〜阿久根 猛吹雪を乗り越えて

博多〜鹿児島 徒歩の旅
第11ステージ
鹿児島県出水市〜鹿児島県阿久根市
23km

朝7時半、日記の更新作業を終えて窓を開けると、吹雪だった。1時間前は何も降っていなかったのに。雪は上から下ではなく、海側からほとんど真横に流れている。それだけ風も強いということだ。

「これは、歩けないのではないか」としばらく呆然とした。

しかし、状況は変わるかもしれないし、実際に外に出て体感してみないとわからない。朝ごはんを食べ、完全装備で10時頃に出発。ちょうどその頃、雪がかなり弱まっていたから、「よし、行ってしまえ」と出発したが、5分も経たないうちにまた猛烈な雪になった。

こういうときはリスク管理が大事なので、阿久根への最短ルートではなく、「肥薩おれんじ鉄道」になるべく沿ったルートで、かつ山道は避け、コンビニが多い道を通る、という選択を取ることにした。歩く距離は2kmほど伸びるが、万が一のときは電車に乗って宿へ避難すればいい。

ただ、雪は水分が多く、しばらくすると手袋がびしょ濡れになってしまった。リュックや服、シューズは防水なのだが、手袋だけはダメだった。コンビニで買ったカイロに救われた。それを握り締めていなければ凍傷になるのではないかと思うくらい、手が冷たかった。長くスマホを触っていると、手の感覚がなくなってくる。

6kmほど歩き、高尾野駅近くのファミリーマートで休憩した。コーヒーで身体を温めながら、昨日水俣でお世話になった中村和義さんに御礼の電話をかけた。

「九州で何かあったらいつでも連絡してください。できる限りのことをしますから」

大学3年の夏、自転車旅で初めて九州を訪れたときのことを思い出した。あのときも、九州各地で経験した人の温かさに感動したのだった。そして、和義さんと同じような言葉をかけてくださった方がいた。どこへ行っても親切な人ばかりだった。

通るルート上に、飲食店はかなり少なかった。野田郷駅の近くに「Akuru」というカレー屋さんがあったので、3kmほど手前から電話して、営業しているか確認した。Google Mapsで「営業中」となっていても、実際に行ってみると「定休日」とか「準備中」と書かれていることがこの旅で何度もあったからだ。幸い、カレー屋さんは営業していた。

お店は一軒家をリノベーションした作りで、素敵だった。女将さんは沖永良部島出身の方で、以前は島で長くカレー屋さんをされていたそうだ。出水市に移住してきて、昨年3月からお店を始めたという。

注文した「島桑野菜キーマカレー」はおいしかった。沖永良部島では特産品の桑の葉をお茶にしたりする文化があるそうで、その桑の葉パウダーがかかっていた。健康に良いらしい。

カレーを食べ終わると、テレビ朝日系列のテレビ局「KKB鹿児島放送」さんから電話がかかってきた。ぼくのnoteを読んでくださったらしく、後日取材を受けることになった。2月6日(木)夕方の番組でもしかしたら映るかもしれない。鹿児島の方はぜひご覧いただきたい。

また、お店でたまたま居合わせた女将さんのご親戚の方(沖永良部島から出てこられたお母さんとそのお孫さん?)と親しくなり、「こんな歩いて旅している方に会えて嬉しい」と何度も言ってくださった。そしてお会計をしようとしたら、なんとそのお母さんがぼくの分を支払ってくれた。本当にありがとうございました。いずれ沖永良部島にも行きたいです。またお会いできるかな。

そんな嬉しい出来事が重なり、また午後も元気に出発した。午後の雪は、朝ほどひどくはなかった。降ったり止んだりが続いた。コンビニで休憩しながら、慎重に歩いた。

18時頃、ようやく阿久根駅に着いた。阿久根駅をデザインしたのは、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」を手がけた水戸岡鋭治さん。素敵な駅舎だ。

本もたくさんあり、休憩スペースで自由に読めてしまう。村上春樹、ハリーポッター、蒼穹の昴、史記など様々あった。ぼくなら一日中ここにいても飽きなそう。

また、お土産物屋さんにはデザイン性豊かな素敵な商品が並んでいる。

名産のぼんたん漬けと、「はらぺこいわし。」という丸干しのうるめいわしを買った。徒歩の旅のおやつにしたい。

阿久根では、「イワシビル」に宿泊。おしゃれなデザインのイワシ加工製品などを製造・販売しているビルで、さっき駅で買った「はらぺこいわし。」もここが製造元だった。

1Fがショップ、2階が工場、3階が客室になっている。数年前に長島を訪れた際、車で阿久根を通過した。そのとき、この変わった名前のビルを見かけて、気になっていた。今回初めて「え、ここ泊まれるんだ」と知った。朝食付き5000円と安い。

夜は宿近くの「味っ子」さんで、アジフライ定食を食べた。うどんも付いて、おいしかった。

ご夫妻と話が盛り上がった。なんでも10年以上も前、「ヤドカリ号」というリヤカーを引っ張って日本を縦断した方がこのお店に立ち寄ったのだそうだ。調べてみると、北海道の森谷武治さんという方だった。現在84歳で、今もお元気らしい。

最後は「ふれあい温泉ぼんたん湯」へ。温泉に入れる銭湯。ぼくが脱衣所に入ると、3人のおじいさんがちょうどお風呂から上がってきて、「今日も元気に風呂に入れて幸せなことやなあ!」と叫び、ガッハッハと笑っていた。こういう方が多いのか、それともたまたまこのおじいさんが元気な方なのかわからないけど、なんだか薩摩っぽい風情を感じた。

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中村洋太
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