
講演のための思考メモ(24)偶然から始まった「ライターコンサル」
2020年、難病から復活し、しばらくは企業案件を中心に執筆していた。大きな転機は、6月に訪れた。
きっかけは、作家・川上未映子さんの「原稿料」に関するツイートだった。
唐突ですが、原稿料について書きました。お読みいただければ嬉しいです。 pic.twitter.com/1ra4ziIZvz
— 川上未映子 Mieko Kawakami (@mieko_kawakami) June 11, 2020
原稿料を依頼時にボカしてくるクライアントは、ぼくにも経験があった。うっかり確認せずに引き受けると、想像以上に安かった、ということも。だから聞きづらくとも、事前に「原稿料はいくらですか?」と聞いておかないと、「ちゃんとお金もらえるのかな」と不安が募り、気持ちよく仕事ができなくなる。それは失敗経験のなかで学んでいったことだった。
ぼくはこの川上さんのツイートを引用し、自身の経験をnoteに書いたところ、共感してくれたWebライターの知人から、こんなメッセージが届いた。
「先日、結婚式場のレポートを執筆したのですが、現地取材、さらに写真50枚納品、執筆(3000字)込みで¥2000でした。なかにはこちらから請求しないと原稿料を払ってもらえない、なんてこともあります。原稿料を請求したら『最近の子はお金にがめついよね、若いうちはこちらからお金払ってでも書きたいです!っていわなきゃだめだよー』なんていわれたこともありました。。」
この原稿料や対応の話は、ちょっとひど過ぎる。唖然としてしまったぼくは、詳しい事情を知りたかったのと、何かアドバイスできることがあるんじゃないかと思い、その方と1時間ほどお電話で話した。すると、「考え方が変わった」と喜んでいただけた。「これはもしかしたら、ほかの駆け出しのライターさんにとっても役立つ内容なのでは」と感じ、電話で話した内容をさらに深掘りしてnoteに書いた。そうして生まれたのが、「Webライターが単価を高めるためのアドバイス」という記事だった。
この記事がnoteの「今日の注目記事」に選ばれると、Twitterのライター界隈で大きな反響があった。
本当に読んでよかったと思える内容のnoteでした。18000文字ありましたが、夢中になって読み進めました。私も代替不可能なライターになるために、もう一度自分と向き合い、考え、行動しようと思います。素晴らしいnoteをありがとうございました! https://t.co/cvQ7Bn1ER3
— 鶴田 有紀 |ライター (@yuki930_writer) October 31, 2020
実体験と、企画力と、人との繋がり方と。私には眩しいすぎる〜と思いながらも、憧れずにはいられません。ライターとしてどうなっていきたいか、考えて、動こう!と思える素晴らしいnote。ありがとうございました🌸 https://t.co/J0usAsJahN
— かたおかゆい@竹富島 (@MomYuuuuui) August 29, 2020
そして、駆け出しライターだった池田アユリさんという方から、「中村さんからコンサルを受けたい」と驚きのDMが届いた。まだライターさん向けにコンサルをしよう、なんて1ミリも思っていなかった時期である。でも、興味はあった。ぼくは学生時代から「教えること」が好きだったから、ライターとしての経験が誰かの役に立つなら、楽しいことかもしれない。「記事を書くこと」とはまた異なるやりがいを得られるかもしれない。
池田さんからのDMには、「SEO記事が苦手で、もうライターを辞めようかとも思っていたタイミングで中村さんのnoteを読みました」と書かれていた。なんともったいないことか。世の中には様々な文章タイプがあり、SEO記事なんてその一部でしかない。「SEO記事が向いてない」=「ライターとして向いていない」では決してないのだ。むしろ、逆のことさえある。
池田さんは人に興味があり、「インタビューライターになりたい」と話していたから、その技術を教えて、プロライターとして活躍できるようにしてあげられたらいいなと思った。
とはいえ、ぼくは感覚で文章を書いていた部分もあったから、技術や考え方を、きちんと言語化して人に伝えられるだろうか、という懸念があった。こればかりは、やってみないとわからない。だからまずはトライアルという形で池田さんにコンサルをすることになった。のちに「ライターコンサル」と名付けられる事業の、1人目の生徒さんが誕生した瞬間だった。
2020年7〜8月の2ヶ月間は、池田さんと1対1で、たくさんコンサルと添削をした。ライターとしての自分の仕事もあったので、空いていた時間に。夜22時頃から電話をして、同じドキュメントを見ながら文章についてあれこれ話して、白熱するあまり気付けば日付が変わっていた、ということもあった。池田さんはそれまできちんとインタビュー記事を書いたことがなく、すべてを一から教えた。そして添削を通して様々なアドバイスをしていった。
すると、その2ヶ月間でグングン文章が良くなっていった。赤字やコメントはたくさん入れるが、続けるうちに、文章の違和感や指摘する事柄が少しずつ減ってくる。成長を感じた。電話越しに、池田さんが必死にメモを取る音が聞こえてくる。学んだことをきちんと次に生かそうと心がけていた。その熱量にぼくも気持ちを動かされた。意欲ある彼女が最初の生徒さんで、本当に幸運だった。

池田さんはTwitterやnoteで、「中村さんからこんなことを学んだ」と積極的に発信してくださったので、そのおかげもあり、「私にもコンサルしてほしい」というライターさんからの連絡がどんどん増えていった。
ぼくも「教えることが向いているんじゃないか」と自信を得て、2020年9月には生徒さんを一気に10人まで増やした。その最初の10人の中には、現在文春オンラインやダイヤモンド・オンライン、講談社や朝日新聞社のメディアなどで大活躍されているライターのかたおかゆいさん、原由希奈さん、仲奈々さん、桃沢もちこさんも含まれている。
【書きました】
— かたおかゆい@竹富島 (@MomYuuuuui) August 30, 2022
有人離島フリーペーパー『季刊ritokei39号』「島だから学べること」をテーマにインタビュー記事を執筆しました✏️
海士町の大野圭佑さん
屋久島の今村祐樹さん
それぞれの島での取り組みや島だから学べることは、島で暮らす私も新たな視点をいただきました。https://t.co/IFjLqE33KO pic.twitter.com/4ptCoGgS8F
ダイヤモンド・オンラインに著者ページをつくっていただきました!記事も追加される予定です。素晴らしい著者さんが揃うなかとても恐れ多いですが、今後も精進します。https://t.co/DVAK0tBuh5
— 原 由希奈 (@yukina_0402) January 13, 2022
\\上半期BEST記事に選ばれたよ//
— 仲奈々 | ライター (@nanapan0728) August 14, 2022
先日企画〜執筆を担当したこちらの記事、文春オンラインの上半期BEST記事のYouTuber部門でNo1に選ばれたそうです!たくさんの方に長く読まれる記事になって嬉しい〜😭@aogashimachan さん、あらためて素敵なお話ありがとうございました!https://t.co/eHgNO73C0A pic.twitter.com/h1aJ8ZekH9
【書きました】
— 桃沢もちこ (@mochico1407) September 25, 2022
文春オンラインにて、元テレビ朝日アナウンサーの竹内由恵さんに取材しました。
「11年間のアナウンサー生活でいろいろな番組を担当させていただきましたけど、『ミュージックステーション』には特別な緊張感があったんです。」https://t.co/hkY4xx1pZN
無名だった彼女たちが、今では著名人にも臆することなく取材できるようになり、素晴らしいインタビュー記事やエッセイの書き手として世の中に良い影響を与えている。その「快進撃」とも言える急速な成長過程を生で見られたのは、大きな学びがあったとともに、教える立場として非常に幸福なことだった。
(つづく)
※池田アユリさんの個人的イチオシ記事です↓
【書きました】
— 池田 アユリ@インタビューライター (@ayuri_0129) July 25, 2022
岡山県のいちご農園にて、デザイナーである奥山さんにお話を聞きました。家業の継ぎ方はひとつじゃない。等身大のストーリーです。#ロコラバ
「これが、僕なりの家業の継ぎ方」両親のいちご農園を行列ができる直売所兼カフェにした、若きデザイナーの思い
https://t.co/gqybeuNgTw
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